(1)合成樹脂調合ペイント塗り
鉄、亜鉛めっき面の一般部、構造用鉄部、建具、設備類などの防せい、美装性に広く用いられる。
[長所]
①耐候性がよい。
②油性ペイントより乾燥が早い。
③被塗物の適用範囲や広い。
④作業性がよい。
⑤色調変化が少なく、色彩効果も高い。
⑥光沢の調節が容易である。
⑦価格も手ごろである。
[短所]
①耐アルカリ性に劣る。
②耐水性、耐溶剤性が小さい。
③層間はく離する場合がある。
(2)合成樹脂調合ペイント塗りの要点
鋼構造物の塗装では、さび止めの1回目は工場で塗装され(1次ショッププライマー塗りという)、部材は現場に搬入、架設される。組立てが完了するまで長期間下塗りのままで放置されると、塗膜の硬化が進み、塗り重ねによる塗膜/塗膜間の層間付着性が悪くなる。塗膜の表面には汚れや塩分などが付着して、さらにははく離しやすい状態となるほか、組立て中、下塗りにきずが入ることも多い。したがって、そのままの状態で次の工程に進むと欠陥を引き起こすことになるので、現場で下塗り2回目を行い、塗膜の改善を行う。
下塗りには、1種と2種のさび止めペイントがある。1種は乾性油をビヒクルとする油性さび止めペイントで、乾燥は遅いが素地とのなじみがよい。また、さび層への浸透性もよいので、素地調整が十分でない場合でも、2種のさび止めペイント(長油性アルキド樹脂をビヒクルとする)に比べてさび止め効果は高く、付着性もよい。
(3)フタル酸樹脂エナメル塗り
フタル酸樹脂エナメル塗りは、鋼製、亜鉛メッキ製のドア、サッシ、シャッター、設備機械などの塗装に用いられる。
[特徴]
合成樹脂調合ペイント塗りに比べ、平滑性、美装性がよく、硬度も高く耐摩耗性もよいことから、建設機械類の塗装に用いられる。合成樹脂調合ペイントに比べ、やや速乾性なのではけ塗りの作業性は悪い。また、塗膜はやや肉薄なので、高級塗装ではパテかい、パテ付け、オイルサーフェーサー塗りの工程を追加して、平滑性や質感の改善を行っている。
(4)2液型エポキシ樹脂エナメル塗り
2液型エポキシ樹脂エナメル塗りは、密着性、耐水性、耐薬品性に優れたとそうである。ジンクリッチペイントと組み合わせて、特に耐酸性、耐アルカリ性、耐水性を必要とする厳しい腐食性環境の塗装に用いられる。
この塗装は特に温度条件が厳しく、一般に10℃以下では塗装してはいけない。現在では10℃以上で使用する常温形と、5~20℃で使用できる低温形がある。エポキシ樹脂の塗装は、長期間放置されると表面の硬化が進んで上塗りとの付着性が低下するため、塗装間隔の規定時間を厳守する必要がある。硬化した塗膜には研磨紙ずりを行って、付着力の回復を図るようにする。
現在、現場で多用されるエポキシ系さび止め塗料には、変性エポキシ樹脂下塗りがある。エポキシ樹脂塗料を変性し、付着性と適用性を広げたエポキシエステル塗料である。十分に乾燥した合成樹脂調合ペイント(SOP)塗膜にエポキシエステル塗料を塗り重ねると、上塗りの適用範囲が広がり、2液型エポキシはもちろんのこと、2液ポリウレタンやふっ素樹脂などの高性能塗料を用いて塗装仕上げをすることが可能になる。
(5)2液形ポリウレタンエナメル塗り
2液形ポリウレタンエナメル塗りは、耐候性、耐水性、耐薬品性に優れているため、長期の耐久性、美装性が必要とされる塗装に用いられる。エポキシ系と異なり低温時の乾燥性がよく、耐熱性もよい。塗重ねでの注意はエポキシ系と同様である。しかし、付着力回復のために行う塗膜の研磨紙ずりは、慎重に行わなければならない。研磨によって塗膜が損なわれ、防せいの働きを弱める心配がある。不必要な研磨を行ってはならない。
(6)弱溶剤系2液型ポリウレタンエナメル塗り
弱溶剤系2液型ポリウレタンエナメル塗りは、2液型ポリウレタンエナメル塗り同様、耐候性に優れ、長期耐久性、美装性が必要とされる塗装に用いられる。従来の溶剤系塗料の塗装と異なり、環境負荷低減のためにトルエンやキシレンなどの溶剤を含まない弱溶剤(ミネラルスピリット)を使用した塗料及び塗装設計である。水性塗料同様、今後需要が高まる塗装仕様である。
(7)アクリルシリコン樹脂エナメル塗り
アクリルシリコン樹脂を主成分とするこの塗料は、耐候性や強じん性に優れるシリコン樹脂と柔軟性に優れるアクリル樹脂の特徴をいかしたものである。シリコン樹脂を含む塗料は元来はっ水性に富んでいるが、雨水を利用して低汚染性を発現させるため、親水性を付与したタイプが使用されるようになった。ウレタンエナメル塗りに比べ耐候性は優れている。
(8)常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り
耐候性はポリウレタン以上なので、厳しい腐食性の環境下で塗膜の色、光沢を長期間保持する必要がある場合、ポリウレタンエナメルに代わって用いられる。塗料の価格はポリウレタン系よりも高価となるため、工事費が高くなる心配がある。塗装工程は、2液形ポリウレタンと同様であり、上塗りのみが異なる。