3-3-5 内外装用塗料

3-3-5 内外装用塗料

 セメントを主成分とするコンクリート、モルタル、PC版、各種サイティングボードなどの壁面に用いる塗料は、素材に起因する耐アルカリ性、耐水性などを備えたものが要求されます。

 金属面用塗料や木部用塗料の項で説明を加えた大部分の塗料が適用できるので、ここでは壁面用を主にする塗料のみ解説を加えます。

 (a)合成樹脂エマルションペイント及びシーラー(JIS K 5663 1種、2種)

 水に不要なアクリル樹脂などを水に分散させた乳白色の樹脂で、エマルション樹脂と呼ばれています。

 このエマルション樹脂に着色顔料や体質顔料、その他添加剤などを加えて塗料化したのが、合成樹脂エマルションペイントです。

 品質は、JIS K 5663に規定されており、種類は1種の主に屋外用、2種の主に屋内用と分類されています。

 合成樹脂エマルションペイントの屋外への適用は減少していますが、建築屋内用塗料として天井や壁面に使用され、大きな需要があります。

 塗料は、水で希釈して塗装できるので作業性に優れ、環境や健康、安全にも優しくなっています。また、塗膜は通気性があるなどの特徴があります。

 (b)つや有合成樹脂エマルションペイント(JIS K 5660)

 合成樹脂エマルションペイントと同様の組成だが、つや有合成樹脂エマルションペイントの方が、水に分散された粒子の小さいエマルション樹脂を使用していて、配合される顔料の量も少ないです。

 昨今は環境問題から水性化が進んでいて、種類も様々あります。例えば、アクリル樹脂タイプ、ポリウレタン樹脂タイプ、シリコン系樹脂タイプ及びふっ素樹脂タイプなどがあり、性能レベルは一段と高まっています。また、水に合成樹脂を分散しているエマルション技術を応用して、1液中に樹脂と反応剤を同時に分散することができることから、1液反応硬化形もあります。

 (c)合成樹脂エマルションパテ

 パテは、合成樹脂エマルション、顔料、充填剤などを主な原料とし、十分に混合して作ったペースト状塗料で、モルタル、コンクリート、せっこうボード、合板などの表面を合成樹脂エマルションペイントで仕上る場合の下地ごしらえに使用します。

 種類は、耐水形薄付け用、耐水形厚付け用、一般形薄付け用、一般形厚付け用です。耐水形は耐水性の要求される場所に使用しますが、一般塗料に比べると耐水性が劣ります。また、外部への適用は避けます。

 薄付け形は1回の塗付け膜厚が最大0.5mm、厚付け形は1.5mmになるように設計されています。

3-3-4 木部用塗料

3-3-4 木部用塗料

 木部用塗料は、建築現場で塗装するものから、工場や加工場などで製作時に塗装する建具や家具類まで種々塗料があります。

 これらの木部用塗料は木の材質、塗装の目的に応じ多くの種類の中から適切な塗料、塗装仕様を選択しなければならないが、最近建築現場塗装では木部塗装は減少傾向にあります。

 木部用塗料は油ワニス系、合成樹脂調合ペイント系、カシュー樹脂塗料系、ポリウレタン樹脂ワニス系、ポリウレタン樹脂塗料系などに代表されています。

(1)油ワニス系

 油性ワニスは天然樹脂、合成樹脂、加工樹脂と乾性油、乾燥剤などを加え、ミネラルスピリットなどの溶剤で希釈したものです。

 種類にスパーワニス、コーパルワニス、ゴールドサイズなどがありますが、使用頻度は激減しています。

(2)合成樹脂調合系

 この分類に入る合成樹脂調合ペイントやフタル酸樹脂エナメルは、金属面用塗料の項で説明を加えました。

 (a)油変性ウレタン樹脂塗料

 一般にウレタン化油又はウレタン化アルキド樹脂といわれるもので、ジイソシアネートと乾性油との反応混合物で、油はあまに油、大豆油などが使用され、一般にクリヤで塗装されます。

