重合乾燥(主に化学反応による自然乾燥形)

重合乾燥(主に化学反応による自然乾燥形)

 重合乾燥塗料は、反応硬化形塗料とも呼ばれ、代表的な塗料には2液型エポキシ樹脂塗料、2液型ウレタン樹脂塗料、2液型シリコン系樹脂塗料、2液型フッ素樹脂塗料などがあります。

 2液型塗料は、主剤と硬化剤が別容器になっており、使用前に決められた配合割合で均一に混合して使用します。

 主剤と硬化剤を混合すると反応が始まり、反応前成分とは異なった構造を作り、乾燥・硬化します。この反応を、橋かけ反応とも呼ばれています。

 2液型塗料は、主剤と硬化剤を混合した時から反応が始まっており、塗料は刻々と変化します。そのため、主剤と硬化剤を混合した塗料の使える時間が決まっており、その時間内で使い切らなければなりません。この混合後に使用可能な時間を、可使時間(ポットライフ)といいます。

 主剤と硬化剤の混合割合は、製造メーカーが塗料設計する際に、反応割合を決めてあるので、混合比率は守らなければなりません。

 不飽和ポリエステル樹脂塗料の場合は3液形で、主剤と硬化剤だけでは反応が遅く、触媒を加えることで急速に反応します。

 重合乾燥形塗料は、一般に耐薬品性、耐溶剤性、耐久性など優れた性能を発揮します。

(揮発)酸化重合乾燥(物理変化+化学変化による自然乾燥形)

(揮発)酸化重合乾燥(物理変化+化学変化による自然乾燥形)

 このタイプの代表が、油性調合ペイントであり、合成樹脂調合ペイントです。

 油性調合ペイントの樹脂は100%油で、ほとんど蒸発する成分はなく、空気の中の酸素と反応して乾燥する酸化重合形です。

 酸化重合乾燥は、油の中でも半乾性油や乾性油など、分子中に共役二重結合という、酸素と反応する成分を含んでいて、これと空気中の酸素が反応して乾燥します。

 この反応を早めるために、ナフテン酸金属塩などの乾燥材(ドライヤー)が配合されています。

 酸化重合乾燥形塗料を一度厚塗りにすると表面のみ酸素と反応して乾燥し、内部まで酸素が行き渡らないため上乾きして縮みが生じてしまいます。

 油性コーキングはこの原理を用いています。

 合成樹脂調合ペイントは、揮発重合乾燥形です。

 合成樹脂であるフタル酸樹脂は溶剤の揮発で乾燥しますが、油成分は空気中の酸素と反応して乾燥します。

 したがって、油性調合ペイントに比べると合成樹脂調合ペイントは乾燥が早いが、塗り重ね乾燥時間は16時間~24時間以上となっています。

 これは、見かけは乾燥していても、油成分が十分に反応していないためです。

 

融着乾燥(物理乾燥による。主に自然乾燥)

融着乾燥(物理乾燥による。主に自然乾燥)

 水を使用する塗料の代表に合成樹脂エマルションペイントがあり、この塗料が融着乾燥の代表例です。

 合成樹脂エマルションは、水の中に、0.5~1μm程度の非常に小さな合成樹脂が粒子として分散し、乳白色を呈しています。

 塗装すると、①水が蒸発し樹脂粒子の濃度が濃くなる。 ②樹脂粒子の濃度が高くなると、粒子が接触する。 ③接触した粒子は融着し、塗膜を形成する。

 合成樹脂エマルションペイントは低温で水が蒸発しなかったり、凍結すると正常な塗膜が得られないことがあるので温度管理や湿度管理には十分に気を付ける必要があります。

 現在は水を使用しないエマルション:非水エマルション(NAD)形塗料が大きなウエートを占めています。

 このタイプは水の変りに塗料用シンナーを用い、塗料用シンナーに溶解しない合成樹脂を小さな粒子として分散してあります。

 代表的にはアクリル樹脂系があるが、弱溶剤を用いて強溶剤形アクリル樹脂塗料に匹敵する性能が得られることに特徴があります。

揮発乾燥(物理変化による自然乾燥形)

揮発乾燥(物理変化による自然乾燥形)

