塗料は、長期間貯蔵されていると、顔料が缶底に沈降していることがある。使用する際には、かくはん棒か動力かくはん機によって十分かくはんし、均一状態にしてから使用する。

 また、主剤・硬化剤・触媒などを混合して用いる多液形塗料では、混合不十分のときに乾燥不良や塗膜状態不良を生じるので、混合・かくはんを十分に行うようにする。

(1)塗料の希釈

 塗料には、そのまま使えるような塗装粘度に調整されているものもある。しかし多くの場合、原液の粘度が高いので、塗装条件に最適の粘度に調整して使う。この時使用するシンナーは、単に塗料の粘度を下げればよいというわけではなく、その塗料の種類と塗装条件によく適合したものでなければならない。原則としては、その塗料に対してメーカーの指定するシンナーを使うことである。

a 塗料の種類

 油性系・合成樹脂系・ラッカー系塗料のシンナーに大別できる。特に2液型及び湿気硬化形ポリウレタン樹脂塗料のシンナーには、アルコールを含んではならない。

b 下塗りの種類

 耐溶剤性の弱い下塗りに塗り重ねる塗料には、溶解力の小さいシンナーを用いる。

c 塗装環境(温度・湿度)

 夏形(蒸発の遅いもの)、冬形(早いもの)シンナー及びリターダーシンナーを使い分ける。

d 塗装方法

 静電塗装用シンナーは、塗料の電気抵抗値を調節する。

e 塗装欠陥の防止

 たれ(たるみ)、ピンホール、ゆず肌、白化などは、シンナーの蒸発速度の遅速で修正できることが多い。

 

(2)2液形塗料の計量混合(配合)

 日常よく使用するエポキシ樹脂からなる接着剤は、A液、B液の2液タイプで販売されており、使用直前に同量ずつ混合して使用する。混合したまま放っておくと少し熱くなって、気が付くともはや流動しなくなっている。この状態になると、シンナーを加えて塗布できるようにしようとしても、既に反応が進み固化(皮膜ができている)しているため、塗布できない。皮膜になったということは、A、B液が化学反応を起こして巨大な分子量を有する重合物、ポリマーになったことを表している。

 この皮膜は橋かけ塗膜であり、熱硬化性塗膜である。常温で橋かけ塗膜になる塗料は、エポキシ樹脂系接着剤と同様に、反応する成分を別々に貯蔵している。ただし120℃以上で焼き付けるアミノアルキドやメラミン/アクリル樹脂塗料などは、反応成分が常温では反応しないので、一つの容器中に保存できる。

 まず、A、B液の混合比を守らないとどのような塗膜になるかを理解しよう。

仮定①―分子量はA分子のほうがB分子に比べて大きい。

仮定②―A、B分子とも反応する手は4本ずつもっている。

 A、B分子の反応する手の数が等しくなるように混合すると、橋かけ塗膜になる。もし、A、Bのどちらかが不足すると、強度不足となり、この塗膜の上に塗料が塗り重ねられると、その溶剤でふやけてしまう。いわゆるしわが生じるので、不良な塗膜をすべてはく離せざるを得なくなる。

 したがって、よい塗装をするためには、その塗料に決められた配合比(混合比)を守らなければならない。塗料の混合比はほとんど重量比である。

 次に、計量混合の必要なパテ、塗料にはどのようなものがあるかをまとめる。

 常温で反応する化合物(塗料分野では樹脂、硬化剤や触媒)である不飽和ポリエステル樹脂パテがある。

 缶に入った主剤と硬化剤で1セットになっている。主剤の60%以上は乾燥しても体積が減らない顔料や充てん材(固体粒子)で、ジャングルジムのパイプ役をするものが不飽和ポリエステル樹脂である。

 金具の役目は主剤中に一緒に入っているスチレンモノマーが受け持つ。主剤を加熱すると、パイプと金具が仕事を開始し、ジャングルジムをつくるが、常温だとスチレンモノマーが不飽和ポリエステル樹脂とよく混ざり合っているだけで、仕事を開始しない。

 チューブの硬化剤の主成分は過酸化物であり、加熱するのと同じくらいの反応エネルギーをもっている。主剤中に入れておけないので、チューブに入れて別にしてある。この硬化剤が微量あれば、十分にジャングルジムをつくる(重合反応を生じさせる)起爆剤になる。いったん仕事を開始すると、パイプと金具がなくなるまで一気にやり終える、パイプと金具が一気に反応してジャングルジムを作り上げる反応を、化学用語ではラジカル重合反応と呼び、硬化剤をラジカル重合開始剤と呼んでいる。

 不飽和ポリエステルパテの反応成分は、不飽和ポリエステル・スチレンモノマー・パラフィンワックス・充てん剤からなり、主剤中にすでにパイプと金具が必要数だけ入っている。チューブに入っている硬化剤は反応が始まるきっかけを与えるものであり、添加する量によって反応速度が変わる。通常、チューブから押し出された硬化剤の長さで配合量を判断する。一方、不飽和ポリエステル樹脂パテと同様な成分からなるサーフェーサーは、主剤と硬化剤をはかりで計量して混合する必要がある。目分量で加え、硬化剤を入れ過ぎると、短時間に発熱して白煙を上げて爆発する危険がある。

2液形ポリウレタン及び2液型エポキシ樹脂塗料では、しっかりとしたジャングルジムができるように主剤と硬化剤を計量混合しなければならない。

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