 クリヤ塗膜は光沢がよく、耐摩耗性に優れ、作業性が良好なことから木部の床などに多く使用されています。

(3)カシュー樹脂塗料

 カシュー樹の実であるカシューナッツの外殻より採れる樹液を原料として、これにフェノール樹脂などと乾性油、溶剤を加えて作る塗料で、天然漆に似た性質を持った塗料です。

 作業性がよいことから木工用だけでなく、金属用にも漆の代用品として使用されています。

(4)湿気硬化形ポリウレタン樹脂塗料

 塗装する空気中の湿気(水分)と反応して乾燥するタイプです。

 したがって、開缶した塗料は早期に使い切らないと、空気中の湿度と反応して硬化して使えなくなるので注意が必要です。

 塗膜性能は光沢が高く、硬度、耐摩耗性に優れているため、学校、体育館などの床用に使用されますが、塗料タイプはクリヤが主流です。

(5)不飽和ポリエステル樹脂塗料

 不飽和ポリエステル樹脂を主とした塗料液と硬化剤・硬化促進剤の3液形と、予め塗料中に促進剤を加えてある2液形があります。

 硬化時に空気と触れるのを嫌うパラフィンの入ったタイプ(ブリードタイプ)と、パラフィンの入らないタイプ(ノンブリードタイプ)があります。

 この塗料は一度で厚膜に塗装できるので木製の化粧版や木部の塗装に用いられます。特に表面硬度が高く、耐摩耗性、耐汚染性に優れていて、鏡面状に仕上がるため、ピアノや高級家具などの塗装に用いられます。

 欠点は耐アルカリ性に劣ることで、コンクリートやモルタルなどのアルカリ性下地には使用しません。

(6)セラックニス

 昆虫の分泌液から出来るセラックを変性アルコールに溶解して作ったワニスで乾燥が早く、硬度はあるが、耐水性は悪いです。

 セラックニスには漂白した白ラックニスとセラックニスとがあります。

 用途としては、木材の節止めや木製家具などに用いられます。

3-3-3 反応硬化(熱硬化)形合成樹脂塗料

3-3-3 反応硬化(熱硬化)形合成樹脂塗料

 反応硬化(熱硬化)形合成樹脂はエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂、ふっ素樹脂などに代表されます。これら塗料は、使用時に塗料液と硬化剤を規定量混合して使用するタイプです。

(a)エポキシ樹脂塗料(JIS K 5551 1種、2種)

 エポキシ樹脂に硬化剤としてポリアミドやアミンアダクトを規定量混合して、反応硬化させる高性能塗料で、長期防食を必要とする鉄鋼構造物や建築の金属部などに使用します。エポキシ樹脂塗料も製品規格は規定されていますが、JIS表示はできません。1種は標準の膜厚が約30μmで、主に鉄構造物及び建築金属部に用いるもので、上塗り塗料と下塗り塗料があります。2種は膜厚が60μm~120μmの厚膜形で、主に鉄構造物の長期防錆に用いるもので、上塗り塗料と下塗り塗料があります。実際はエポキシ樹脂の性能の良さから様々な用途に使用されています。前述の金属防食はもちろんですが、耐薬品の要求される壁面や、耐摩耗性の要求される床面又付着力の良さからシーラーなどにも使用されています。欠点は紫外線に弱いことで、紫外線の当たる場所に使用すると短時間でチョーキング(白亜化)するので、外部の最終仕上げには使用できません。硬化剤は活性で、皮膚に触れるとかぶれることがあるので注意して取り扱う必要があります。

(b)鋼構造物用耐候性塗料(JIS K 5659 :2008 1級、2級、3級)

 従来の構造物用ポリウレタン樹脂塗料と構造物用ふっ素樹脂塗料にシリコン系樹脂塗料を加えて鋼構造用耐候性塗料に改正されました。改正JISでは、樹脂別規格ではなく性能規格に変更されています。その結果、種別は1級が促進耐候性2000時間、2級が促進耐候性1000時間、3級が促進耐候性500時間と規定されています。なお、建築用ポリウレタン樹脂塗料と建築用ふっ素樹脂塗料は、鋼構造物用耐候性塗料同様に、シリコン系樹脂塗料に加えて改定中です。

 ①ポリウレタン樹脂塗料(JIS K 5656 建築用)

 建築用と鋼構造物用の2種類があります。

 建築用は同一塗料を2回塗りしますが、鋼構造物用は中塗り用と上塗り用があります。

 なお、鋼構造物用は、橋梁・タンク・プラントなど長期防食や耐候性、美粧仕上げに用いられる塗料で、中塗り用にはエポキシ樹脂タイプやポリウレタン樹脂タイプなどを用い、付着性を向上させています。

