建築物の構造耐力上主要な部分とは、基礎・柱・壁・横架材(はり・けたその他これらに類するもの)・小屋組・斜材(筋かい・方づえ・火打材その他これらに類するもの)・床材・屋根材で建築物の自重もしくは積載荷重、積雪、風圧、土圧もしくは水圧又は地震その他の震動もしくは衝撃を支えるものをいう。

 建築物を完成させるには以上のほか、内外仕上げ、屋根ふき、天井、階段、開口部、造作などがある。

1.基礎

 基礎は、建物の最下部の地盤に接する部分で、建物の全重量を受け、また外力を支え、これを地盤に伝えるとともに建物が沈下したり、傾いたりしないための構造部分である。地業というのは基礎から下で地盤を強化するために設けた部分である。一般に基礎ということばで使われているのは基礎と地業の総称である場合が多い。

 基礎は、建物の荷重や外力を支えるためのものであるから、十分堅固に設けなければならない。また地盤は建物の荷重を支えるだけの耐力が必要である。

 この地盤のもっている耐力を地耐力という。すなわち基礎がいかに堅固にできていても地耐力が不十分である場合は、建物は地中に沈下したり、また地耐力が均等でない場合は、建物は不動沈下して傾いたりする。地耐力が弱いところでは、地耐力が十分得られるような方法、たとえば、くいを打ち込んだり、地耐力が得られる深さまで掘り下げてその上に基礎をのせる。

(1)割ぐり地業

 割ぐり地業は、根切り底に割ぐり石をこば立てに張りつめ、目つぶし砂利を散布し突き固める方法で、一般に広く用いられる事業である。

(2)くい地業

 一般にくい打ち事業と呼ばれている。地下の深いところに支持地盤がある場合には、くい打ちを行いその上に基礎をつくる。くいは機能の方から分けると支持ぐいと摩擦ぐいがあり、また材料及び製造方法から木ぐい、コンクリートぐい(工場生産ぐい、場所うちぐい)、合成ぐい、鋼ぐいなどがある。

(3)基礎の形式

 基礎は前述のような重要な役割を持っている。したがって十分な強さが要求される。基礎は特に軽微なもののほかは、一般に鉄筋コンクリート造で、次の形式がある。

 柱一本の荷重を一個の基礎板で受ける独立基礎、布基礎、地下室がある鉄筋コンクリート造の建物などに用いるべた基礎そのほか複合基礎などがある。

2.軸組

 軸組は、土台、柱、筋かい、方づえ、けた、胴差しなど建物の骨組をいう。

(1)土台

 土台は柱の下部に配置して柱の下部を連結し、上部からの荷重を基礎に伝える役目をする。外壁下の土台を側土台といい、間仕切り壁下にあるものを間仕切り土台という。

 土台は完全に水平に据え付け、地震の場合移動しないように埋込みアンカーボルトで基礎コンクリートに締め付け、ぐう角部は火打ち材を入れて角を固める。

(2)柱

 柱は屋根又は階の床を支えるもので、木造建築の柱には、1階から2階まで通して1本の材を用いる通し柱と、1階と2階を別々にその階だけにとどめて建てるくだ(管)柱とがある。通し柱は、すみその他要所になるべく使用するのが常である。

(3)胴差し

 胴差しは木造建築物の2階以上の床のきわにあって通し柱の間のくだ柱の頂部にかけ渡す横架材である。

(4)けた(桁)

 けたは敷げた・軒げた・地回りなどと呼び、柱又は壁上にあって小屋ばりを受ける横架材で、柱頭の連けいの役をはたし、小屋組をのせて屋根の荷重を柱に伝えるために設けるものである。

(5)間柱

 主柱の間に細い材を垂直に立てたもので、土台と敷げた、2階建の場合は土台と胴差し、胴差しと敷げたとの間に設ける。間柱は壁の骨組で、上部の荷重を負担させないから大きな材の必要はない。

(6)筋かい、方づえ

 筋かいは、柱間に対角線上に取り付ける材料であって、地震や台風などの水平荷重に対抗させる大切な部材である。

 方づえは壁のない側柱の上部又は独立柱の上部で、柱とはりやけたとの交わるすみに斜めに取り付ける材料で、軸組を三角形に構成して建物を耐震・耐風的にするものである。

3.小屋組及び屋根

(1)小屋組

 建物の上部で屋根を受ける骨組を小屋という。小屋の造り方にはいろいろあるが大別して和小屋と洋小屋とがある。和小屋は古くから用いられてきた構法で、張間が6m程度以下の場合に多く用いられる。小屋ばりのかけ渡し方には2種類あって、その1つは軒げたの上にのせた場合、これを京ろ組といい、ほかの1つは、はりを柱の上にのせ、その上に軒げたをのせる方法で、これを折置組という。

