塗料の品種、塗装系と塗装方法の選定のためには、まず塗装の設計を行わなければならない。設計は、以下に述べる各項目に検討を加えることによって行うことができる。
①構造物の種類、配置の条件
②被塗物の表面状態とケレンの条件
③耐久性、美装性、特殊機能性などに求められる条件
④経費、工期などの経済的条件
塗装系の選択
塗料の種類によって適応する能力に限界があるため、要求されるグレードに応じた塗料の選定を行うようにする。例えば、工場地帯の環境で耐薬品性の塗装が必要な場合、比較的環境が良好な部位や場所は、合成樹脂調合ペイントや自然環境に配慮した水性系反応硬化形合成樹脂塗料塗りが適用され、悪環境の鋼材には、2液形エポキシ樹脂エナメル塗りが適当である。また耐候性、美装性を必要とするものは、2液形ポリウレタンエナメル塗りが用いられる。
2液型エポキシ、ポリウレタン、ふっ素樹脂などの高性能塗料は、油性系塗料、フタル酸樹脂系や塩化ビニル系に比べて耐久性・防せい性に優れている。しかし、高性能塗料は塗装可能な環境条件(温度・湿度の許容範囲)が狭く、さびや油分のわずかな残存(素地調整の不備)によっても期待する効果を発揮しないことが多い。
塗装条件や経費に制約がある場合、高性能塗料を用いることよりも合成樹脂調合ペイント塗りが行われることが多い。この塗料は油の酸化重合によって塗膜を形成するため、乾燥が遅いという欠点があるが、素地によくぬれ、塗り重ね欠陥も生じない、いわゆる幅のある塗料として使用されている。高性能塗料の採用が必ずしもそのまま耐久性向上へと結び付かない難しさが、現場塗装にはある。
鋼構造物の塗装に適用できる金属素地面用の塗装種別(上塗り塗料の名前を表したもので、標準となる塗装工程が規定されている)がある。
また、鋼構造物の代表的な橋りょうは、橋の構造の違いから、ニールセン橋、桁橋、トラス橋、ラーメン橋、アーチ橋、斜張橋、吊橋とあり、橋の種類によって部位の呼び方が異なる。橋りょうの塗装系は、足場仮設など工事費が高くなることから常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りを選定することが多い。
このほか、最近では弱溶剤希釈形のアクリル樹脂系非水分散形塗料が、鉄部や亜鉛引鋼板の現場塗装に使用されている。この塗料は、エマルション塗料と同様の分散系で、石油のような弱溶剤中に皮膜主成分のアクリル樹脂がポリマー粒子として分散しており、ポリマー粒子の融着で塗膜となる。水性エマルション塗料より乾燥時間はやや短く、油性塗料に比べると明らかに速乾性がある。アクリル樹脂の特徴である耐水性・耐アルカリ性・耐候性に優れていて、鉄部とコンクリート面が併設する部位の塗装に有用である。さらに塗料用シンナーで希釈できるため、下塗りの塗膜を侵したりすることなく、適用範囲が広い。秋に施工する場合は、低温で高湿度になるため結露しやすい。油性塗料のようにゆっくり乾燥すると、塗膜中に水分が入り込み、つけ引きや白化を引き起こす。しかし非水分散形塗料は、このような欠陥を生じないので、屋外用として利用度が高い。