 ポリウレタン樹脂塗料の代表は、塗料液にアクリルポリオール樹脂を硬化剤にイソシアネート樹脂を用いたタイプで、アクリルポリオール樹脂に含まれる水酸基とイソシアネートが反応してウレタン結合ができてポリウレタン塗膜になります。

 その他、塗料液に使用する樹脂として、エポキシポリオールやポリエステルポリオールなどがあります。

 ポリウレタン樹脂塗料も応用範囲が広く、耐候性や耐水性の良さを生かして外壁に多用されており、他に防食用途や床用などにも使用されています。

1液反応型の湿気硬化形がありますが、このタイプは樹脂に硬化剤成分のイソシアネート基があり、塗装すると空気中の水分と反応して硬化します。したがって、このタイプは開缶したら放置せずに早期に使い切る必要があります。

 ②シリコン系樹脂塗料

 シリコンを変性した樹脂を使用した塗料で、触媒で反応を促進させて乾燥させるタイプと、イソシアネート樹脂を硬化剤に使用するタイプがあります。

 高耐候性塗料の位置づけにあり、外装用仕上げ材として需要が増加しています。

 従来は、溶剤形が主流でしたが、昨今は環境対応から水性系が中心になってきています。

 ③ふっ素樹脂塗料(JIS K 5658 建築用ふっ素樹脂塗料)

 建築用と鋼構造物用の2種類があります。

 建築用は同一塗料を2回塗りしますが、鋼構造物用は中塗り用と上塗り用があります。

 なお、鋼構造物用は、橋梁・タンク・プラントなど長期防食や耐候性、美粧仕上げに用いられる塗料で、中塗り用にはエポキシ樹脂タイプやポリウレタン樹脂タイプなどを用い、付着性を向上させています。

 四フッ化エチレン樹脂・三フッ化エチレン樹脂やフッ化ビニリデン樹脂を塗料用樹脂に用いたタイプがあり、イソシアネート樹脂を硬化剤として使用しています。

 現在、常温乾燥系塗料では最強塗料と言われ、メンテナンスサイクルは15年以上とされています。

 最近では環境対応型として外壁用に水性タイプも上市されています。

3-3-2 溶剤形塗料

3-3-2 溶剤形塗料

(a)アクリル樹脂エナメル

 アクリル樹脂エナメルは、熱可塑性アクリル樹脂に顔料を配合した、自然乾燥形の揮発乾燥性塗料で乾燥が早いのが特徴です。現在、専用シンナーを用いた速乾性塗料の代表です。耐アルカリ性、耐候性等性能の位置づけから、コンクリート、モルタル、サイディングボードなどの仕上げ材として汎用的に使用されています。

 

(b)アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K 5670)

 一般に、水に合成樹脂を分散させ乳液状にした樹脂をエマルション樹脂と呼びますが、水の代わりにミネラルスピリット(塗料用シンナー)にアクリル樹脂を分散した樹脂で、水を使用しないエマルション樹脂であることから、非水分散系樹脂と呼んでいます。通称NAD(Non Aqueous Dispersion)とも呼ばれています。品質は、JIS K 5670に規定されており、適用範囲は、「主として建築物のコンクリート面や、セメント、モルタル面、プレキャストコンクリート、押出し成形板などに使用する」となっています。従来のアクリル樹脂エナメルは、有害性の強い第2種有機溶剤(トルエン・キシレンなど)を使用していますが、非水分散型アクリル樹脂は第3種有機溶剤(ミネラルスピリットなど)を使用しています。このため、溶剤形塗料としては環境や安全にやさしい塗料であり、需要は増しています。

 

(c)塩化ビニル樹脂エナメル(JIS K 5582 1種、2種)

 塩化ビニル樹脂エナメルはコンクリート、モルタル、スレート、木部などの塗装に使用する速乾形塗料です。品質は、JIS K 5582に規定されており、種類は1種の主に屋内用と2種の主に屋外用に分類されています。耐水性や防カビ性に優れていることから浴室や厨房などに使用されていましたが、昨今は水性化の波に押され、なおかつ環境・安全問題から需要は激減しています。平成16年度版、公共建築工事標準仕様書からも削除されています。

 

