2.塗料の仕組み

 塗料は流動的、固化するように設計されています。塗料には顔料(色を付与する固体粒子)を含まない透明塗料(ワニス・クリヤ)と、顔料が入った有色塗料(エナメル)があり、塗料の約90%はエナメルとして用いられている。

 さらに、塗料はその形態によって、分散形及び紛体に大別できる。

(1)溶液形

 樹脂類が溶媒中に溶解している塗料を総称して溶液形と呼ぶ。有機溶剤可溶タイプと水系溶媒中でポリマーがイオンとなって溶けている水溶性タイプ、ポリマーに比べて分子量の小さいプレポリマーやオリゴマーがモノマー(単量体)に溶けており、すべての成分が化学反応して橋かけ塗膜を形成する無溶剤タイプに分類することができる。この橋かけ塗膜を形成する無溶剤塗料には、不飽和ポリエステル樹脂や紫外線、電子線硬化塗料が該当する。

(2)分散形

 塗料は、エマルション重合でポリマーとなるエマルション形と、脂肪族炭化水素系溶剤中にポリマー粒子が分散している非水分散形に大別できる。いずれもポリマーが粒子として溶媒中に分散しているから、ポリマーの分子量がどんなに大きくても低粘度で、塗装時の固形分を高めることができる。通常は塗装しやすいように増粘剤が添加されている。

 エマルション塗料は、水に溶けないポリマー粒子が界面活性剤で覆われている水中油滴形になっており、牛乳・マヨネーズも同様である。

 非水分散とは、Non Aqueous Dispersion(NAD)を訳したものである。大気汚染を防ぐ見地から、芳香族炭化水素系溶剤の排出を抑えるために開発された塗料で、非水分散系塗料と呼ばれる。ポリマー粒子の外側にあるヒゲの部分が溶媒である脂肪族炭化水素になじむ界面活性剤の役割を果たし、分散相を安定に保っている。塗料シンナーで希釈することが可能で、弱溶剤希釈形塗料とも呼ばれる。

 分散形塗料の塗膜形成は、粒子同士の融着による。小さい粒子が接近すると、毛細管の作用で粒子を引き寄せる力が働き、2個の粒子が1個の粒子になるようにして、次々に融合を繰り返しながら造膜していく。

 塗料状態ではポリマー粒子の大きさが可視光の波長に比べて大きいので白く見えるが、塗膜になると連続膜になり、もはや光を散乱することなく透明になる。

(3)紛体、ホットメルト

 粉体塗料は有機溶剤や水を使用しない固形分100%の粉体状塗料で、静電吹付けまたは流動浸せき法により被塗物に塗装し、それを焼き付けることにより流動状態(固形から液体状態にする)を経て、連続塗膜を形成させる。粉体塗料の約70%は熱硬化性のエポキシ樹脂系である。

 エポキシ樹脂の硬化剤である酸無水物は、あらかじめ顔料と同様にエポキシ樹脂中に練入されており、粉体が溶融流動してから反応するように設計されている。

 一方、加熱により流動するホットメルト形の無溶剤塗料がある。道路中央の白、黄緑あるいは歩道を表す路面標示用塗料(トラフィックペイント)や段ボールのホットメルト接着剤はこのタイプに分類される。

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