3.各種スプレーガン

3.各種スプレーガン

(1)エアブラシ

 写真、人形、絵画、ポスター、車等の美術工芸用のスプレーガンとして使われている。このガンの特徴は、塗料を高微粒化させることよりも、細かい均一な線が連続的に引けることにある。筆と定規を使う代わりに用いられるガンがエアブラシである。スプレーガンの形状が筆の形になっているのは、筆の感覚で吹付けられることと、吹付け面積が非常に小さいからである。エアブラシの種類は、塗料供給方式により重力式と吸上げ式に分けられる。基本機構はエアスプレーガンと同じであり、塗料と空気を混合して霧にしている。

(2)長首スプレーガン

 長首スプレーガンは、普通のスプレーガンでは塗装が困難な、ガソリンタンクの内面や、手の入らない狭いところなどに適する。首の長さは、150~500㎜であるが、先端部分は必要に応じて45度や90度に曲げられているものがある。

(3)乱糸スプレーガン

 塗料を微粒化せずに糸状に噴射し、圧縮空気の流れによって塗料を糸状に振動させて塗るもので、主に工芸品の用いられる。空気キャップの交換によって、梨地、ぼかしなどの模様をつくったり、また、塗料粘度、空気圧、吹付け距離を変えると模様に変化をもたせることができる。

2.エアスプレーガンの操作

2.エアスプレーガンの操作

浮きつけの基本条件は吹付け距離、運行速度、塗り重ねの三つである。

(1)吹付け距離

 被塗物とスプレーガンの距離(吹付け距離)は、一般に、大型スプレーガンの場合20~25㎝、小型の場合15~20㎝程度とする。

 吹付け距離が近すぎると塗膜が厚くなり、流れる。反対に、遠すぎると塗料が飛散して塗膜が薄くなり、塗料の損失が多くなる。また、乾燥の早い塗料を遠くから吹き付けると、塗面がざらつき、塗装面の光沢がなくなる。

(2)スプレーガンの運行

 スプレーガンは、被塗物に対して直角に保持し、吹付け距離を一定に保つように運行する。スプレーガンを傾けたり円弧状に動かすと、膜厚が不均等になる。運行速度は、30~60㎝/秒程度とし、あまり早すぎると塗膜が薄くなり、遅すぎると流れを生じる。

(3)塗重ね

 均一な膜厚とよい仕上がり面を得るためには、吹付けたパターン幅をある程度重ねることが必要である。塗り重ねの目安は、パターン幅の1/2程度がよい。吹付けたパターンを先端にノズルの中心がくるように、ガンを平行移動させていくと、パターンの約1/2が重なり、均一な膜厚を得やすい。

 塗重ねで最も重要な点は、作業者が絶えず塗装面を見ながら均一な塗膜、肌ができていることを確認することである。

 また、各部や水平面に対する吹付け操作は、最初に端を塗り、次に、オーバースプレーの霧がすでに塗った面に付着して肌荒れしないように、手前から吹き付けていく。

 入隅部の吹付け方法は、次のように行う。

 最初に周囲を塗布した後、左右の面ごとに分けて吹付ける。内側角に向かって吹付けると、塗料粒子が跳ね返って付着せず、膜厚が不均一になりやすい。

(4)スプレーガンの手入れ

a 使用直後

 ①洗浄液のみをスプレーし、塗料カップ及び塗料の通路を洗浄する。

 ②空気キャップの先端部をブラシで洗浄する。

 ③空気キャプをはずし、塗料ノズルをブラシで洗浄する。

 ④空気キャップを洗浄する。

b 定期的(数か月~6カ月ごと)

 ①先端部を分解し、塗料ノズルと空気キャップの穴を洗浄する。

 ②塗料カップと接続している塗料通路に付着している塗料をよく取り除く。

 ③塗料噴出量を調節するねじを緩めて分解し、ニードルの洗浄およびニードル弁パッキンを点検したり、ねじ部に注油する。

1.装置の構成と霧化機構

1.装置の構成と霧化機構

 エアスプレー装置は、基本的にスプレーガン、塗料容器、エアホース、空気清浄圧力調整器(エアトランスホーマー)、空気圧縮機(エアコンプレッサー)からなる。

 一方、エアレススプレーの装置は、ガン、塗料ホース、加圧用ポンプ(高圧塗料ポンプ)からなる。

 塗料に高い圧力を加えるポンプには、プランジャーとダイアフラムポンプの2種類が使用されている。プランジャーポンプを作動させるにはコンプレッサーが必要であるが、ダイアフラムポンプは電動モーターで作動させるため、装置がコンパクトになる。建設塗装現場では、ダイアフラム式の装置が多く用いられている。

