1.調色とは

 調色は、一般には「色合わせ」と呼ばれ、指定された色彩の塗料を作る作業である。まず、少量で予備調色し、次に指定量となるように増量する。作業手順は以下に示す①~③に要約でき、作業が進められる。

 ①塗料の原色のうちから、使用するものを選択する。

 ②この原色の少量を適宜調合して、指定された色彩の塗料を作り出す。

 ③要求された量になるように、原色の割合を変えることなく増量する。

 調色をするためには、見本色の確認をする(見本色は、一般に、塗装された現物や塗り板、色見本帳やマンセル記号で提示される)ことと、指定された塗料から使用できると思われる原色の塗料を選択することが重要な作業である。調色作業は、趣味や嗜好で絵をかくのとは異なり、あくまでも生産行為であるから、ただ単に色合いのみを合わせればよいのではなく、むり、むだ、むらのない作業が要求される。

2.原色の選定

(1)原色とは

 光学的にいう光の3原色とは赤、緑、青である。我々は物体で吸収されずに残って反射される光の色を物体色として認識する。それゆえ、色材の3原色とは光の3原色の補色である青緑(シアン)、赤紫(マゼンダ)、黄(イエロー)となる。これらをいろいろな割合で混合することで様々な色を作ることができる。

 顔料粒子を含有するエナメル塗膜に光が入射すると、光の経路は複雑になる。塗膜表面で反射する光もあれば、素地からの反射光もある。顔料表面に達した入射光のすべてが反射されるわけではない。顔料に吸収されたり、透過する光もある。反射・吸収・透過の割合が、顔料の光学的性質を支配する。顔料や染料が光の特定波長成分を吸収し、そのあと反射されて出てきた光の色がその物質の色となる。

 色材の3原色(青緑、赤紫、黄)のみでは塗料の調色に限界があるので、塗料の原色はもう少し数が多くなる。

 最も一般的に使われる原色は、無彩色としての白、黒と、有彩色としての赤、黄、赤さび、青、緑の7色である。

 調色作業の第一歩は、調色しようとする見本の色が、手持ちの原色の組み合わせで出だせるかどうかを確かめることである。慣れてくると、板の上で必要と思われる各原色を指先でこすり合わせて、だいたいの見当を付けることができる。一般に、彩度がよほど高くない限り、通常の色は白、黒、黄、赤さび、青、緑の6原色で、かなりのところまで調色できる。

 クリヤ(透明)塗膜には少し黄色っぽいものもあるように、同一顔料の原色からなる乾燥塗膜でもその色は、合成樹脂調合ペイントとアクリルラッカーでは異なる。また、同じ種類であっても、塗料メーカーによって原色の色が異なるのは、顔料の種類や分散粒子の大きさが異なるためである。

 

(2)原色の色数

 原色の数は、塗料の品種によって異なる。例えば、自動車補修用塗料は原色の数が著しく多いが、建築用のエマルション塗料はたんさい色が多いので、原色の数は少ない。

 調色は、できるだけ少ない数の原色を用いるほうが調色しやすく、色も濁らない。例えば、彩度の高い緑を調色するには、シアニングリーンを基調色として用いる。

 

(3)色あし

 原色を白で10~20倍に薄めた色合いをいう。濃彩色では問題ないが、淡彩色では同じ色系統の原色でも顔料の種類によって色がずれてくるので、原色の色あしを確かめることが必要である。また、メタリックカラーに使用する原色の色あしを確認する場合には、白の代わりにシルバーメタリックを用いることがある。

 

(4)色ののぼり

 調色した塗料を塗装すると、乾燥するに従って色味が濃くなってくる。例えば、エマルション塗料の調色においては、ぬれ色(乾燥前)と乾き色(乾燥後)とが異なる。この現象を色の「のぼり」という。エマルション塗料は、塗料状態ではポリマー粒子が分散しているから白く見え、乾燥すると粒子が融着して透明になる。

 このように、透明塗膜(ビヒクルポリマー)自体の色味が乾燥前後で変化する塗料があるので、色合わせは乾燥塗膜が基本になる。

 

(5)保色性

 初めの色のまま長い期間色が変わらないものを「保色性がよい」という。白、黒、黄、赤さび、青、緑の原色は濃彩でも淡彩でも保色性は良いので、原則的にこれを使うべきである。ただし、彩度の高い黄やあかはこの原色では得られないので、それぞれ特殊な原色を使わなければならない。この場合、原色としての保色性はよいが、少量混ぜると極端に悪くなるものがあるので注意を要する。

