2.原色の選定

(1)原色とは

 光学的にいう光の3原色とは赤、緑、青である。我々は物体で吸収されずに残って反射される光の色を物体色として認識する。それゆえ、色材の3原色とは光の3原色の補色である青緑(シアン)、赤紫(マゼンダ)、黄(イエロー)となる。これらをいろいろな割合で混合することで様々な色を作ることができる。

 顔料粒子を含有するエナメル塗膜に光が入射すると、光の経路は複雑になる。塗膜表面で反射する光もあれば、素地からの反射光もある。顔料表面に達した入射光のすべてが反射されるわけではない。顔料に吸収されたり、透過する光もある。反射・吸収・透過の割合が、顔料の光学的性質を支配する。顔料や染料が光の特定波長成分を吸収し、そのあと反射されて出てきた光の色がその物質の色となる。

 色材の3原色(青緑、赤紫、黄)のみでは塗料の調色に限界があるので、塗料の原色はもう少し数が多くなる。

 最も一般的に使われる原色は、無彩色としての白、黒と、有彩色としての赤、黄、赤さび、青、緑の7色である。

 調色作業の第一歩は、調色しようとする見本の色が、手持ちの原色の組み合わせで出だせるかどうかを確かめることである。慣れてくると、板の上で必要と思われる各原色を指先でこすり合わせて、だいたいの見当を付けることができる。一般に、彩度がよほど高くない限り、通常の色は白、黒、黄、赤さび、青、緑の6原色で、かなりのところまで調色できる。

 クリヤ(透明)塗膜には少し黄色っぽいものもあるように、同一顔料の原色からなる乾燥塗膜でもその色は、合成樹脂調合ペイントとアクリルラッカーでは異なる。また、同じ種類であっても、塗料メーカーによって原色の色が異なるのは、顔料の種類や分散粒子の大きさが異なるためである。

 

(2)原色の色数

 原色の数は、塗料の品種によって異なる。例えば、自動車補修用塗料は原色の数が著しく多いが、建築用のエマルション塗料はたんさい色が多いので、原色の数は少ない。

 調色は、できるだけ少ない数の原色を用いるほうが調色しやすく、色も濁らない。例えば、彩度の高い緑を調色するには、シアニングリーンを基調色として用いる。

 

(3)色あし

 原色を白で10~20倍に薄めた色合いをいう。濃彩色では問題ないが、淡彩色では同じ色系統の原色でも顔料の種類によって色がずれてくるので、原色の色あしを確かめることが必要である。また、メタリックカラーに使用する原色の色あしを確認する場合には、白の代わりにシルバーメタリックを用いることがある。

 

(4)色ののぼり

 調色した塗料を塗装すると、乾燥するに従って色味が濃くなってくる。例えば、エマルション塗料の調色においては、ぬれ色(乾燥前)と乾き色(乾燥後)とが異なる。この現象を色の「のぼり」という。エマルション塗料は、塗料状態ではポリマー粒子が分散しているから白く見え、乾燥すると粒子が融着して透明になる。

 このように、透明塗膜(ビヒクルポリマー)自体の色味が乾燥前後で変化する塗料があるので、色合わせは乾燥塗膜が基本になる。

 

(5)保色性

 初めの色のまま長い期間色が変わらないものを「保色性がよい」という。白、黒、黄、赤さび、青、緑の原色は濃彩でも淡彩でも保色性は良いので、原則的にこれを使うべきである。ただし、彩度の高い黄やあかはこの原色では得られないので、それぞれ特殊な原色を使わなければならない。この場合、原色としての保色性はよいが、少量混ぜると極端に悪くなるものがあるので注意を要する。

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