(1)エアスプレー

 モルタルガンやリシンガンはエアスプレーに属するが、一般に用いるスプレーガンとは外観も大いに異なっている。

 エアスプレーにおいて液体が霧になるのは、霧吹きと同じ原理である。すなわち、液体と空気を混合させると霧になる。液体に対する空気量が多くなるほど、細かな霧の微粒子が得られる。塗料を微粒化するほど、塗装面はより鏡のように平滑に仕上がる。

 塗料と空気をガンの内部で混合する方式(内部混合式ガン)よりも外部で混合する方式(外部混合式)のほうが、空気/塗料の混合比を大きくすることができ、より小さな微粒子を得ることができる。

a 内部混合式

 モルタルガン、タイルガンは内部混合式であり、空気は塗料の微粒子化に機能する必要がなく、塗料を被塗物に運搬する役目さえすればよい。それゆえ、外部混合式ガンによるエアスプレーとは塗り肌が本質的に異なる。壁面に模様を付けるには、大きな粒子の状態で塗着させればよく、用いる塗料もペースト状の高粘度のものである。これらのガンは特殊ガンとして分類されることがおおい。

 一般に空気使用量は、30~150/分で、エアコンプレッサーは1馬力あれば使用できる。ガンの先端に付けるノズルは、口径の大きさによって数種類用意されており、吹付け材の種類や模様によって使い分けられる。口径4~8㎜くらいまでがよく用いられる。

b 外部混合式

 一般にいうエアスプレーガンとは外部混合式ガンである。ガンには塗料と空気の取入口が別々に付いており、それぞれ塗料ニップル、空気ニップルと呼ばれている。さらに、入ってきた圧縮空気を流したりと止めたりする空気弁と、塗料をON、OFFするニードル弁、塗料を霧化する空気キャップから成り立っている。

 スプレー時の空気量を調整したいときには、空気ニップルの横にあるねじを回せばよい。通常は全開状態になっており、空気弁のところまで常に空気がきている。空気弁の開閉は引き金の作動により行う。引き金を引くと、霧を作る空気が流れ込む。さらに引き金を引くと塗料のON、OFFを担当するニードル弁が後方に押し下げられ、塗料ノズルより塗料が噴出する。

 塗料噴出量調節装置は、このニードル弁の押下げ寸法を調節することによって、噴出量を加減する。時計方向に回して閉め込むと、引き金を引いても空気しか出てこない。引き金の作動により、必ず空気の次に塗料が出てくる機構になっている。これは、塗料が先に出てしまうと、霧化されない塗料が被塗物についてしまい、塗面不良になるのを防ぐためである。

 空気キャップによい吹付けパターンを得るための工夫がされており、塗料は空気キャップの外観で空気と混合して霧になる。

 空気キャップには中心空気穴、側面空気穴(角穴)及び補助空気穴がる。中心空気穴は主空気穴であり、塗料を吸引したり、霧化したり、また被塗物まで運ぶ働きをする。側面空気穴は、この穴から噴出する圧縮空気で、スプレーパターンを丸形からだ円に変形させる。側面空気を直接、中心空気及び塗料に当てると、パターンはだ円になりきらなかったり、中央部が割れたりして不定形になる。補助空気穴から噴出する空気がパターン形状を安定化させ、さらに霧化粒子の大きさを均一化させる役目をする。

 スプレーパターン調節ねじの回転によって、側面空気穴から噴出する空気量が変わる。閉め込むと側面空気は出なくなるのでパターンが丸形になるが、全開にすると多量の空気が出るので大きなだ円形のパターンが形成される。

 

(2)低圧スプレーガン

 塗料の付着量(塗着率)を増大させることによって溶剤の揮発量を削減したガンで、地球環境を守るために考案された塗装機器の一つである。

 ガン入り口圧力は、従来タイプと同じく約0.4MPa(4kgf/)であるが、空気キャップには多数の穴があけられている。そのため、空気キャップ内の霧化圧力は低くなる。一般に霧化圧力を低くすると霧化粒子が大きくなる傾向にあるが、これは空気を多量に流すことによって、霧化粒子を大きくしない方式のガンである。被塗物との衝突時に及ぼす霧化粒子の圧力は低くなるので、跳返りが減少し塗着率が高まる。最近、内部混合と外部混合との2段階霧化方式を採用して、空気量を減らす方式のガンも市販されている。

 

(3)エアレススプレー

 エアスプレーが空気と塗料を混合させて霧化するのに対し、エアレススプレーは空気を使わないで霧化する塗装機器である。

 水道のホースで水まきをするとき、水道のコックを全開にし、ホースの先端を徐々に小さくしていくと、水は次第に勢いよく噴出し、ついには霧状となる。エアレス塗装機はこの原理を応用し、水道水の代わりに塗料を霧化させたものである。

