4-1 薄付け仕上塗材

4-1 薄付け仕上塗材

(a)外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(外装薄塗材E)

 一般的にはアクリルリシンの呼称で呼ばれており、薄付け仕上塗材の代表的塗材です。

 大別すると2種類があり、あらかじめ塗料中に骨材が混合されている既調合形と、現場でリシンベースに骨材を混合するセパレーツタイプがあります。

 経済性を考慮するとセパレーツタイプの方が使いやすく、現場でリシンベースに直径1~3㎜程度の寒水石や白竜石などを加えて、リシンガンで吹付け塗装します。

 この場合のリシンベースと骨材の混合割合は、リシンベース100に対して骨材は100~120程度です。

 仕上り外観はつや消しの砂壁状です。

 

(b)可とう形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(可とう形外装渦付塗材E)

 一般的に弾性リシンの呼称で呼ばれており、(a)のアクリルリシンに弾性機能を付与させたタイプです。

 アクリルリシンベースが通常の硬質エマルション樹脂を使用しているのに比べて、弾性リシンは可とう性を備えたエマルション樹脂を使用しています。骨材にも軟質性のものを使用した既調合形が多いです。

 

(c)防水形外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(防水形外装薄塗材E)

 一般的に単層弾性の呼称で呼ばれており、外壁の塗り替えに多用されています。

 ゴム弾性を備えた合成樹脂エマルションを使用した高粘度塗料で、多孔質ローラーとウールローラーを併用して仕上げる工法が多いです。

 平米当たり1~1.3kg程度塗付けて波形状の模様を作りますが、通常、下地からのひびわれ幅で0.5㎜程度までは追随できるものが多いです。

 

(d)内装消石灰・ドロマイトプラスター系薄付け仕上塗材(内装薄塗材L)

 一般的にけい藻土塗材と通称されるものなどを含み、3㎜程度までの膜厚で塗布し、調湿性を特徴にしたものが多いです。

 調湿性とは、塗膜が湿気を吸収したり排出したりして、屋内の湿度調整する機能であり、中にはホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)を吸着するものもあります。

 健康住宅用として注目されています。

 

(e)内装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(内装薄塗材E)

 一般的に京壁仕上げ又はじゅらく仕上げの通称で呼ばれている内装用の砂壁仕上げ材です。

 合成樹脂エマルション塗料に微細な珪砂などの骨材が混入してあり、じゅらくガンで吹付け仕上げするタイプで、和室に適しています。

4.建築用仕上塗材

4.建築用仕上塗材

 建築用仕上塗材はJIS A 6909に規定されており、その種類は薄付け仕上塗材が11種類(外装用6種類、内装用が5種類)、厚付け仕上塗材8種類(外装用が3種類、内装用が5種類)、軽量骨材仕上塗材2種類(内装用2種類)、複層仕上塗材10種類(外装用10種類)、可とう形改修仕上塗材3種類(外装用3種類)合計34種類と非常に多いです。

 仕上塗材は、建築物の内外壁又は天井の表面などに、ある種の造形的なテクスチャーパターン(模様)が作れ、代表的には、砂壁状、ゆず肌上、凹凸模様、凸部押さえ状、スタッコ状などがあります。

 種類は多いものの汎用的に使用される塗材は限られるので代表的なものにつき解説します。

 

4-1 薄付け仕上塗材

4-2 厚付け仕上塗材

4-3 軽量骨材仕上塗材

4-4 複層仕上塗材

4-5 可とう形改修用仕上塗材

3-3-7 その他塗料

3-3-7 その他塗料

(a)粉体塗料

 塗料を粉体化したもので、塗料種にはエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂タイプなどがあります。

 粉体塗料は、静電粉体塗装機や静電流動浸漬塗装、流動浸漬塗装などで塗装され1回で厚膜が得られる特徴があることからフェンス、門扉、電化製品、自動車などに幅広く使用されています。

 特に、溶剤を使用せず、塗装時に付着しなかった塗料が回収できるなど、経済的でもあり、環境にもやさしく、注目の工場塗装用塗料です。

 

(b)水溶性塗料

 水溶性塗料は、水に溶解するように変性された樹脂を用いており、工場で電着塗装などで塗装後、加熱乾燥して塗膜を形成します。

 メラミン樹脂タイプやアクリル樹脂タイプが一般的です。

 水溶性塗料は、溶剤を使用していないことから安全性が高く、環境にも優しい塗料です。

 

(c)ニトロセルロースラッカー塗料(JIS K 5531)

 ニトロセルロースラッカーは、工業用ニトロセルロースとアルキド樹脂を主な樹脂とした、速乾形の揮発乾燥性塗料です。

 JISでは、木材面の透明塗装及びラッカーエナメルで塗装したときの仕上塗りに使用するクリヤラッカーと金属面や木材面の上塗りに用いるラッカーエナメルについて規定されています。

 ニトロセルロースラッカー塗料はエアスプレーでの塗装が一般的で、膜厚も薄く、塗り回数が多く必要であるばかりか、飛散問題もあり、使用頻度は減少しています。

 

(d)アクリルラッカー塗料

 ラッカーの持つ速乾性や光沢などを生かしながら、耐候性や耐薬品性を向上させたのがアクリルラッカー塗料です。

 最近では、ラッカーといえばアクリルラッカーに代表されていますが、ニトロセルロースラッカー同様に、使用頻度は減少しています。

 

(e)アミノアルキド樹脂塗料(JIS K 5651 クリヤ、エナメル)

