5.在来工法の住宅塗装

(1)外部の塗装

 塗装の対象とされる素地の種類は木部、金属、セメント系の3種である。金属面の塗装部位は、屋根、ひさし、ベランダ鉄部、面格子(木製の場合もある)で、屋根、ひさしがカラートタンに、ベランダ、面格子がアルミ建材の製品に置き換えられれば、塗装部位は大きく減少し、木部、モルタル面に限定される。

 木部の塗装は合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)、1液型ウレタンワニス塗り(1-UC)、2液型ウレタンワニス塗り(2-UC)、木部保護着色剤(WPステイン)塗りが主に用いられる。

 近年多用されているWPステイン塗りは、着色と同時に木部の防腐・防虫保護の役目を果たすものである。この塗料は作業性も容易で、維持・補修の塗替え塗装に適した塗料である。防水と水分排出の両機能を持つもので、木材用塗料として好ましい特性をもっている。

 3回塗りが標準の塗装仕様では、木材に十分な量の塗液が浸透するよう塗装しなければならない。素地の乾燥が必要であることはいうまでもない。色調はクリヤから濃色のものまで各種あるが、濃色のものほど耐久性がある。無色に近いクリヤ系のものは耐久性に乏しい。塗替えは4~5年前後で行えば理想的である。

 モルタル面のリシン吹付けでは、素地の乾燥を十分に行って、シーらー塗り→下吹き→上吹きの工程を確実に施工すれば、7~8年の耐久性は確実である。塗替えの最良期は6年前後とされている。作業の要点は吹付け前の養生(マスキング)である。和風住宅の塗装部位は、形状が変化に富み複雑なため、各部材の養生に相当な労力が必要となることを忘れてはならない。養生作業の見積もりが大切である。

 別荘・ログハウスなどは塗装面積も大きいが、塗装はWPステイン塗りが中心で、腐食防止に重点をおいた塗装が多用される。別荘地などは都会と異なり、朝夕は高湿度の環境となりやすい。木材の乾燥を考えた作業時間の管理が大切である。

 

(2)内部の塗装

 内部の塗装部位は、日本間、洋間、廊下(1,2階)、階段、台所、便所、玄関内外、その他である。

a.日本間の塗装

 日本間の塗装は本来、清めの洗いのみで、場合によってワックスによる磨きの仕上げが追加されるが、天井、柱、長押などに塗り仕上げが行われることは少ない。アクリル系クリヤラッカーのつや消し仕上げを、素木仕上げと称して塗装することも多いが、厚塗りは好まれない。

 日本間の仕上げは、素木仕上げが基本である。構成材料であるヒノキ、スギなどの高級材の固有の美しさ、質感を厚塗りで壊したくないからである。しかし、昨今では天井、柱、その他を濃褐色のステインでふき上げ、その上につやなしクリヤラッカー塗り、つやなしワニス塗りで仕上げる古色仕上げが行われることも多い。

 この場合、一般的に壁面は左官工事の漆喰仕上げである。柱と壁との対比を強調した仕上げで、意匠効果も優れている。床の間では漆塗り、又は漆塗り様の塗装が天板、地板に行われる。

 階段、廊下はウレタン系の透明仕上げが行われるが、塗料には無黄変タイプの2液型ポリウレタンワニスを用い、最後に塗膜の研磨による磨き仕上げを行う。磨き仕上げは、いわゆる塗りっぱなし仕上げのてりを取った上品な仕上げを目的として行うものである。

b.洋間の塗装

 塗装の部位に応じて、透明、不透明の塗装がおのおの施工される。つくり付け家具や入口扉などの素地は、チーク、ケヤキ、タモなどの高級の突き板面で、つやを調整して透明仕上げを行う。

 各種塗料の塗装仕様は、JASS 18の「木質系素地面の塗装」を参照すればよい。不透明塗装は一般に、合成樹脂ペイント塗りが用いられるが、高級仕上げには、フタル酸樹脂、ラッカーエナメル仕上げが適用される。塗付けは、はけ塗りよりも吹付け仕上げが一般的である。高級仕上げでは、標準的なものより、一段と質感に優れた美しさを求められる。塗り工程で下塗りから中塗りまでの下地層形成の工程がポイントで、研磨作業を含む手数のかかる仕事である。

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