建築物の定義は、建築基準法で『土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱もしくは壁を有するもの、これに付属する門もしくは塀、観覧のための工作物または地下もしくは高架の工作物内の設けられる事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設をいい、建築設備を含むものとする。』という抽象的表現になっているが、要するに人間生活の容器であって、人間が生活する目的に合うように造られたものをいうのである。したがって、生活が単純であった古代においては、建築の種類も少なかったが文明の発達とともに人間生活の範囲も非常に広くなり、その要求を満たすための新しい材料の開発、工法の改良などによって建築物の種類も時代の進展とともに多種多様となってきている。

 一般の建築物は、主として骨組の組立て方によって、建築物全体の構造形式を分類している。

架構式構造 通常の木構造や鉄骨構造の軸組などのように、柱、はりなどの細長い部材を組み合わせて骨組をつくり空間を構成する方法で、部材の配置と接合方法とが強さに大きく影響する構造である。

組積式構造 石、れんが、コンクリートブロックなどのように小さい材料を組み合わせ、積み重ねて建築物を構成するもので、石造、れんが造、コンクリートブロック造などがある。

一体式構造 鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のように現場で型わくを組んで、基礎、主要構造物(壁・柱・はり・床―最下階の床をのぞく―・屋根または階段)を全部一体として作り上げる構造形式である。

1.木構造

 構築物の土台・柱・はり・小屋組などの骨組の大部分を木材で作ったもので、この構造物を木構造または木造といい、架構式構造に属している。

 構造は、基礎の上に土台をおき、柱を立てる。柱の上に、けた・はりを置き、柱間は間柱・ぬき・筋かいなどで固める。けた・はりに小屋を組み、屋根をふく。内部に天井・床・間仕切りを設ける。外部は、板・鋼板・ボードなどを張ったり、モルタル塗りなどの壁で仕上げる。

 木造は壁体の仕上げ方によって真壁造と大壁造とに分けられる。真壁造は古来わが国に伝わってきたつくりで柱が室内にあらわれるが、大壁造は柱が部屋の内部にあらわれない。

 木造建築は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などに比べて重量も軽く、加工しやすく、工期が短く、工費も一般に低廉であるが、最大の欠点は、火災には全く無力であることである。また腐りやすく耐久性に乏しい。しかし、外壁をラス・モルタル塗りとすればある程度の防火性は期待できる。中高層建築や大規模の建築には適しない。最近は木材資源も乏しく、あまり安価にできなくなってきている。木構造において、最も注意しなければならないことは、耐震・耐風の点で次のことに注意するとよい。

 ①建物の平面はなるべく単純な形とし(正方形に近い方がよい)、複雑な形をさける。

 ②基礎は、鉄筋又は無筋コンクリート造の布基礎とし、土台をアンカーボルトで基礎に緊結する。

 ③壁量を十分にとり、筋かいを有効に配置する。

 ④火打ち材や方づえ、ふれどめ等を有効に取り付ける。

 ⑤継ぎ手・仕口は、複雑な工法を避け、金物で補強する。

 ⑥2階建てでは、隅及び要所に通し柱を設け、間仕切り壁はなるべく、各階同一箇所に設ける。

 ⑦2階建てで広い室を取る場合は、壁量がとりにくいので、なるべく2階に設ける。

 ⑧屋根ふき材は軽いほうが耐震上有利である。

 ⑨壁は、真壁より大壁の方が耐風・耐震上有効にしやすい。

 最近、ツーバイフォーとして紹介されている2インチ×4インチの平角材を、軸組材の大部分に使う枠組壁工法が、省力化の立場から採用されている。

2.鉄筋コンクリート構造

 鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートのおのおのの特徴を組み合わせ、現場で、柱・はり・床はもちろん壁なども一体になるように打ち込んで作る構造をいう。

 この構造は、部材にはたらく圧縮力を圧縮に強いコンクリートにもたせ、引張力を生ずる部分には引張力に強い鉄筋にもたせるように力学的に組み合わせた構造である。

 このような2つの材料を組み合わせ、長所を発揮させると同時に互いに短所を補う。すなわち、コンクリートは鉄筋に防錆と耐火性を与え、鉄筋はコンクリートの引張りの強さを補う。さらにまた鉄筋とコンクリートは付着力が大きく、鉄とコンクリートは温度に対する膨張係数がほとんど一致しており、一定限度内で弾性係数が一定の比になるなどの特性がある。

 鉄筋コンクリート造は現場で型わくをつくって、柱とはりはもちろんスラブ、壁とも剛に結合するように施工する場合は、一体式構造となる。現在でも大部分の工事はこの形式をとっている。しかし、プレハブ建築のように、柱・はり・壁などの各部材を工場で生産しておいて、現場に運んで組み立てることがようやく盛んになろうとしている。この場合は架構式構造となる。