 アルキル化アミノ樹脂とアルキド樹脂を主成分とした焼付け形塗料です。

 JISには、クリヤタイプで1種、2種の2種類が、エナメルタイプでは1種、2種1号、2種2号、3種の4種類があります。

 クリヤタイプはエナメル仕上げ後の仕上げ塗りに用いられます。

 エナメル1種(140℃±10℃)は耐食性を重視する上塗りに用いられます。2種1号(110℃±10℃)は低温焼付け用に、2種2号(130℃±10℃)は一般焼付け後の上塗りに用います。

 用途は主に電気器具、工業機械、建築用では鋼製建具、配電盤、家具などです。

3-3-6 特殊塗料

3-3-6 特殊塗料

 塗料に要求される性能は、美粧、保護及び機能だが、塗料の中には特別な機能を持つものがあり、特殊塗料として分類しているものがあります。

(1)防止性能塗料

 (a)耐火塗料

 火災時に、早期に鉄骨が崩壊しないように保護する塗料で、難燃性のロックウールを含む塗料を厚塗りするタイプや、塗膜が燃焼すると発砲して保護するタイプなどがあり、グレードは1時間耐火や2時間耐火などの基準があります。

 この種の塗料は、鋼材別の膜厚管理が重要です。

 (b)防かび塗料

 建築物は高温・多湿などの条件でカビが発生しやすく、代表的なカビには黒カビや青カビ、黄カビなどがあります。

 カビの発生を防ぐにはカビが生えにくい環境づくりが重要ですが、補助的には防かび塗料を塗装する方法があります。

 防かび塗料は耐水性、耐アルカリ性、耐湿性などの優れた塗料に、防かび剤を添加したものが一般的です。

 以前は水銀系や錫(スズ)系の防かび剤が使用されていましたが、安全・健康問題から、昨今では有機系の防かび剤が使用されています。

 いずれにしても、カビの発生個所を塗装する場合は、発生しているカビの除去と殺菌が最も重要な作業になります。

 (c)耐薬品性塗料

 化学薬品工場に代表される工場などに塗装される塗料は、化学薬品の影響を受ける過酷な条件に耐える性能が要求されます。

 塗料の選択では、塗装する目的・条件に応じた選択を行いますが、一般的には、エポキシ樹脂塗料とポリウレタン樹脂塗料が多用されています。

 (d)路面標示用塗料(JIS K 5663 1種、2種、3種)

 トラフィックペイントとも呼ばれ、路面に塗装することで車両や歩行者の交通事故防止に役立てる塗料です。

 路面標示用塗料は大別して、通常のエナメルタイプと、粉体状で塗装時に熱を加えて溶解し塗装する溶解形(ホットメルト形)がある。

 いずれにしても、塗装後、短時間で歩行できるような速乾形です。

 色相は白と黄色(5.5R 6.5/12)で、エナメルタイプはそのままローラーなどで施工しますが、溶解形は塗料を加温し、溶解状態で流し塗りをし、急速冷却して固めます。反射性を生かすためにガラスビーズを使用しますが、散布系と混合形があります。

 

(2)特殊模様塗料

 (a)多彩色模様塗料

 専用ガンを用いて、1回塗りで多彩な模様仕上げができる塗料です。

 塗料は、一般に各種に着色した塗料を大小異なった大きさの粒状にして異種の塗料に混合し、互いに溶け合わないようにしたものです。

 溶剤形と水性系があります。

 (b)メタリック塗料

塗料中に配合された金属粉により金属状に反射光を示し、美しい色、つやが金属状に生ずる塗料です。

 金属粉は主にアルミニウム粉末であり、一般にはノンリーフィングタイプといわれています。

 ノンリーフィングタイプは、塗膜中にアルミニウムが沈んだ状態で、粒子の大小で外観が変化します。

 主に、自動車や電化製品などに使用されます。建築用もあります。

 吹付け用塗料で、膜厚、希釈粘度、塗り方、塗付け量などで仕上り外観が異なるので、塗装には熟練を要します。

 (c)ハンマートーンエナメル

 金属面をハンマーで細かく叩いたような美しい模様を作るように設計された塗料です。

 塗料には、ノンリーフィング形のアルミニウム粉末と特殊シリコン樹脂が少量配合されていて、吹付け塗装により塗膜にはじき模様が生じます。

 エアスプレーで塗装しますが、一般には低圧で粘度をやや高めにし、吐出量を多くするとよいです。

 (d)クラッキング塗料

 塗装した塗膜にクラック(ひび割れ)模様のできる塗料です。

 クラックを発生させるメカニズムは、溶剤系塗料の持つ塗膜の溶解性と、乾燥時に生じる塗膜の収縮差を応用したものです。

 クラックが発生しやすいように十分な膜厚で塗装した柔らかい下塗り面に、下塗りより溶解力が強く、乾燥が早く、顔料配合量を増やした硬い上塗りを塗装します。

 クラックは、上塗りに含まれる溶剤が下塗り塗膜を溶解し一体化しますが、乾燥過程で下塗り塗膜の伸びと上塗り塗膜の伸びに差が生じるため、力にバランスが崩れ、上塗り塗膜にクラックが発生します。

 (e)スウェード調塗料

 触れたときの触感や外観が、スウェード調になる水性系合成樹脂エマルション塗料です。

 この塗料は中塗りと上塗りで構成されていて、中塗りは通常の塗料ですが、上塗りはクリヤに特殊なプラスチックビーズが配合してあります。

 中塗り塗膜乾燥後に、中塗りを規定量混合した上塗り塗料を専用の塗装具で塗装すると、塗装具ごとの意匠を持つスウェード調塗膜が得られます。