 屋根が大きい場合は、和小屋より洋小屋の方が経済的である。和小屋は、小屋ばりと小屋束で屋根の荷重を支えるのであるが、洋小屋は材をもって三角形に組み立てたトラスの理論にもとづき、比較的細い断面の材を組み合わせて屋根を形成するもので、力学的にすぐれている。小屋組の組み方にはいろいろあるが、最も多く用いられるのは真づか小屋組(キングポスト)と対づか小屋組(クインポスト)とである。

(2)屋根

 屋根は外壁と同様に建物内・外を隔て、外界からの雨露、温度、湿度、音、光、風、火災及び外敵などを防ぐ役目をする。屋根をふく材料には、金属板、石綿スレート、瓦などがあり、雨や積雪その他気象条件や地方性も考慮して、最も適当な形式のものが選ばれる(使用する材料で屋根こう配は決定される)。屋根の形状には、いろいろの形がある。

4.床

 床は、建物内を水平に仕切り、人や諸道具などの重量を安全に支えること。水平力を分担することなどの役目があるとともに、直接人に接する部分であるから、衛生的で、足触りがよく、滑らない、騒音を立てないなどの必要がある。

 また1階床には、つか立て床ところばし床とがあり、2階床には、普通の床と根太床及び組床がある。

5.天井

 天井は室内上部の構造体や諸設備の配線・配管などを隠し、音、熱など外界の影響をしゃ断したり、吸収したり、内部の音、熱、光の反射吸収など部屋の環境をよくするために設ける。天井の種類には、塗り天井、板天井、張り天井などがあり、多くの材料があるが、目的により適当なものを選ぶ。

6.階段

 階段とは、建物内のある階からその上又は下の階への交通路であり、いろいろの構造のものがある。木造・鉄骨造などの階段は側げた(ささらげた)、踏板(段板)、けこみ板によって構成されている。階段として備えていなければならない条件は、昇降しやすいこと、危険を伴わないことなどである。階段のこう配は大体20~50度であって、平面的にみると、直階段、折れ階段、回り階段、らせん階段などがあり、材料別にみると、石階段、木造階段、鋼製階段、コンクリート階段などがあるが、床と同様に構造部と表面仕上げ部からなっている。建築基準用施行令には、危険防止の立場から、階段及び踊り場の幅、けあげ及び踏みづらの寸法など最低の基準が定められている。

7.外壁

 外壁は、建物の外観を決定するものであるから、美しいものでなければならない。また、防火性、耐久性、しゃ音性、耐候性にすぐれ、風圧や衝撃に耐えうる十分な強さを持っていることも必要である。

 外壁には、板張り、金属板張り、モルタル塗り、石綿板張り、タイル張り、その他がある。

8.内壁などの造作

 室内壁には、外壁の室内側壁面と、間仕切り壁面とがある。外壁の室内側壁面は結露を生じやすいので注意が必要である。内壁は外壁のように風雨にさらされないかわりに、快適な生活環境をつくるように、室内外の防音、熱の伝導、壁面の色彩や感触、防火、衛生などその室の用途によって内壁仕上げを考えなければならない。

 内壁仕上げには塗り壁、張り壁、板張り仕上げなどがある。内壁に、室の使用目的、装飾、仕上げ面のおさまりから、幅木、羽目、出入口、窓まわりなどの化粧材を取り付ける。これらを造作という。

 幅木は、壁が床に接するところに取り付ける部材で、足のあたりやすい壁面の保護と装飾を兼ねたものである。

 額なげしは、床から2mぐらいの高さに水平に取り付け、壁仕上げや色彩の変化をつけるために設ける。

 羽目は、壁面の装飾と保護を兼ねるもので、腰のあたり、つまり床上約1mぐらいまでのを腰羽目、それ以上のものを高羽目という。羽目の上端には見切り縁としてのかさ木を設ける。

 和室の壁に取り付ける造作材としては、付けかもい、畳寄せ、なげしなどがある。

 付けかもいは、かもいの高さに取り付け、畳寄せは、壁下の見切り及び畳のおさまりから用いるもので、なげしは、一般にうちのりなげしをいい、かもい上端にのせて取り付ける。

9.開口部

 開口部とは、出入口、窓をいい、形状・大きさは室の用途によって決め、開閉方法によって、片開き、両開き、引違い、片引き、引分け、回転、折りたたみなどにわけられる。

 建具には木製と金属製とがあるが、仕上げは、和風の場合は素地を出すが、和風の場合は、塗装をする。

 和風の開口部はすべて、柱、敷居、かもいによって構成される。

 大壁の開口部回りは、立てわく、上わく、下わく(さら板)のわく類と額縁・ぜん板からなる。

▲このページのトップに戻る