 一般家庭の水道水の水圧は(0.2MPa/)程度であり、この程度の圧力では粘性のある塗料を微粒子化することができない。そこで、塗料用高圧ポンプを使用して液体圧力を10~30MPa(100~300kgf/)に高めるとともに、ホース出口を小さくつぶすものとしてノズルチップを付け、出口の穴径を0.1㎜以下にしてある。

a.ダイアフラムポンプ

 建築塗装では水性塗料が多く、移動が多いことから、エアコンプレッサーのいらないダイアフラムポンプを用いた塗装機が使用される。

 ダイアフラムポンプは、ピストンの往復運動によって生じた油圧によりダイアフラム板を上下動させる機構である。ダイアフラムの下降で塗料を吸い込み、上昇で排出する。プランジャーポンプと異なり、1秒間に25~30回上下動する。

 ダイアフラム板には、高圧で耐溶剤性が要求されるため、硬質ナイロンが使用されている。動力源が電動モーター化エンジンであるため、高圧になった時のモーター制御が必要となる。一般には、設定圧力以上に上昇するのを防ぐため、調圧弁により油圧圧力を逃す機構を採用している。

b.高圧塗料ホース

 高圧塗料ホースは、ポンプで圧縮された高圧塗料をエアレススプレーガンに送るためのホースで、いっぱんには硬質ナイロン材が使用されている。また、高圧によるホースの破損を防ぐために、ナイロンホースの外皮にステンレス線や鋼線を編み上げてある(アース線も兼ねる)。そのため、エアスプレーガンの塗料ホースに比べて安全性は向上するが、作業性、柔軟性が悪い。

c.エアレススプレーガン

 ポンプ、ホースと送られてきた高圧塗料を受け、ノズルチップを通じて被塗物を塗装するもので、特別な調節機構はない。塗料の開閉を行うニードル弁機構があるだけである。さらに、作業性の面から、ユニバーサルジョイント、引き金を引いたままにできる機構、危険防止から手が直接ノズルチップに触れないためのハンドガード、スプレー時以外は誤って引き金を引かないためのセーフティーロックが設けられている。

d.ノズルチップ

 ノズルチップの先端部は超硬合金で作られ、塗料による摩耗を防いでいる。先端はだ円形の穴となっており、その形状のままだ円のスプレーパターンが形成される。チップ先端から噴出された塗料は、初めは液体のフィルム状に飛び出し、大気と衝突することによって次第に細かい粒子となる。

 塗料によっては、スプレーパターンの両端に粗い粒子が出るテール現象が発生する。テールノズルチップ内部での塗料の流れの不均一により生じる。両端から余分な塗料が出て、塗り肌が荒れる。エアレスの短所であるテールの発生要因は、次のとおりである。

 ①塗料加圧圧力が低い。

 ②塗料の粘度が高い。

 ③塗料の比重が高い(さび止め塗料のように、顔料分の多い塗料に発生しやすい)。

e.エアレス塗装機の特徴

 ①エアスプレーに比べ塗料の飛散が少ないため、衛生的に作業ができる。

 ②高粘度塗料の塗装ができるので溶剤が少なくて済み、厚塗りが可能である。

 ③ポンプの種類が多いので、被塗物や使用塗料によって機種選定ができ、最適塗装が可能である。

 ④塗り幅の形は、山形でないため、塗り重ねパターン幅の1/4~1/5程度とする(エアスプレーでは、パターン幅の1/2~1/3程度を塗り重ねる)。

f.エアレスの使用上の注意

 液圧が高いため、取扱を誤ると非常に危険であり、人命を左右する事故となる場合があるので、十分に注意する必要がある。

 ①一度に高圧力まで上昇させずに、低圧にて各接続部の塗料漏れを確認する。

 ②ポンプの最高使用圧力を確認し、それ以上に圧力を上げない。

 ③ポンプは空運転させない。

 ④人体、特に、露出した顔や皮膚に向けて塗料を噴射してはいけない。高圧のため、皮膚に穴が開いたり、失明の危険が生じる。またノズルの先に手を出して圧力を確かめるようなことも絶対してはいけない。このことで手に重要を負った例がある。

 ⑤ポンプは必ず接地する。また、被塗物もアースを取り、発生した静電気をためない。高圧で噴射された塗料が空気と衝突すると静電気を帯び、ガン本体も帯電し、スパークして引火する危険がある。ポンプを接地すれば、ガンに接続する塗料ホースは導電体であるから、静電気を逃すことができる。

