2.コンクリート構造物の劣化

 半永久的と思われていたコンクリート構造物も意外に早く劣化することが分かっている。コンクリート構造物のれ化現象は、おおよそ次の種類に大別される。

 ①ひび割れ ②中性化 ③アルカリ骨材反応 ④塩害 ⑤凍害 ⑥特殊環境下の劣化

(1)ひび割れ

 建物に発生するひび割れは、コンクリート構造物とこれを仕上げている仕上げ部材に発生するものの2種類である。コンクリート面と仕上げ部材のひび割れから水分、酸素、炭酸ガス、塩分、腐食性ガスなどがコンクリート層内部に浸透して、鉄筋のさびを誘発し、同時にコンクリートの中性化を促進する原因となっている。

(2)中性化

 大気中の炭酸ガスがコンクリートの表面やひび割れから浸透・拡散し、セメント水和生成物である水酸化カルシウムと化学反応を起こすことによって、中性炭酸カルシウムに変化する現象である。中性化は表層部から内部へと次第に進行する。

 Ca(OH)2+CO2 → CaCO3+H2O

 中性化が鉄筋部分に達すると、コンクリート強度が著しく低下し、コンクリートの強アルカリによって保護されている鉄筋の防食機能まで低下し、さびが発生するようになる。

(3)アルカリ骨材反応

 橋や高速道路などのコンクリート構造物は、打放しで半永久的に強度を維持できると考えられていた。ところが、昭和50年代の初めに、早期のコンクリート構造物にひび割れが発生する現象が多発した。その原因は、これまで日本に存在しないといわれてきたアルカリ骨材反応によることが判明して、一気に社会の関心がアルカリ骨材反応に集中した(昭和50年代後半)。

 アルカリ骨材反応とは、セメント中のアルカリ骨材の岩石中に含まれる反応性のシリカ鉱物とが反応して膨張し、その圧力のため、コンクリートにひび割れが発生する現象である。

 わが国では良質の骨材が不足しているため、山砂利や砕石を使用せざるを得なくなり、これらの中に反応性のものが含まれていることが原因となった。アルカリ骨材反応は、コンクリート構造物がかなりの高湿度の環境にさらされることと、また外部からの水分の供給がある場合に著しく促進する。

 しかしアルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の破壊は、破壊伸びの大きい、厚膜仕上げの塗装系を施すことにより抑制できることが分かっている。

(4)塩害

 コンクリートのひび割れから海塩粒子などの塩化物が浸透すると内部鉄筋の腐食を招き、構造物の耐久性を低下させる。これからも分かるように、コンクリートの骨材に海砂を使用することは極めて危険である。健全なコンクリート構造物では、内部は強アルカリ性(pH12以上)で、鉄筋は保護され腐食しにくい。しかし、コンクリート中に塩化物イオンが一定量以上存在すると、鉄筋表面の不動態皮膜は破壊され、鉄筋は腐食しやすくなる。塩分はコンクリート構造物の寿命を著しく損なうものである。

(5)凍害

 コンクリート中の水分の凍結融解による風化現象である。一般に、構造物の水にさらされる水面上や水際線の上部に発生しやすい。コンクリート中に含有する水分が凍結すると、その膨張圧でコンクリートにひび割れが発生し、表層がはく離する。

(6)特殊な環境下における劣化

 コンクリートは、有害化学物質にさらされることにより劣化する。大気汚染物質や化学物質は、酸として作用する場合、コンクリートの表面は徐々に浸食され、表面劣化や強度低下の原因となる。

 特にコンクリートのひび割れは、構造物の耐久性を低下させる主因である。ひび割れの原因はいろいろあって、現在でも完全な防止対策は取れない状況である。

 塗料を塗る工法による表面仕上げ技術は、直接、間接的にきわめて有効な対策となるもので、加えて美観に乏しいコンクリート構造物に多彩な美粧性を付与するなど、保護と美粧の両面に大きな役割を果たしている。

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