3.色合わせに影響を及ぼす要因

(1)照明条件

 白い紙を太陽光の下で見れば白い。しかし赤い照明の前では赤く見えるし、照明が青いときは青く見える。太陽光の下では赤い紙は、青緑色の波長成分を吸収するので赤く見え、青い光の下では黒く見える。このように我々が感じる色は、その物体に当たる光によって変化する。したがって色を見るときには、どんな光の下で見るかを明確にしておかなければならない。

 色を見るときの光源としては、JIS Z 8723:2000「表面色の視感比較方法」によって次の三つが定められている。

①自然昼光

②共通光源D65

③標準光源A

 常用光源D65は、昼光で照明される物体を人工照明下で比較する場合に用いるもので、現在はこれを用いることが多い。標準光源Aは、白熱電球で照明される物体の色を比較する場合に用いる。これらの光源がない場合は、その製品の使用される照明と同様の条件下で色合わせを行えばよい。例えば、外壁用塗料の調色は屋外で判定し、屋内用塗料の調色は、その部屋と同種の照明下で判定するとよい。

 

(2)つや(光沢感)

 調色作業では、つやの調整も大切な点である。つやあり塗料とつやなし塗料を混ぜると希望するつやが得られるが、塗装方法と膜厚によって、つやは微妙に変わるので、注意を要する。

 光線が塗膜表面に達すると、入射光の一部分は反射し、残りの光は塗膜内部に入る。つやあり塗膜表面はクリヤ層で平らであるため、表面での反射光は鏡面反射してつやを出す。一方、つやなし塗膜は、塗膜表面に顔料が突き出ているためでこぼこになる。この表面に入射した光は、乱反射して塗膜はつやなしとなる。表面反射光には色がないため、塗膜の色は白っぽく淡色に見える。したがって、つやに差のある2色を比色する場合には、表面を水で濡らして同じ表面状態にしてみるか、無色透明の鉱物油でぬらしてみるとよい。

 

(3)ぬれ色と乾き色

調色作業中の容器の中の塗料の色と、これを塗り広げた直後の色と、乾燥後の塗膜の色では大きく異なるのが普通である。したがって、調色作業中は何度か指先でこすって色を調べ、かなり近づいた時点で所定の作成方法により、乾燥塗膜の色を確かめなければならない。特に、つやなし塗料では注意を要する。

 

(4)塗装方法

 塗装方法が異なると、同じ塗料でも同じ色に仕上がらない。例えば、はけ塗りと吹付け塗りでは乾燥塗膜の色が異なり、特に静電塗装では、さらに色の差が大きくなる。これは、溶剤と顔料の電気特性が影響するからである。自動車の塗装などにみられるアルミニウム粉入りのメタリック塗料では、この傾向がさらに著しくなるので、塗料の薄め方、塗装方法、乾燥方法などを標準化しておかなければならない。

 

(5)塗装膜厚と下地

 隠ぺい力の小さい色の場合、通常の塗膜厚では、下地の色の影響を受けて所期の色が得られない。このような場合の塗り板は、見本色と同じ塗装工程によって作られなければならない。特に透明性のある有機系の黄色及び赤顔料では、下地を完全に隠ぺいする塗膜厚で比色するか、下地を同一条件にして膜厚を取り決めたうえで、色を比較する必要がる。

 

(6)乾燥方法

 塗装直後の塗膜の色は、それに続く乾燥方法によって異なった色に仕上がる。まず第一に、自然乾燥と加熱乾燥の差がある。次に前者では乾燥時間による差が、また、後者では温度と時間による差がある。このため、いろいろな簡便法はあるにしても、最終的な色を確認するには、その塗料の種類に応じて決められた標準的な乾燥方法によらなければならない。

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