2.木質系の素地調整

(1)木材とはどんな材料か

 木材の種類を分類すると、その細胞の構成上から針葉樹と広葉樹に大別される。

 針葉樹は常緑樹が多く、落葉樹の多い広葉樹に対して比較してやわらかいので、軟材と呼ばれている。広葉樹は組織的には道管と木繊維からなり、その道管の配列状態によって、環孔材(道管が年輪に沿って環状に配列)及び散孔材(道管が年輪内に点在)に分類されるものが多い。一方、針葉樹は組織的に道管がなく、仮道管と呼ばれる細胞からなる。

 建築用に使用される木材は、柔らかく加工しやすい針葉樹が多いが、最近では広葉樹も採用されるようになってきている。

 塗装面からみると、針葉樹にはエナメル仕上げ(不透明塗装仕上げ)、広葉樹にはクリヤ仕上げ(透明塗装仕上げ)をする場合が多い。

 木材には年輪があり、秋から冬にかけて形成される部分を晩材といい、細胞が小さく硬い木部を形成する。これに対し、春から夏にかけて形成される部分を早材といい細胞も大きく軟らかい。材面を分類すると、地面と水平方向に切断した面を木口面といい、髄心と年輪がある。木口面に対して直角方向に切断した場合を板目といい、このうち髄心を含めた位置で切断するとまさ目となる。まさ目と板目では収縮度が異なり、一般に板目にとった板は反りやすく、特に針葉樹ではまさ目を重視する。木材樹体の細胞組織の名称、及び塗装仕上げの見地から見た木材の特異性、塗装効果を支配する主な要因は、次の2つである。

a.木材の大きな収縮・膨張と塗膜の割れ

 木材を大気中に放置しておくと、大気中の温度と関係湿度に対して木材から出ていく水分量と、木材中に入っていく水分量が等しくなり、平衡状態を保つようになる。この時の木材の含水率を平衡含水率といい、我が国では平均14~16%である。例えば、木材は関係湿度が10%から90%になるにつれて木目及び木目直角方向とも約2.5%膨張する。この場合の木材の含水率は6%から17%に変化する。

 このように、木材は吸水と脱水によって膨張と収縮を繰り返し、木材に付着している塗膜は、この動きに追従できないと割れてしまう。

 塗膜の割れを、木材の塗膜の線膨張係数の比較から考えてみよう。ニトロセルロース(NC)ラッカー塗膜の線膨張係数は、木材の木目直角方向の最大値のそれと比較すると約2倍も大きいので、塗膜が割れることはない。むしろ低温になると、塗膜の方が木材よりも縮んでしまう。このとき、塗膜は木材に付着しているので引っ張られることになり、塗膜の引張り強度が破壊強度に達すると割れてしまう。そして、冷却速度が大きくなるほど塗膜は割れやすくなる。

b.塗膜の乾燥性、付着性を阻害する成分

 マツ材などは、松やに(ロジン)を含む。これは塗膜を透過しやすく、いつまでも部分的に塗膜表面がべとつくことがある。

 コクタン、ローズウッド、シタンなどは、タンニン分を多く含み、特にラジカル反応により硬化する不飽和ポリエステル樹脂及び紫外線硬化形塗料などは、硬化障害と付着不良を発生する。クスノキ在中の樟脳分は、ポリウレタン樹脂塗料の橋かけ反応を促進させるため、局部的な硬化収縮による塗膜のへこみや付着不良を生じやすい。したがって、これらの塗膜にはあらかじめポリウレタン樹脂系やに止めシーラーを使用して、これらの障害成分を止める必要がある。

 

(2)素地調整とその工程

 木材の持ち味を上手に引き出す目的で、素地調整が行われる。木材の対する塗装は、木目をいかすクリヤ(透明)仕上げとエナメル(不透明)仕上げとに大別できる。

 JASS18では、素地調整を1種と2種とに分け、1種の素地調整をクリヤ仕上げ用に、2種のそれをエナメル仕上げ用にしている。

 節が存在する素地には、やにが浸出するおそれがあるので、セラックニスか、やに止めシーラーを塗布する。セラックニスはアルコールのみに溶け、ほかの溶剤及びやにには溶けないので、次に塗られる塗料で侵されず、やに止め効果を発揮する。

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