はく離の方法には、手作業や機械を用いる物理的除去、はく離材や薬品による化学的除去、加熱焼却による除去の3種がある。物理的な除去方法には、ケレンと同様の器工具が使用される。
はく離の方法を決定するには、はく離する塗料・素地の種類・能率・作業条件などを考慮しなければならない。
(1)スクレーパーによる手作業
はく離の方法としては不完全で能率も悪いが、手軽なことと、粉じんや騒音公害もないので、建築、橋りょう、鉄塔などの塗替えで多く用いられる。
(2)動力工具によるはく離
鉄、コンクリート、モルタル面の旧塗膜のはく離に用いると能率的である。ただ、この種のはく離は、作業者が未熟だと下地を損傷する欠点がある。また粉じんや騒音公害もあるので、市街地の作業では対策が必要である。足場の安全性が不備な場合は使用してはならない。
動力工具にはディスクサンダー、エアハンマー、カップワイヤホイル、ジェットたがね、スケーリングマシンなどがある。
ディスクサンダーでは旧塗膜の種類のよって、それぞれ専用のディスクを使う場合が多い。
(3)ブラストによるはく離
高圧で研削材を吹き付けてはく離する方法で、鉄面では塗膜のはく離と除せいが同時に行える。除せい度の点では最も優れた方法である。
研削材には、けい砂、スチールグリット、酸化アルミニウム、ガラスビーズ、くるみがら、その他のと粒があり、用途に応じて使用される。
装置も大形のものから小形のものまで各種あり、用途に応じて使用されるが、大形のものは粉じん、騒音公害があるので、市街地の作業にはあまり用いられない。なお、安全に使用するため、防じんめがね、防じんマスク、防じん面の着用を励行する。
(4)はく離材によるはく離
建築現場における内・外装の旧塗膜のはく離作業で、最も多く用いられる方法である。サンダー作用のような粉じん、騒音公害の発生はなく、使用目的に応じて各種のはく離材が市販されている。
一般に、はく離材には揮発抑制剤として、パラフィンワックスが混入されているので、必ず水洗いする必要がある。パラフィンは、残ると付着や乾燥不良の障害となるため、水洗によって容易に除去されるように改良されているが、過信してはならない。また、水洗を必要としないはく離材も開発されている。
はく離材は使用された塗料・下地の種類などを考慮して選択する。
また、剥離剤は、皮膚に付着するとやけどを起こしたり、中には刺激臭の強いものもあり麻酔性もあるので、毒性も無視できない。そのため屋内での使用には換気をよくすることが必要で、使用方法及び使用上の注意を守って、作業を行わなければならない。
(5)トーチランプによる焼きむき
引火その他の危険がないと判断できる場合は木材面にも利用できるが、一般には、鉄面に何度も塗り替えて厚くなった旧塗膜に応用する方法である。
トーチランプの火炎をやや斜めから旧塗膜に当て、塗膜が軟化したところをスクレーパーなどではがす。ただし、薄い鉄板はひずみを生じて変形するので、使用を避けなければならない。
はく離したあとは、研磨紙(布)で研磨し、素地ごしらえをする。