 揮発性乾燥は、塗料の乾燥の中では最も単純に行われるもので、塗料を均一な膜厚に塗装した後、塗料中の溶剤が揮発して、塗膜を形成するもです。

 この乾燥で代表的な塗料は、アクリルラッカー・塩化ビニル樹脂塗料・アクリル樹脂塗料などがあります。

 揮発乾燥形塗料の乾燥における注意事項は比較的少なく、温度が低くても乾燥するが、溶剤が揮発するときに生じる気化熱が塗装面により奪われるため、表面に結露(つゆ)が生じやすく、白化(ブラッシング:かぶり)に注意する必要がある。

塗料の乾燥・硬化

塗料の乾燥・硬化

1.塗料の乾燥・硬化

 塗料は種々の下地に容易に均一に塗装するためには、一般には液体でなければなりませんが、塗装後固化して塗膜を形成する変化を乾燥・硬化といいます。

 この乾燥・硬化は、揮発・融着などの物理変化と、酸化、調合などの化学変化によって生じるものと、その両方が同時に起きるものがあります。

 この乾燥・硬化の過程は、塗装作業が終了して塗膜になる間は、作業者が管理していないことが多いですが、その反面、塗装の目的である保護や美装などを達成させる塗膜を作るために最も重要な工程です。各塗料の乾燥方法を十分理解して塗装作業を行わなければならず、乾燥・硬化も塗装のうちであると考えなければなりません。

2.塗料の乾燥・硬化の種類

 塗料の乾燥・硬化の仕方は、塗料の樹脂(展色材)の種類によって異なり、一般に樹脂の種類が決定づけています。

 硬化・乾燥の種類を分類すると、下記の表に示すように、多くの種類に分けられます。

 

乾燥の種類 乾燥の機構 料の例 乾燥時間(h)
揮発乾燥 塗膜中の溶剤や水分が蒸発後、
塗膜が硬化する。
セラックニス
ラッカー
アクリルラッカー
塩化ビニル樹脂塗料
1~2
融着乾燥 溶剤や水分が蒸発すると、分散
していた樹脂粒子が接触・融着
して連続塗膜となる。
アクリルエマルション塗料
NAD(非水分散形)塗料
1~3
融解冷却乾燥 加熱によって融解した塗膜が
冷却によって硬化する。
ホットメルト塗料
融着用トラフィックペイント
 20~30分
(揮発)酸化乾燥 塗膜が空気の中の酸素を吸収して
酸化し、さらに重合を伴って硬化
する。
ボイル油・油性ペイント
合成樹脂調合ペイント
油ワニス・エナメル
フェノール樹脂ワニス・エナメル
アルキド樹脂ワニス・エナメル
15~20



加熱重合乾燥 加熱によって樹脂が重合して
硬化する。
熱硬化アミノアルキド樹脂塗料
熱硬化アクリル樹脂塗料
一般焼付塗料
工業用焼付塗料(粉体塗料・電着塗料)
130~150℃
30分
重合乾燥 触媒・硬化剤によって樹脂が重合
して硬化する。
ポリエステル樹脂塗料
酸硬化アミノアルキド樹脂塗料
0.5~1
ポリウレタン樹脂塗料
エポキシ樹脂塗料
5~15
電子線重合乾燥 電子線を照射して、活性ラジカルを
生成させて重合・硬化する。
電子線照射塗料 1~2秒
光重合乾燥 有効波長の紫外線の照射で重合・
硬化する。
 紫外線硬化塗料 数10秒~
数分

 

3.塗料の乾燥・硬化における各種条件

 塗料の乾燥・硬化は、温度・湿度に影響を受けます。

 特に、自然乾燥形塗料の場合、乾燥条件を工場塗装のように一定に定め、管理することは困難ですので、乾燥条件に起因する事故の発生もあります。

 塗装に好ましい条件は、気温15℃~30℃、湿度75%以下です。塗装出来る条件をもう少し広げると、気温5℃~40℃、湿度85%以下になります。

 気温5℃以下、湿度85%以上の範囲では、塗料の乾燥が大幅に遅れたり、白化(ブラッシング)を起こしたり、2液型エポキシ樹脂塗料では反応が進まず、期待する性能が得られないなどの問題が起きます。

 このように、乾燥時の条件は、気温・湿度が中心になりますが、これらに影響を与える風の強さや天候などに十分注意する必要があります。