2-4 塗膜の耐久性能に関する試験

2-4 塗膜の耐久性能に関する試験

 塗膜が主に外部に暴露された場合、長期に長持ちする性能を耐候性・耐久性といいます。

 耐候性を調べる方法は、屋外に暴露して塗膜の変化を調べる方法と促進耐候試験機を用いて調べる促進耐候性試験があります。

 その他、耐湿潤冷熱繰返し試験や耐中性塩水噴霧試験があります。

 

1.促進耐候性(キセノンランプ法):JIS K 5600-7-7

                                        JIS K 5400-9-8

 塗膜の耐候性(暴露性能)は自然暴露が望ましいことは言うまでもありませんが、試験期間が年単位とあまりにも時間がかかりすぎます。

 自然暴露と促進耐候性試験において生じる老化過程は、多くの影響を及ぼすため、互いに相関関係があるとは期待できません。

 それでも、一定条件での耐候性を短時間で評価するためには、促進耐候性試験は重要です。

 促進耐候性試験機に試験板をセットし、光と噴霧水を当てて試験しますが、光源はJIS K 5400では「カーボンアークとキセノンランプ」がありましたが、JIS K 5600では、「キセノンランプ法」のみとしています。

 規定時間試験後、試験板を取り出し、光沢変化、白亜化(チョーキング)や変退色などの塗膜の変化を観察して、塗膜の耐候性を評価します。

 試験時間で異なりますが、200~250時間照射で1年間の暴露に相当するとの見方があります。

 

2.屋外暴露耐候性:JIS K 5600-7-6

   耐候性:JIS K 5400-9-9

 試験板を角度45度に傾斜した暴露架台に設置し、一定年数暴露します。

 暴露課題の試験板設置面は、赤道に向くようにします。

 規定年数暴露後、塗膜の光沢変化や白亜化、色の変退色などを観察して、塗膜の耐候性を評価します。

 

3.耐湿潤性冷熱繰返し性:JIS K 5600-7-4

                                JIS K 5400-9-4

 本試験は塗膜が湿潤状態や浸漬状態に近い状態を受けた後に、温度変化を受けたら塗膜がどのように変化するかを調べる試験です。

 試験条件は、

   湿潤(50±3℃×18時間) → 低温(-20±2℃×3時間) → 標準状態(23±2℃) → 湿潤(23±2℃×18時間) 

     → 低温(-20℃±2℃×3時間) → 高温(50±3℃×3時間)を1サイクルとして、規定がなければ10サイクル試験を行います。

 試験後、さび、割れ、はがれ、白化などの塗膜変化を調べます。

2-3 塗膜の化学性能に関する試験

2-3 塗膜の化学性能に関する試験

 塗膜の化学性能を調べることは、塗膜が種々の化学薬品とか、素地の化学的性能にいかに耐えるかを知るために必要な試験で、主に浸漬方法による試験が行割れます。

 

1.耐液体法(一般的方法):JIS K 5600-6-1

              (水浸漬法):JIS K 5600-6-2

 耐水性:JIS K 5400-8-19

 耐アルカリ性:JIS K 5400-8-21

 耐酸性:JIS K 5400-8-22

 塗膜が、要求される薬品などに耐える性能があるかどうかを試験する方法です。

 例えば、薬品工場に塗装する塗料なら、酸やアルカリに耐える塗膜性能を備えているかを検証する必要があります。

 また、モルタル・コンクリート・スレート板などのアルカリ素材に塗装する塗料なら、耐アルカリ性が要求されます。

 このように、求められる試験液に試験塗膜板を規定時間浸漬して、塗膜にふくれや剥離などの異常が発生しないかどうかを評価する試験です。

 耐液体法(一般的方法)には3種類の試験方法があります。

  a)浸漬法

  規定された試験液に試験板を浸漬して、塗膜の変化を確認する試験方法。

  b) 吸着媒体法

  試験板の上に試験液を含んだ円盤(一般的には圧縮した板紙)を置き、その上を時計皿で被う。

  規定時間後、円盤を取り除き、塗膜の変化を確認する方法。

  c)点滴法

  試験板の上に、規定液の液滴(約0.1ml)を必要分落し、規定時間放置後、塗膜の変化を確認する試験方法。

 

