建築は設計図に基づいて工事を進めていくが、施工上のすべてを図面に表わすことは難しい。図面では表せない内容は文書で明確にして、設計の意図を施工者に伝えるが、これを仕様書といい、設計図とあわせて「設計図書」とされている。仕様書には、材料の種類・品質程度・施工の方法・仕上げの程度・施工上特に注意すべき事項などが記述されていて、設計図だけでは説明できないことを補足する。仕様書は、工事費や予算を組む場合も、また施工者の見積りにも、設計図とともに重要な指針となるものである。

 建築工事では構造や使用材料、さらに施工法などがそれぞれの工事によってことなるため、特別な仕様以外は、日本建築学会の建築工事標準仕様書に基づいて施工するよう慣例づけられている。工事の規模や内容によって、設計者の意図で、特殊な工法や特別な材料を用いたりする場合など、その工事独自の仕様が必要とされるときには、特記仕様書が作成されて、使用材料や施工方法などが詳しく指定される。

 しかし実際問題として、設計図によっても、また仕様書を見ても、なお不明な箇所が工事の施工中にでてくる場合もある。そのときは工事監督員の指示による。

1.仕様書の内容

 一般に工事仕様書には次のような事項を記載するのが通例である。

①工事概要

 工事場所・工事規模(構造種別・面積・階数・軒高など)・工事種目(新築・増築・改造工事など)・工事範囲・除外工事

②適用範囲・一般的注意事項

 建築主ならびに設計監理者側の承認を要する事項・疑義を生じた場合の処理・検査方法・官公庁への手続き・諸報告の要領等

③使用材料

 種類・品質・寸法・試験方法等

④施工方法

 工法・施工精度・仕様機械・技能者が持っていなければならない資格等

⑤特記事項

 特殊仕様・指定材料等

⑥工事別仕様

 これらの記載の中で、材料の品質などは指定されているが、2つ以上のメーカー名が指示され、単価の差などについて十分検討できる余地が残されている場合もある。

2.標準仕様書

 建築生産全般の品質向上にも役立つという観点から、日本建築学会では、建築工事標準仕様書(略称JASS)を定めている。常に新しい学術的成果を取り入れ、日本の現段階における工業水準をふまえ建築生産においてあるべき品質の基準を示している。一般に工事は、この標準仕様書にしたがって施工するのが常である。

 建築工事標準仕様書 JASS 18 塗装工事

JASS 23 吹付工事

 一般に工事施工技術や主要な材料の品質は、工事ごとにまちまちでなく一定の水準を保持していることが望ましいことから、同種の建物を発注する機関ではとくに各工事に共通する部分の仕様を作成している。この仕様を共通仕様書という。

3.特別仕様書

 標準仕様書・共通仕様書で示されていない事項や仕様を変更する箇所、あるいは特殊な工法を用いる箇所・この工事にしか適用されない事項などの仕様を特に示したものを特別仕様書という。

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