3.色合わせに影響を及ぼす要因

(1)照明条件

 白い紙を太陽光の下で見れば白い。しかし赤い照明の前では赤く見えるし、照明が青いときは青く見える。太陽光の下では赤い紙は、青緑色の波長成分を吸収するので赤く見え、青い光の下では黒く見える。このように我々が感じる色は、その物体に当たる光によって変化する。したがって色を見るときには、どんな光の下で見るかを明確にしておかなければならない。

 色を見るときの光源としては、JIS Z 8723:2000「表面色の視感比較方法」によって次の三つが定められている。

①自然昼光

②共通光源D65

③標準光源A

 常用光源D65は、昼光で照明される物体を人工照明下で比較する場合に用いるもので、現在はこれを用いることが多い。標準光源Aは、白熱電球で照明される物体の色を比較する場合に用いる。これらの光源がない場合は、その製品の使用される照明と同様の条件下で色合わせを行えばよい。例えば、外壁用塗料の調色は屋外で判定し、屋内用塗料の調色は、その部屋と同種の照明下で判定するとよい。

 

(2)つや(光沢感)

 調色作業では、つやの調整も大切な点である。つやあり塗料とつやなし塗料を混ぜると希望するつやが得られるが、塗装方法と膜厚によって、つやは微妙に変わるので、注意を要する。

 光線が塗膜表面に達すると、入射光の一部分は反射し、残りの光は塗膜内部に入る。つやあり塗膜表面はクリヤ層で平らであるため、表面での反射光は鏡面反射してつやを出す。一方、つやなし塗膜は、塗膜表面に顔料が突き出ているためでこぼこになる。この表面に入射した光は、乱反射して塗膜はつやなしとなる。表面反射光には色がないため、塗膜の色は白っぽく淡色に見える。したがって、つやに差のある2色を比色する場合には、表面を水で濡らして同じ表面状態にしてみるか、無色透明の鉱物油でぬらしてみるとよい。

 

(3)ぬれ色と乾き色

調色作業中の容器の中の塗料の色と、これを塗り広げた直後の色と、乾燥後の塗膜の色では大きく異なるのが普通である。したがって、調色作業中は何度か指先でこすって色を調べ、かなり近づいた時点で所定の作成方法により、乾燥塗膜の色を確かめなければならない。特に、つやなし塗料では注意を要する。

 

(4)塗装方法

 塗装方法が異なると、同じ塗料でも同じ色に仕上がらない。例えば、はけ塗りと吹付け塗りでは乾燥塗膜の色が異なり、特に静電塗装では、さらに色の差が大きくなる。これは、溶剤と顔料の電気特性が影響するからである。自動車の塗装などにみられるアルミニウム粉入りのメタリック塗料では、この傾向がさらに著しくなるので、塗料の薄め方、塗装方法、乾燥方法などを標準化しておかなければならない。

 

(5)塗装膜厚と下地

 隠ぺい力の小さい色の場合、通常の塗膜厚では、下地の色の影響を受けて所期の色が得られない。このような場合の塗り板は、見本色と同じ塗装工程によって作られなければならない。特に透明性のある有機系の黄色及び赤顔料では、下地を完全に隠ぺいする塗膜厚で比色するか、下地を同一条件にして膜厚を取り決めたうえで、色を比較する必要がる。

 

(6)乾燥方法

 塗装直後の塗膜の色は、それに続く乾燥方法によって異なった色に仕上がる。まず第一に、自然乾燥と加熱乾燥の差がある。次に前者では乾燥時間による差が、また、後者では温度と時間による差がある。このため、いろいろな簡便法はあるにしても、最終的な色を確認するには、その塗料の種類に応じて決められた標準的な乾燥方法によらなければならない。

4.色合わせの方法

(1)色の見方

 色を視感で比較する場合には、明度、色相、彩度の順に判定する。人の視感度は物体の明るい、暗いの差が最も分かりやすいので、明度の差を真っ先に調べる。次に色相(黄味、赤味、青味など)を調べ、最後に彩度(鮮明さ、濁りの有無)を調べて判定する。