2.耐加熱性:JIS K 5600-6-3

 塗膜の加熱安定性:JIS K 5400-8-13

 塗膜が高温にさらされると、塗膜を形成している樹脂が熱の影響を受けて変化します。

 特に規定がなければ、125±2℃に設定された空気循環のあるオーブンに試験板を入れます。

 規定時間後、試験板をオーブンから取り出し、23±2℃まで冷却してから、塗膜の変化や損傷を確認します。

2-2. 塗膜の物理性能に関する試験

2-2. 塗膜の物理性能に関する試験

1.塗膜の概観:JIS K 5400-7-1

 乾燥し、仕上がった塗膜が正常な外観をしているかどうかを肉眼で調べるもので、塗装現場で容易にチェックできる試験で、本格工事に着手する前に、使用塗料の仕上がりを確認します。

 試験は、作業性試験や乾燥時間試験などを行った試験板を規定時間乾燥させてから塗膜表面を観察し、つや・むら・しわ・へこみ・はじき・つぶなどが無いかを検査する試験です。

 

2.鏡面光沢度:JIS K 5600-4-7

                  JIS K 5400-7-6

 一般につやと表現していますが、塗膜のつや(光沢)がどの程度あるのかを光沢度計を用いて測定します。

 鏡面光沢度は20°、60°、および80°で、基準値100の値が決められているが、通常は60°鏡面反射率で測定しています。

 測定値が100に近いほどつやが高くなります。

 

3.硬さ試験:JIS K 5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)

               JIS K 5400-8-4 鉛筆引っかき値

               JIS K 5600-5-5 引っかき硬度(荷重針法)

 塗膜の硬さを調べる試験で、それぞれの塗膜を規定時間乾燥させてから、硬度を試験します。

 試験方法には、「鉛筆法と荷重針法」があります。

 鉛筆法は、硬さ6B(柔らかい)~6H(硬い)までの14段階の鉛筆を用いて塗膜の硬さを測定します。

 測定装置で試験した時に、塗膜に傷をつけた鉛筆硬度が硬さになります。

 結果の表示は「2BとかH、4H」となります。

 荷重針法は、引っかき試験装置に試験板をセットし、針に一定荷重をかけて引っかきます。このとき、塗膜が規定された範囲まで貫通しているかを、適切な倍率で観察します。

 この倍率が結果になります。

 

4.耐屈曲性(円筒形マンドレル法):JIS K 5600-5-1

                                          JIS K 5400-8-1

 塗膜の柔軟性を表す性質に可とう性があります。金属などに塗装して折り曲げたときに、塗膜に可とう性がないとひび割れたり、はなはだしいときは剥離してしまいます。

 可とう性を調べる試験が耐屈曲性試験です。

 この試験は試験機に測定試験板を、塗膜を上にして置き180度折り曲げ、塗膜の割れ目や剥離を調べます。

 折り曲げる程度は、直径2~32mmまでのマンドレル(円筒)が12種類あり、このマンドレルの直径が小さいほど、その塗膜の耐屈曲性が優れています。

 

5.付着性:JIS K 5600-5-6(クロスカット法)

             JIS K 5400-8-5

 塗膜が被塗物に付着している強さの度合いを付着性といいます。付着性には素地や下地に対してと、下塗り、中塗り、上塗りの各塗膜層間の場合もあります。

 付着性は、塗膜の物理性能の中で最も重要な性能で、単に塗料の性質ばかりではなく、素地や下地の表面状態、塗膜条件、乾燥条件、塗装時の気象条件などの影響を受けます。

 クロスカット法(基盤目法)は、規定にある等間隔スペーサーを用いて、塗膜にカッターで素地まで切り込みを入れ、規定されたテープを強く貼り付け、手前60°で引き剥がし、塗膜のはがれ程度を試験結果の分類表で判定します。

 厚膜形の外装材などは、塗膜に鉄製のアタッチメントをエポキシ樹脂接着剤で接着し、規定時間乾燥後、引張試験機で測定する方法もあります。

 

6.耐おもり落下性:JIS K 5600-5-3

   耐衝撃性:JIS K 5400-8-3

 塗膜が物体の衝撃を受けて、変形による塗膜の割れ・はがれを生じない性質を耐おもり落下性(耐衝撃性)といいます。

 耐おもり落下性を調べる試験方法として代表的なものに、落球式とデュポン式があります。

 落球式は、規定された高さからおもり(鋼球)を落下させ、おもり先端の衝撃による塗膜の割れ、はがれが認められるかどうかを観察します。

 デュポン式は、デュポン式衝撃変形試験機を用いて、衝撃による変形で割れ、はがれが出来ないと判定します。

 