吹付け塗装

吹付け塗装

 塗料を霧のような小さい粒子にして、被塗物に吹き付ける方法を吹付け塗装と呼んでいる。現場では、エアスプレーやエアレススプレーが用いられるので、塗料を霧化する原理及びこれらの装置を取り扱うために必要な知識を記す。

 まず、塗料(液体)を霧化すると、どんな利点が得られるのだろうか。はけ塗り、ローラ塗り、吹付け塗りの作業性を比較する。

 吹付け塗りの利点は、複雑な形状をした被塗物に対して効率よく塗装できることにある。ただし、水あめのような高粘度の塗料は、霧化できないという欠点がある。塗料をきしゃくすれば塗料の粘度が下がりつ吹付けができるようになるが、塗料自体に高圧をかけてスプレーガン先端の細かいすき間から噴出させると、高粘度の塗料も霧化できる。塗料に高圧をかける吹付け塗装がエアレススプレーである。

 

塗装作業性の比較

  はけ塗り ローラ塗り 吹付け塗り
平板に対する塗付け能力
複雑な形状をした被塗物に対する適正 ×
塗装面の肌
塗装可能な塗料の粘度

(注)(大又は優) ◎ > 〇 > △ > × (小又は劣)

4.へら付け

4.へら付け

(1)へら付けの目的

 へら付け作業は大きく分けると、次の三つになる。

①拾いパテ付け作業

②パテしごき作業

③下地へら付け作業

 拾いパテ付け作業は、塗装する面のくぼみの部分にパテを埋めて、他の面と同一の高さにするための作業である。使用するパテは、不飽和ポリエステル樹脂パテ、オイルパテ、ラッカーパテなどいろいろあるが、くぼみの程度、塗装条件、環境などを考えて選ぶ。

 パテの種類とその特徴については次のとおりである。

①ラッカーパテ

 肉もちは悪いが、乾燥が大変早い。作業はやりにくい。

②オイルパテ

 ラッカーパテに比べて肉もちはよい。乾燥が遅く、ラッカーパテより作業はしやすい。

③合成樹脂溶剤形パテ

 塩ビ、アクリル、ウレタン系、エポキシ系のパテがある。塩ビ、エポキシ系のパテは、主に壁面塗装に用いられることが多く、ウレタン系のパテは木材、金属、コンクリート、モルタル面の塗装に用いられる。

④不飽和ポリエステル樹脂パテ

 厚付けができ、深いくぼみでも一回で埋まる。

⑤その他

 水性下地、カシュー下地、漆さびなどがあり、各用途に従って使用する。

 パテしごき作業は、主に建築物塗装で、合板面、ボード面、モルタル面などの巣穴や凹凸などの肌直しのための作業である。

 下地へら付け作業は、下地塗料をへらで平たんになるよう厚く塗付け、下地の凹凸を修正し、上塗りの仕上がりをよくするために行われるものである。

 

(2)へら付けの方法

 へら付け作業では、へらを自由に操作できることが求められ、熟練を必要とする。基本的には、はけ塗りと同じで、配り、ならし、むら切りの3工程がある。

 この操作は、定盤と被塗物の間で交互になされるので、一定量の塗料又は下地材料を定盤の上に取り、練りべらでよく練って、粘度を調節する。

 次に、付け方について述べる。

①定盤の上の塗料を付けべらで取る。

②塗料が一定の厚さになるように力を加え、へらの腰を利用して引き延ばす。

③引き延ばすに従い、角度が小さくなるようにしながらへらを動かす。

④さらに気に均一にするため、返しべらを行う。反対の方向から返しべらを使ってならす。

⑤次に仕上げを行う。これは一定の角度で行う。

①~⑤の操作を、直角方向及び平行方向に何回か繰り返し、均一の塗膜としなければならない。しかし乾燥の早い塗料では、短時間に処理する必要がある。

 a 下地へら付け

 下地塗料、パテ類の下地へら付けは、被塗物の形状に応じた方法でしなければならない。平面では、へらの腰が強く弾力性のないもので、初めに面を平らにすることに主眼をおく。次に仕上げ面を美しくするためには、弾力性のあるへらで、へらざかい、へらまくら、へら継ぎのない様に仕上げる。また曲面の塗装では、へら付けは直線に近い方向にへらを操作し、研ぎ仕上げを前提にして、下地へら付けをしなければならない。へら腰も平面の場合より軟らかいものが作業しやすい。

 b 拾いパテ付け

 へら付けには、前面にパテ付けするほかに、部分的にパテ付けをする場合がある。これを拾いパテ付けという。拾いパテ付けは、下塗り、中塗り後、小さい傷を拾ってパテ付けするが、この場合、余分な箇所にできるだけパテが付着しないようにする。