(a)アクリル樹脂エナメル
アクリル樹脂エナメルは、熱可塑性アクリル樹脂に顔料を配合した、自然乾燥形の揮発乾燥性塗料で乾燥が早いのが特徴です。現在、専用シンナーを用いた速乾性塗料の代表です。耐アルカリ性、耐候性等性能の位置づけから、コンクリート、モルタル、サイディングボードなどの仕上げ材として汎用的に使用されています。
(b)アクリル樹脂系非水分散形塗料(JIS K 5670)
一般に、水に合成樹脂を分散させ乳液状にした樹脂をエマルション樹脂と呼びますが、水の代わりにミネラルスピリット(塗料用シンナー)にアクリル樹脂を分散した樹脂で、水を使用しないエマルション樹脂であることから、非水分散系樹脂と呼んでいます。通称NAD(Non Aqueous Dispersion)とも呼ばれています。品質は、JIS K 5670に規定されており、適用範囲は、「主として建築物のコンクリート面や、セメント、モルタル面、プレキャストコンクリート、押出し成形板などに使用する」となっています。従来のアクリル樹脂エナメルは、有害性の強い第2種有機溶剤(トルエン・キシレンなど)を使用していますが、非水分散型アクリル樹脂は第3種有機溶剤(ミネラルスピリットなど)を使用しています。このため、溶剤形塗料としては環境や安全にやさしい塗料であり、需要は増しています。
(c)塩化ビニル樹脂エナメル(JIS K 5582 1種、2種)
塩化ビニル樹脂エナメルはコンクリート、モルタル、スレート、木部などの塗装に使用する速乾形塗料です。品質は、JIS K 5582に規定されており、種類は1種の主に屋内用と2種の主に屋外用に分類されています。耐水性や防カビ性に優れていることから浴室や厨房などに使用されていましたが、昨今は水性化の波に押され、なおかつ環境・安全問題から需要は激減しています。平成16年度版、公共建築工事標準仕様書からも削除されています。
(d)塩化ゴム系塗料
塩化ゴム系塗料には、下塗り、中塗り、上塗りの3種類がありますが、下塗りは亜鉛メッキ用で鉄鋼面へは使用しません。鉄鋼面へは、一般的には変性エポキシ樹脂塗料を下塗りしてから塩化ゴム系塗料の中塗り、上塗りを塗装します。この種の塗料は、耐水性、耐塩水性などに優れていて、塩害を受けやすい環境に適用されています。ただし、環境面・安全面への配慮から各標準仕様書から削除され、需要も減少しています。