7.耐摩耗試験:JIS K 5600-5-8 , 5-9 , 5-10

   耐摩耗性:JIS K 5400-8-9

 耐摩耗性は、塗膜がこすられたり削られたりすることに耐える能力を測定する試験です。

 耐摩耗性試験には、研磨紙法(JIS K 5600-5-8)、摩耗輪法(JIS K 5600-5-9)、試験片往復法(JIS K 5600-5-10)の3種類があります。

 研磨紙法はテーバー形摩耗試験機を用い、回転軸に取り付けた規定の研磨紙によって乾燥塗膜を摩耗させて、その耐摩耗性を測定します。床用塗料などに用いられます。

 摩耗輪法もテーバー形摩耗試験機を用いますが、研磨紙ではなく摩耗輪によって乾燥塗膜を摩耗させて、その耐摩耗性を測定します。

 試験片往復法はスガ式摩耗試験機を用いて、静止状態にある回転輪に取り付けた研磨紙に対して、乾燥塗膜を摩耗させることによって、耐摩耗性を測定します。

 いずれも、結果は摩耗減量で表します。

 

8.耐洗浄性:JIS K 5600-5-11

               JIS K 5400-8-11

 耐摩耗試験は乾燥状態で試験するが、耐洗浄性は湿潤状態での耐摩耗性を測定します。

 湿潤摩耗試験装置を用い、規定された洗浄液で湿潤した塗膜を、不織プラスチック材料製の研磨パッドで規定回数往復させ、塗膜損失量を計算します。

 さらに、汚れ除去性を試験する洗浄性試験があります。この試験は、規定された汚染剤を塗付した試験板を湿潤摩耗試験し、汚染性が除去されて、かつ、湿潤摩耗性があるかどうかを調べます。

2-1. 塗膜の乾燥に関する試験

2-1. 塗膜の乾燥に関する試験

1.乾燥時間:JIS K 5600-3-2 , 3-3

                JIS K 5400-6-5

 塗料が塗り付けられた後、塗膜形成助要素(溶剤など)が揮発したり、化学反応を生じたりして流動性を失い、固体状の塗膜を形成するまでの時間を乾燥時間といいます。

 塗膜の乾燥までにはその程度および種別によって、指触乾燥、半硬化乾燥、硬化乾燥と分類されています。

 なお、新JISでは、JIS K 5600-3-2に表面乾燥性(バロチニ法)とJIS K 5600-3-3に硬化乾燥性が新設されています。(注バロチニ法とは小さな透明ガラス球のこと)

 

2.製品と被塗装面との適合性:JIS K 5600-3-4

  上塗り適合性、塗り重ね適合性:JIS K 5400-6-7 , 6-8

 素地(製品が使われる場合の素地の代表的なもの)または、塗装された素地に上塗りした場合や下塗り、中塗り、上塗りと塗り重ねた場合、塗膜に異常が起きないかを試験します。

 このときの異常とは、はじきや過度のだれ、ピンホール、リフティング(縮み)などをいいます。

 にじみは、着色した塗膜に白塗料を塗装した場合、着色した塗装の色が上塗りの白塗膜ににじみを生じているかを確認します。

 

3.不粘着乾燥性:JIS K 5600-3-6

   不粘着性:JIS K 5400-8-12

 乾燥した塗膜が、温度の高い条件や湿度の高い状態で、粘着を示す傾向のでる場合があり、この傾向を調べる試験です。

 乾燥塗膜の上に規定されたポリアミド単繊維で織られたガーゼを置き、その中央にゴム円盤を設置し、規定された時間、規定された負荷をかけます。その後、ガーゼを除去し塗膜表面にガーゼの布目が残らないかを判定します。

1-2 塗料の作業性に関する試験

1-2 塗料の作業性に関する試験

 塗料を塗装する場合に要求される性質として、いかに美しく、均一に塗装できるかを知るために塗装作業者の技能が第1ですが、塗料自体各々の塗装方法に適した塗料であるかを知る方法として作業性があります。

 

1.塗装作業性:JIS K 5600-1-1

                  JIS K 5400-6-1

 この試験は、各塗料に定められている塗装方法、例えば、はけ塗り、吹付け塗りなどの方法によって、規定された条件で定められて試験版に塗装して、作業に支障があるかどうかを調べる試験です。

 この場合、1回塗りと2回塗りについても塗装し、それぞれにおける作業性を調べます。