1 壁面の塗装

(1)施工の条件

 現場施工のコンクリート、モルタルなどの壁面塗装は、一般的に3~4週間の養生期間(乾燥期間)が必要と考えられている。

 この時の条件は、壁面の含水率は8~10%以下、アルカリ度はpH9以下が望ましいとされている。

 測定には、高周波水分計やpHコンパレーターなどが用いられる。

(2)吸水止め

 軽量気泡コンクリート(ALC)、軽量コンクリート、軽量コンクリートブロックなど、吸水性の大きな素地の吸水などを抑えるために素地調整の段階で行う工程で、通常の下塗り前に行う吸込み止めとは別の工程である。

 素地調整の穴埋めやパテしごきは、この吸水止めの乾燥後に行う。

(3)亀裂(ひび割れ)の処置

 壁面の亀裂には、建物自体の構造の欠陥から生じた亀裂と、壁材料の収縮による亀裂がある。構造上の亀裂は通常のパテかいでは、埋めても短時間で同じ箇所に亀裂が発生してくる。

 対策としては、亀裂箇所に絹テープなどを貼り付け、その上からパテ処理するなどの方法がある。パテは市販のJIS K 5669合成樹脂エマルションパテが使用される。また、壁全体に寒冷紗などの布を貼り付け、パテ処理する方法もある。

(4)ボード接合部の処理

 屋内の壁面や間仕切り壁にせっこうボードなどが使用されるが、ボードの突き合わせ部がV状になるケースや突き付けになるケースがある。

 この場合、塗装で重要なことは突き合わせ部が目立たないように処理することである。処理方法は様々であるが、基本は市販の合成樹脂エマルションパテや専用の目地処理材、ジョイントテープなどを用いて、突き合わせ部が目立たないように施工することである。

(5)内部用パテと下地調整材

 壁面塗装では、亀裂を処理するためのパテは欠くことはできない。この時に用いるパテは、JIS K 5669に規定された合成樹脂エマルションパテがよい。

 外部壁面では、合成樹脂エマルションパテの適用は原則できないので、JIS A 6916建築用下地調整塗材が使用される。

 建築下地調整用塗材には、セメント系下地調整塗材(セメントフィラーなど)、合成樹脂エマルション系下地調整塗材、セメント系下地調整厚塗材(合成樹脂エマルション入りセメントモルタルなど)がある。

(6)建築用仕上塗材の施工の要点

 コンクリートなどの外壁面に建築用仕上塗材を施工する場合、下記の注意が必要である。

①養生は確実に行うことが重要である。塗装対象外箇所への汚染防止はもちろんのこと、特に人や自動車、植栽など周辺への塗料飛散による汚染を防ぐように養生を行う。

②仕上塗材の種別によって無機質系、有機質系とも可使時間(ポットライフ)に制限のあるものには注意する。

③作業中に素地の吸込み差や風の影響を受けて、壁面の仕上がりが不均一になることがあるので注意する。

④強風時や降雨中または降雨の心配があるときには塗装作業を行わないことが望ましい。

⑤足場を解体したあとの当たりや足場つなぎの部分的な残しは、解体作業と連携を取りながら計画的に補修を行うことが必要である。

2 化学工場の塗装

(1)耐薬品塗装の目的

 化学工場などのように、酸やアルカリ、薬品ガスなどの影響を絶えず受けているような箇所の、金属、モルタル・コンクリート、各種ボード類などは腐食・劣化が早く進行しやすい。

 この腐食や劣化から被塗物を保護するためには、その雰囲気に耐えられる塗料を選択しなければならない。耐薬品用塗料はそのために用いられる。

(2)耐薬品用塗料の塗装

 耐薬品用塗料で、軽度の耐薬品性であればフェノール樹脂塗料、油変性エポキシ樹脂塗料や塩化ビニル樹脂塗料などが用いられるし、過酷な条件下ではエポキシ樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料やポリウレタン樹脂塗料が使用される。

 耐薬品用塗料は、要求される条件に耐えられるものを選択するが、この中で代表的な耐薬品性塗料はエポキシ樹脂塗料である。

 エポキシ樹脂塗料は水や薬品、ガソリンなどの入るタンク内面や化学工場内壁、鉄部、床などに多用されている。

 下塗り(さび止め含む)は当然ながら同系か専用のものを使用する。

(3)耐薬品塗装の要点

 ①要求される耐薬品性能に適した塗装系を選択する。

 ②塗装仕様書に基づき塗付け量、塗り回数を厳守する。

 ③特に過酷な条件が予測される箇所は塗り増しするとよい。

 ④鉄部でさびが発生してしまうと、メンテナンスしても新設時の性能は期待できないので、軽度のうちに、早め早めに補修塗りを行う。この時の塗り回数は上塗りのタッチアップではなく、ケレンを十分に行った後に、下塗りから規定通りの塗り回数で塗装する。むしろ新設時より多く塗装するぐらいの考え方が必要である。

 ⑤いずれにしても補修は早め早めに行う。

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