 鉄筋コンクリート造りに使用する鉄筋は、丸鋼と異形鉄筋があり、付着強度を要するときは異形鉄筋が用いられる。

 鉄筋は一般に径25mm以下を用い常温で加工する。鉄筋の継手はできるだけ応力の小さいところを選んで継ぐようにし、また鉄筋の末端部は必ず折曲げ(フック)をつけておかなければならないが、異形鉄筋を使用する場合にはフックをつけなくてもよい場合もある。

 鉄筋の定着部分の長さは、日本建築学会の建築工事標準仕様書JASS 5に定められている。また、鉄筋を継ぐには重ね継手と圧接継手の2つの方法がある。

 コンクリートは、セメントと骨材(砂利と砂)とを適当の割合に調合して水を加えて混練したものである。コンクリートは耐火、耐水、耐久性があり、圧縮強度も大きく、自由にいろいろの形がつくれるなどの長所をもっているが、欠点としては、引張りや曲げ強度が小さく、重量が大きく、乾燥収縮が大きい点などである。

 鉄筋コンクリートの鉄筋をさびさせないためと耐火のためには、コンクリートで完全に被覆する必要がある。これを鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さ(一般に鉄筋のかぶり厚さ)といい、建築基準法では、最小限のかぶり厚さを定めている。

3.補強コンクリートブロック構造

 コンクリートブロックを積み重ねた建築物は、地震力に対して弱いため、鉄筋を適所に配置して補強したものが、補強コンクリートブロック造である。

 この構造は、補強筋を入れて積み重ねた壁体を、バランス良く配置すると同時に、基礎は布基礎として剛性をもたせ、各階の壁頂には鉄筋コンクリートのがりょうやスラブを設けて壁体と一体となるようにする。

 この構造は、工期が短縮でき、施工も容易で耐火性に富むが、施工の良否によって耐力、耐久性が左右されるので注意が必要である。

 補強コンクリートブロック造に用いるブロックは、空洞コンクリートブロックでJIS A 5406によって定められ、ブロック単体の強度によりA種、B種、C種の区別があり、建てられる階数、高さにも制限がある。

 補強コンクリートブロック造は、ブロックの縦横に鉄筋を入れながら、目地モルタルを敷いて積んでいくが、目地は縦横に通るようないも目地とした方がよい。構造において、地震などの水平荷重や鉛直荷重などを分担する壁のことを耐力壁といい、耐震上特に重要である。

 耐力壁は平面状つり合いよく配置し、上下階とも同じ位置に設け、囲まれた部分の面積は60㎡以下とする。また耐力壁の壁厚は15cm以上で、はり間方向、けた行方向ともに一定の長さ以上の壁量が必要である。

4.鉄骨構造

 鉄骨は、山形鋼、みぞ形鋼、I形鋼、H形鋼、平鋼板などを素材として組み合わせてボルト接合又は溶接によって骨組を構成する架構式構造である。鉄骨造は、木造に比べて力学的構成法が同じでも、その素材の強度がきわめて強い鋼材を用いて、柱・はり・小屋組などをつくるので、大はり間の建築を施工することができる。

 普通形鋼は、一般に熱間加工によって成形されるが、最近は、薄鋼板を冷間加工によって成形する軽量形鋼を用いる(軽量鉄骨造)ことや鋼管を用いる(鋼管構造)ことも多くなってきた。

 鉄骨造の基礎は、一般に鉄筋コンクリート造とする。柱は単一材を用いる場合と、山形鋼・溝形鋼・鋼板を組み合わせてつくる組立て柱とがあり、けた・はりも同様に単一ばりと組立てばりとがある。

 鋼材は曲げ加工が容易で、接合はリベット接合・ボルト接合・ピン接合・溶接接合などによって強固にできるから、形は木造にくらべて自由につくることができる。

 壁は石綿スレート張り又は鉄網モルタル塗り、ALC板(気泡軽量コンクリート板)などを用いることが多い。また組立てや解体が比較的たやすく、鋼材は量産できるからプレハブ建築のように建築生産の工業化の構法としては最も適している。

 鉄骨造の最大の欠点は、高熱に対する耐火性がなく、空気中でさびることである。この欠点を補うために耐火材料で被覆したり、適当な保護をすることによって耐火性・耐久性が得られる。

 プレハブ建築についてのべると、プレハブとは正確にはプレファブリケーション(Prefabrication)の略で、その言葉の意味は、「あらかじめつくられた部品などを組み合わせてつくる」ということである。つまりプレハブ建物とは、建築現場以外のところで、あらかじめ、柱・はり・床・壁などを制作し、現場に持ち込んで組み立てて建物をつくることである。プレハブ構造で一番大切なことは、つみ木のようにただ組み立てていくだけでは地震や台風によって容易に建物は壊れてしまうので、組み立てられた構造上の重要部材はしっかりと接合しなければならない。地震国であるわが国では、この接合部がプレハブ構造の最大の需要点で、設計・現場での施工に特に注意する必要がある。

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