(d)塩化ゴム系塗料

 塩化ゴム系塗料には、下塗り、中塗り、上塗りの3種類がありますが、下塗りは亜鉛メッキ用で鉄鋼面へは使用しません。鉄鋼面へは、一般的には変性エポキシ樹脂塗料を下塗りしてから塩化ゴム系塗料の中塗り、上塗りを塗装します。この種の塗料は、耐水性、耐塩水性などに優れていて、塩害を受けやすい環境に適用されています。ただし、環境面・安全面への配慮から各標準仕様書から削除され、需要も減少しています。

3-3-1 油性系塗料

3-3-1 油性系塗料

(1)油性系

 油性系塗料は乾性油を樹脂に使用した、塗料としては最も古いタイプで、その需要は減少の一途を辿っています。その種類はボイル油系と油性ペイント系に分けられます。

 ボイル油系はボイル油、煮あまに油、地塗りボイル油などがありますが、現在、主に流通しているのはボイル油です。

 油性ペイント系はボイル油に顔料を混合したもので堅練ペイント、油性調合ペイント、油性調合色ペイントがありますが、油性調合ペイントがかろうじて残っている程度です。

 (a)ボイル油及び煮あまに油(JIS K 5421)

 ボイル油は乾性油、反乾性油に乾燥剤(ドライヤー)を加え、加熱しながら空気を吹き込んで製造されるもので、油を部分的に酸化させて乾燥を早くしたものです。煮あまに油はボイル油に、ほかの油を加工したものです。代表的な油に、あまに油、大豆油、しなきり油などがあります。

 (b)油性調合ペイント

 油性調合ペイントには、白顔料に亜鉛華を使用した油性調合白亜鉛ペイントと、酸化チタンを白顔料に用いた油性調合チタン白ペイントがありますが、従来のJIS K 5511油性調合ペイントでは、「油性調合ペイントは、着色顔料、体質顔料などを主にボイル油で練り合わせて作った液体・自然乾燥性の塗料である」と定義しています。

 (c)合成樹脂調合ペイント(JIS K 5516 1種 2種)

 合成樹脂調合ペイントは、着色顔料・体質顔料などを、主に長油性フタル酸ワニス(油の量が56%~65%)で練り合わせて作った液体・自然乾燥形の塗料です。JIS K 5516には1種と2種中塗り用、2種上塗り用があります。1種は主に建築用及び鉄鋼構造物の中塗り・上塗りに用います(同じ塗料を2回塗りする)。重ね塗り乾燥時間が16時間以上又は24時間以上と規定されたものが多く、油性調合ペイントよりは乾燥時間は早いが、フタル酸樹脂エナメルよりは遅い位置づけにあります。1種、2種の違いは、2種には中塗り用があることで、中塗り用は超長油性(油の量が65%以上)にしてあり、中塗りのまま放置されても上塗りとの付着性が悪くなりにくいように配慮してあります。屋内に使用する場合、特に建築基準法に基づくF☆マークが、F☆☆☆、F☆☆があるので注意が必要です。最近は、F☆☆☆☆を表示した商品もあります。

 (d)フタル酸樹脂エナメル(JIS K 5572 1種、2種、3種)

 フタル酸樹脂エナメルは一般機器、建具などの上塗りに用いる塗料で、着色顔料・体質顔料などを乾性油変性フタル酸樹脂ワニス(中油性で油の量が46%~55%)で練り合わせて作った自然乾燥形の塗料です。JIS K 5572には1種、2種、3種がありますが、1種は主に屋内用、2種は主に屋外用、3種は主に屋内外で、特に速乾を要する用途に用います。屋内に使用する場合、特に建築基準法に基づくF☆マークが、F☆☆☆、F☆☆があるので注意が必要です。

 (e)油変性エポキシ樹脂塗料

 エポキシ樹脂を油変性したもので1液形の自然乾燥形塗料です。油性系塗料としては付着性、耐薬品性、耐久性がよく、耐薬品雰囲気条件などに使用されます。

 (f)アルミニウムペイント(JIS K 5492)

 アルミニウムペイントは、塗料用アルミニウム粉又はアルミニウムペーストと油性系ワニスを混合したシルバーペイントです。塗装すると、塗膜表面にアルミニウムが浮き、鱗片状に配列してアルミニウム皮膜を形成したようになります。銀色に仕上り熱、光の反射が大きいため、タンクなどの内面温度が上昇するのを防ぐ効果があります。また、鱗片状に配列したアルミニウムは水などの透過を防ぎ、防食性を向上させます。