うすめ液は希釈剤又はシンナーと呼ばれており、塗装時に使用塗料の目的に応じた最適条件に調整する材料です。

 うすめ液の目的は、塗料を塗装するための最適粘度に調整したり、乾燥速度のバランスを取ったりすることで美しく仕上げたり、最適な膜厚などを得ることで適正な塗膜性能を発揮させることです。その成分は、単体溶剤より混合溶剤が多いです。

 合成樹脂はその種類によって溶解する溶剤が異なるので、塗料ごとに専用うすめ液が設定されていることが多いです。原則として、製造業者の指定する専用うすめ液を使用することが品質保証に結びつくので望ましいです。

2.1 うすめ液の一般的性質

 うすめ液は、単に塗料を溶解して粘度を下げるだけではなく、次に示す条件を満足させるような配合でなければなりません。

① 脂を溶解できるもので、顔料の分散を妨げず、色むらを生じさせないもの。

② 蒸発速度が適切で、たれ、しわ、あわなどを生ぜず、平坦な塗膜が得られること。

③ 塗料の要求性能に合わせ、夏季用、冬季用、はけ用、スプレー用など、各条件と適合するようになっていること。

2.2 うすめ液の種類とその特性

 うすめ液は、塗料の種類に適合するように作られたものと、要求条件、例えば乾燥を早めたり、遅らせたり、高湿度で塗装できるように調整するものがあります。

 ここでは、代表的なうすめ液について説明します。

 

(1)塗料用シンナー

 油性調合ペイント、合成樹脂調合ペイントなどの油変性した塗料や、昨今はアクリル樹脂やポリウレタン樹脂を用いた非水分散形(NAD)塗料に使用されます。

 使用される溶剤の種類は、ミネラルスピリットに代表される脂肪族炭化水素類です。

 

(2)アクリル樹脂塗料用シンナー

 溶剤形合成樹脂塗料の汎用品がアクリル樹脂塗料ですが、主に外装仕上げに使用されています。

 うすめ液はトルエン、キシレンの調整用溶剤に、真溶剤として酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル系や、MIBK、MEKなどのケトン類を混合してあります。

 このうすめ液は有害性の高い成分を含んでおり、使用時には安全衛生面を十分に考慮しなければなりません。

 

(3)2液形エポキシ樹脂塗料用シンナー

 エポキシ樹脂の真溶剤であるエチルセロソルブやブチルセロソルブなどのエーテル類やMIBK、MEKなどのケトン類の調整溶剤として、キシレン、トルエンなどが配合されています。

 アクリル樹脂塗料用シンナー同様に取扱には注意が必要です。

 

(4)2液形ポリウレタン樹脂塗料用シンナー

 ポリウレタン樹脂の真溶剤である酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類に調整溶剤としてトルエン、キシレンが混合してあります。

 アクリル樹脂塗料用シンナー同様に取扱には注意が必要です。

 

(5)ラッカーシンナー

 ラッカーは主にエアスプレーで塗装されるので、低粘度に調整されて塗装されます。

 このために吹付け塗装した塗膜がたれたり、しわができたり、あわが残らないように、溶解力や乾燥速度を調整した混合溶剤になっています。また白化(ブラッシング)防止用などの調整用うすめ液(リターダーシンナー)もあります。

 成分はエステル類、ケトン類、アルコール類や芳香族炭化水素類などが適量混合されています。

2.3 うすめ液の取扱い

 うすめ液は様々な有害性や引火性などがあるので、取扱いは細心の注意や管理が必要です。

 

(1)火気に対する注意

 うすめ液に用いる溶剤は一般に引火性が強く、容易に燃焼しやすい。したがって、保管を含め取扱いは、消防法で厳しく規制されています。また、安全衛生上の取扱いは労働安全衛生法に規則が定められています。

 これらうすめ液を用いての塗装作業では、必ず火気厳禁とし、電気器具などは防爆形を用い、十分換気を行うなど注意しなければなりません。くわえタバコなどは論外です。

 

(2)有害性に対する注意

 溶剤は大なり小なり有害性があります。溶剤が人体に与える有害性は、刺激作用、麻酔作用、臓器障害などがあります。

 対策として作業者の安全を守るために、労働安全衛生法の中に、有機溶剤中毒予防規則が定められており、作業を行う場合は、必ず、取扱作業主任者のもとで定められた安全管理を行わなければなりません。

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