塗装によって、保護・美観の目的が達成されるが、そこには、当然、塗装経費と耐久性の要求限度があり、これを無視することはできない。
今日では、外装仕上げは高度の耐久性をもたなければならない、という考え方が定着しているが、予算及び工期の不足が理由となり、それに十分こたえられないこともある。
現場塗装では、塗装対象物の種類も多く、素材はさらに多様化する傾向にあるが、基本的には、鉄部、木質系、セメント系(せっこうボード含む)に大別できる。それぞれの素材に応じて素地調整、下地調整、塗り仕上げがなされる。社団法人日本建築学会が定めた『建築工事標準仕様書・同解説18 塗装工事』(JASS 18)には塗装工事の標準仕様が示されている。
塗装設計を行うためには、必要な情報を収集しておかなければならない。必要な情報を整理すると、次に示す七つの要因になる。
①被塗物の種類と性質・構造・形状(木材面・金属面・無機質面・その他)
②被塗物の置かれている条件(設置の位置・状態・環境・気象条件)
③被塗物の表面の状態
④使用する塗料の種類・性質・塗装条件
⑤素地調整作業に関する条件
⑥塗装工事費及び工期
⑦要求される塗装効果の耐久性
これらの要因が相互に関係してくるので塗装設計は複雑になるが、重要な点は、上記要因のうち⑥と⑦の関係をしっかり体得しておくことである。無駄をなくす合理的な考え方が特に重要で、要求されている塗装効果とは何かを明らかにし、最小限の経費で施工することが大切である。例えば、土中に埋め込む鋼管を塗装する場合、防食が主目的になるため、付着性と耐水性のよいエポキシ樹脂系の塗料を選択すればよく、美観にこだわる必要なない。