4.磨き

 磨きの目的は、研磨材料に含まれている溶剤によって汚れを取り除き、溶剤が蒸発したあと、残留した油脂分(ワックスなど)をこすることによって光沢を出すことである。

 コンパウンドによる研磨は、それらの中に含まれる研磨材微粒子が面を削って塗面の粗さをさらに細かくし、溶剤は汚れを取り除いて蒸発するので、油脂分が残留して光沢が出る。との粉、角粉などの液体を伴わない粉末による磨きは、その微粒子が面をひっかいて粗さをさらに細かくすると同時に、付着している油脂、ごみなどが取り除かれて光沢が出る。

 いずれの場合でも、作業するときは圧力を強くかけず、作業スピードは緩やかでなければ目的の光沢が出ない。圧力をかけすぎると塗面に傷を作ることになるので、注意しなければならない。

(1)研磨材料の種類と用途

 ポリッシングコンパウドは混合研磨剤という意味で、ワックス、溶剤及び研磨材からできている。研磨材の粒度によって、粗目、中目、細目、極細めに分けられる。これは、塗膜の磨きや、小さな傷を研磨して除いたり、汚れを除去するときなどに用いられる。小物、少量の場合には、ウエスにつけて研磨してもよいが、大物、大量作業の場合には、少量の水で薄めてポリッシャーで研磨する。その後、汚れのないウエスでふき上げる。

 ワックスとは、ろうの意味である。南米ブラジル産のカルナウバロウが世界的に有名で、性能もよい。一般的に液状又はペースト状ワックスは、ワックス成分、溶剤、その他、用途に応じて薬品、安定剤、香料などから成り立っている。

 ワックスは、塗布して伸びがよく、つやがよく出てべとつかず、耐久性のあるものが良質である。素地や塗装面の保護、つや出し、清掃、はっ水、ちりやほこりの付着防止などのために用いられる。

 

(2)ポリッシャーと手による研磨法

 ポリッシャーでコンパウンド磨きをする場合は、水などを加え、手磨き時よりも薄めたコンパウンドを使用する。

 薄めたコンパウンドをはけで塗布して、フェルトパッドを付けたポリッシャーで磨き、最後にきれいなウエスで磨く。ワックスの場合は、軟らかな木綿白布でワックスを伸ばし、ポリッシャーでつやを出す。

 このとき、ポリッシャーの回転は500min-1程度とし、ポリッシャーの回転が速いと、また、加える圧力が強いと研磨面に熱を生じ、きずをつける原因となるので注意しなければならない。磨き上げるときは、作業範囲を50程度の面積に区切ったほうがやりやすい。

 

(3)たんぽずり

 塗装の仕上げで、塗料を薄く塗布して平滑な仕上げ面を得るために行う。特に、はけ塗りでは、はけ目をたんぽずりによって平滑にする。主に塗膜に相溶性のある揮発性塗料(セラックニスやクリやラッカーなど)に用いられる工法である。しかし最近は、ポリッシングコンパウンドを利用することが多くなり、熟練を要するたんぽずりはほとんど行われなくなった。

a たんぽずりの目的

 たんぽずりは、はけ塗り後に平滑な塗面を得るために、溶剤で希釈した塗料をたんぽに含ませ、希釈塗料によって塗膜の凸部を溶解して凹部や木目の中に充てんする作業である。仕上がりの良否は、塗料の希釈割合、たんぽずりの技能の差で決まる。

b たんぽの作り方

 たんぽは、木綿の布(かなきん)に、綿を包んでつくる。

 布は、新しいものよりも、のり分のない洗濯したもののほうが仕上がりがよい。綿は青海綿が用いられる。たんぽの弾力性は、塗料を含んだ時に耳たぶくらいの軟らかさがよく、硬すぎても軟らかすぎても美しい仕上げにならない。

c たんぽずりの方法

 たんぽずりは、一般に3~5回続けて行う。運行は、らせんを描くように行う丸ずりと、直線状に行う棒ずりとがある。最初に丸ずりで凹部にすり込むようにし、棒ずりは仕上げに行うのが普通である。たんぽに含む塗料も、初めは濃く、仕上げに近づくにしたがってほぼ溶剤だけの状態で、木目に平行に行い、きれいな塗面とする。

 たんぽの持ち方は、親指、人差し指、中指で軽く押さえ、布の端を薬指と小指に間に出す。たんぽずりは、たんぽに均一に塗料を含ませて行う。初めは軽く、塗料の含みが減少するに従い、強く押すようにする。

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