4.建築用塗料による仕上げ

(1)透明仕上げ

 通常クリヤ仕上げ、又はステインクリヤ仕上げと呼ばれているもので、打放しコンクリート面の素材感と質感をいかした塗装であり、素地そのままと、素地着色の2種がある。

 塗装系はアクリル樹脂、2液型ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、常温乾燥形ふっ素樹脂のワニス塗りである。必要に応じてこの系の塗装系に浸透性塗布形防水処理剤を組み合わせての複合塗装で、さらに塗装効果の向上を目的とする塗装がある。この場合、浸透性防水材が下塗りとなる。

 透明仕上げは素地の肌をいかす仕上げである。素地の状態がそのまま仕上げに影響するので、原則的にパテかいなどは行えない。素地の調整種別は、JASS18の規定で3種とする。塗膜の割れやはく離を避けるために、厚塗りを避け、素地に含浸して表面層に塗膜を厚く形成させないように塗装することが基本である。

 次に、浸透性塗布形防水処理剤の塗装について説明する。

 打放しコンクリートの表面から浸透する雨水などから構造物を保護するため、この種の塗装が行われる。表面からの吸水を防止することで汚れ、エフロレッセンス、凍害などの劣化を防ぐと同時に、素地仕上げの美観を維持するための塗装である。しかし、浸透性防水剤のみの塗装では、コンクリートの中性化、内部鉄筋の腐食、長期の美観保持は期待できないので、建築用塗料のクリヤ仕上げと併用して目的を達成するものである。塗装のポイントは、素地の清掃が第一であること、また塗装は通常2回塗りで塗布量を十分に保持しなければならないことである。

(2)コンクリートの不透明仕上げ

 建物の内外壁面や床面の不透明仕上げの目的は、美装を重点にするものと、特殊な環境下における保護機能のみを重点とするものの2種に大別される。

 高度な平滑鏡面仕上げを目的とするものでは、素地面の粗さを修正して平滑精度を得るために行うパテかい、パテ付けなどの下地形成工程が最も大切な塗装工程である。このために用いられる塗装材料が、各種のシーラーと建築用下地調整塗材(パテ)である。

 シーラーには、水系と溶剤系(1液形、2液形)のものがあり、水系のものではアクリル系が主流である。下地調整塗材には、セメント系(セメントフィラー)と各種合成樹脂系のものがある。合成樹脂系にはエマルション系と溶剤系があるが、エマルション系のものは、外部用として必要な耐水性の強度の点で劣るので、外部用パテには原則的に使用できない。ただし、つや有り合成樹脂エマルションペイント塗りでは、耐水性と光沢確保のため、つや有り合成樹脂エマルションパテが、一般の合成樹脂エマルションパテと区別して使用される。

 コンクリート造の寺院構造物の塗装では、高級な仕上げには漆状仕上げの美装性が要求される。このため、コンクリート素地を平滑にするための各種パテによる平滑面形成は、塗装工程中最も重要な工程で、パテによる地付け作業と乾燥後の研磨作業は繰り返し行われる基本作業である。へら地付け作業に習熟していないと、よい塗装を達成できない。

 コンクリート打放し面には主にセメントフィラーが用いられ、この工程でおおよその平滑面はつくられる。さらに平滑にするために塩化ビニル樹脂パテ、ポリウレタンパテ、エポキシ系パテなど、各種溶剤系パテが使用されるが、エマルション系パテに比べて乾燥が早いので、作業性が悪く、作業に一段と熟練が求められる。不飽和ポリエステル樹脂パテは、耐アルカリ性が劣るので、コンクリート用としては使用できない。

 塗装工程と手順は、JASS18を基本として決定する。

 外壁面の塗装では、美装性機能を長く保持する必要があるので、より耐久性に優れた塗装系へと移行する傾向がある。塩化ビニルエナメル、アクリルエナメルの塗装系から、より高度な2液型ポリウレタンエナメル塗り、アクリルシリコンエナメル塗り、常温乾燥ふっ素樹脂エナメル塗りが多用される傾向にある。

 もちろん、標準的な一般の塗装では、合成樹脂エマルションペイント塗り、つや有り合成樹脂エマルションペイント塗りが内外部用として使用されているが、合成樹脂エマルションペイント塗りは、外装用として使用より、むしろ内装用としての使用が一般的である。

 注目すべきは、現在建物内外のコンクリート、モルタル壁面用や無機質系建材用の塗料として弱溶剤で希釈できるアクリル樹脂系非水分散形塗料が多用されていることである。弱溶剤でも塩化ビニル樹脂塗料と同程度の性能が得られ、作業性がよいばかりでなく、水系エマルション系に比べて対汚れ性、耐水性、耐候性、防かび性に優れている。また塗替え塗装では、下地となる旧塗膜への適応範囲が広いので、塗替え用塗料としても優れている。

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