 色の比較観察では、長く見つめていると色差が判断しにくくなるので、数秒間で判定しなくてはならない。判別能力の適性検査と訓練には、色彩弁別器を利用するとよい。ここでは、目視による判定において注意する点をまとめる。

 比色する2枚の板(標準板と試料板と呼ぶ)は同じ材質、同じ大きさ、同じ形のものが望ましい。板の材質が異なると、吸い込み具合が変わって、光沢、平坦性、仕上がり感が変わり、色も違って見える。大きさ、かたちについては、要求される制度により望ましい寸法が決められるが、大まかに40×40㎜以上あればよい。

 標準板と試料板は同一平面上に隣接するか、または多少離して並べ、原則として無彩色の開口マスクをその上に置いて観察する。マスクを使用しない場合は、背景が判定しようとする色の補色関係であると識別力が低下するので、背景の色としては中性色がよい。また、人の両目は片目ごとに明るさと色の識別力に差があるので、左右交互に置き換えながら見るとよい。

 

(2)淡彩色

 淡彩色の調色は、白が基調色になる。また、原色には着色力の大きいものと小さいものがあり、黒と青は特に大きく、少量加えても大きく色を変化させるので注意を要する。入れすぎて反対方向に色がずれると修正が困難になり、修正のために作成する色の塗料の量が著しく増えるので、このようなときは初めからやり直したほうがよい。これを避けるために、黒や青は、あらかじめ白を10%ほど加えた調色用原色を用意しておく。

 

(3)濃彩色

 濃彩色の調色は、見本色より濃い類似色を基調色として、それに白及びほかの原色を加えていく。この場合、所要量の多いと思われる原色から少ないものへ、濃い原色から淡い原色へ、着色力の小さい原色から大きい原色へ、という順序で加えていく。

 

(4)メタリック

 メタリック塗料は、半透明のエナメルにアルミニウム粉を混合したもので、塗膜下層のアルミニウム粉の浮き沈み、並び方などにより、エナメル層を通して金属独特に輝きを発する。

 したがって、アルミニウム粉の粗さ(細かいと黒っぽくなる)、原色の透明性(透明なほどメタリック感がある)に気を付け、できるだけ使う原色を少なくする。多く使うと色が濁る。

4.色合わせの方法

(1)色の見方

 色を視感で比較する場合には、明度、色相、彩度の順に判定する。人の視感度は物体の明るい、暗いの差が最も分かりやすいので、明度の差を真っ先に調べる。次に色相(黄味、赤味、青味など)を調べ、最後に彩度(鮮明さ、濁りの有無)を調べて判定する。

 色の比較観察では、長く見つめていると色差が判断しにくくなるので、数秒間で判定しなくてはならない。判別能力の適性検査と訓練には、色彩弁別器を利用するとよい。ここでは、目視による判定において注意する点をまとめる。

 比色する2枚の板(標準板と試料板と呼ぶ)は同じ材質、同じ大きさ、同じ形のものが望ましい。板の材質が異なると、吸い込み具合が変わって、光沢、平坦性、仕上がり感が変わり、色も違って見える。大きさ、かたちについては、要求される制度により望ましい寸法が決められるが、大まかに40×40㎜以上あればよい。

 標準板と試料板は同一平面上に隣接するか、または多少離して並べ、原則として無彩色の開口マスクをその上に置いて観察する。マスクを使用しない場合は、背景が判定しようとする色の補色関係であると識別力が低下するので、背景の色としては中性色がよい。また、人の両目は片目ごとに明るさと色の識別力に差があるので、左右交互に置き換えながら見るとよい。

 

(2)淡彩色

 淡彩色の調色は、白が基調色になる。また、原色には着色力の大きいものと小さいものがあり、黒と青は特に大きく、少量加えても大きく色を変化させるので注意を要する。入れすぎて反対方向に色がずれると修正が困難になり、修正のために作成する色の塗料の量が著しく増えるので、このようなときは初めからやり直したほうがよい。これを避けるために、黒や青は、あらかじめ白を10%ほど加えた調色用原色を用意しておく。

 

(3)濃彩色

 濃彩色の調色は、見本色より濃い類似色を基調色として、それに白及びほかの原色を加えていく。この場合、所要量の多いと思われる原色から少ないものへ、濃い原色から淡い原色へ、着色力の小さい原色から大きい原色へ、という順序で加えていく。

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