3.壁面(セメント系素地)の素地調整

(1)素地の状態

 塗装の対象は、コンクリート構造物の打放しコンクリート面、モルタル仕上げ面、プラスター仕上げ面のほか、せっこうボード、ALCパネルなどの建材製品である。多くはセメント系、又はセメントを混合した素地で、それぞれ異なる特性をもつ。

 コンクリート、モルタルなどはアルカリ性であり、せっこうプラスターも作業性をよくするために石灰を配合するので、アルカリ性である。これらの材料は、施工時に大量の水を使用するため、一定期間、相当量の水分を含有する。この初期の含水率が高く、アルカリ性であることがコンクリートや塗壁類の大きな特徴である。

 現場施工のコンクリート打放し面は、レイタンス、型枠離型剤、油、ごみなど、塗装に障害となる付着物が多い。表面の平滑度も悪く、割れ、巣穴などの欠陥をもっている。なお、レイタンスとは、まだ固まらないモルタル又はコンクリートにおいて、水の上昇に伴って、その表面に浮かび出て沈殿した微細な物質をいう。

 一般に無機質系素地は多孔質で、吸水率も均一でない。

 工場製品の中には、そのままでは表面の強度が不足して、吹付け仕上げができない場合がある。壁面の素地ごしらえは、このような欠陥をよく知って行うことが必要である。

 素地調整作業は、特に水分(含水率)とアルカリ度をどこまで均一に調整できるかが重要で、塗装効果を左右する。

a 水分(含水率)

 コンクリートやモルタルの新設工事の場合、一般には、施工後3週間以上放置した後、塗装に入るのが適切とされている。これはコンクリートやモルタルの乾燥が3週間くらいで平衡状態になり、その含水率が8%前後となって、水分の塗膜に対する影響力がほとんどなくなるからである。

b アルカリ度

 新設のコンクリートやモルタルは強いアルカリ性を示し、pHは一般に12以上である。しかし、これらの強いアルカリ性も空気中の炭酸ガスと反応して、炭酸カルシウムとなって表面から徐々にアルカリ性を失ってくる。

 内部のアルカリ性物質は中和されるのに長時間を要し、また中性化または表面ほど均一には進まないため、局所に濃度の高いアルカリが残留しやすい。

 表面のアルカリ性が低下するには、水分と同様に3週間くらいかかる。そして、pHは8~10で安定化する。塗装は、pHが10以下で行うのが望ましい。pHの測定にはpH測定器を用いることが望ましい。簡易型でも近似値は測定可能である。

 

(2)素地調整の種別と工程

 JASS18による素地調整の種別には、1種、2種、3種の3種類がある。

 1種と2種の違いは、いわゆる全面パテと部分パテの違いである。2種の場合は部分パテであるため、パテ部と素地部との間の吸込みむらや、つやむらを生じることがある。

 3種は、素地の状態がそのまま仕上がりや付着性などに影響を与えてしまうことに留意する必要がある。さらに、1種と2種では、吸込み止めに使用するシーラーとパテの選択が重要である。

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