2. 塗替え塗装の素地調整

 素地とは初めて塗料を塗る面のことで、「生地」(きじ)ともいう。素地調整とは、そのような面を、塗料を塗るのに適した状態にする作業のことである。

 塗替え塗装の場合のように、すでに古い塗料が塗られている面は「下地」と呼び、このような面に対しての作業は、本来は「下地ごしらえ」、又は「下地調整」と呼ぶのが正しい。しかし、現在では一般にこのような場合でも、素地調整とか下地ごしらえと呼んでいるので、ここでも通例にならって、「素地調整」と呼ぶことにする。

 

2-1 旧塗膜の処理

 塗替えを行う場合の旧塗膜の処置は非常に重要であり、塗膜の種類、劣化の程度によって処置方法は様々である。

基本操作 方式 工具 処理機構 特徴
①削る 電動式 ディスクサンダー 電動、エアモーター等により回転させ、削り取る。研磨材料は各種高硬度物質による。 外壁の場合も鉄面の場合も広く用いられている。作業能力は有効とはいえない。第2種ケレンには欠かせない方法である。
手動式 スクレーパー 胴の先を曲げ、両端に焼を入れた刃物で局部的な除去に適する。 局部的なケレンに適用する。特に溝などに有効である。
ワイヤーブラシ
(真ちゅうブラシ)
スチール、真ちゅうなどのワイヤーブラシでこすりながら削る。 この方法では、塗膜を除去することは不可能であるが、汚れ、付着物の除去、さび落としなどに用いられる。
皮すき 幅広い刃物で削りながら除去する。 はがれの周囲、割れの周囲などを局部的にはがすときに用いる。
研磨布(紙) 研磨布(紙)削る。 手動であるため、塗膜を除去することは困難である。
②ぶつける        ブラスト方式 サンドブラスト 珪砂などを高圧空気で塗膜表面にぶつけて除去する。 第1種ケレンの代表。ただし、現場での塗替えには不適用。飛散する砂の処理にも問題がある。除去能力はすぐれている。
ショットブラスト 金属製の丸球を用い、高圧空気でぶつけて除去する。 同上。ただし鉄面の場合に使用される。
加圧水方式 ウォーターブラスト 高圧水に砂などを混ぜ、ぶつけて除去する。 サンドブラスト同様、除去能力はすぐれている。ダストを処理するには扱いやすいが、騒音と水の処理が問題。吹付けタイルの除去に最適。
高圧洗浄法 エアレス方式で加圧した水をぶつけて除去する。(100~150kgf/) 汚れた付着物除去に効果あり。ぜい弱層の除去も同時にできる。
超高圧洗浄法 超高圧水をぶつけて除去する。(1500kgf/) エポキシの塗膜でも除去できるが、装置が大きく非常に高価である。
たがね方式  たがね 鉄製の棒を出し入れの操作でぶつけて除去する。電動力式とエアー動力式とがある。 塗膜をたたいて浮かせる効果は大きいと同時に除去能力もある。特に入り隅とボルトなどの塗膜除去に有効である。エアー動力式は小型で使いやすい。
ブラシ 各種のブラシを電動で回転させながら、ぶつけて除去する。 この種のブラシは各種開発され、ホイールペーパー、遊星カッター、パイプブラシなどがある。除去効果は大きい。
ハンマー方式 ハンマー ハンマーでたたき、塗膜を浮かせ除去する。他の方法と併用する場合が多い。 たたいて浮かせる方法。他のケレン工具と併用して用いる。
③溶解・膨潤・軟化させる 溶剤方式 剥離剤 溶解力の強い溶剤で塗膜を溶解・膨潤・軟化させ、皮すきなどで除去する。 剥離材は蒸発の速度を抑えるために、パラフィンが多く含まれているものもある。除去能力は大きいが、残滓の処理、養生などが問題である。
加熱方式 電熱ランプ石油熱風ファン 高圧によって有機質塗膜を軟化・剥離させる。熱が強いと焼くことになる。 500~800℃ぐらいの熱を出すランプを塗膜に近づけると、次第に軟化・剥離してくる。皮すきなどで簡単にとれる。除去能力は小さい。温度を低くした装置もある。
④焼く 火焔方式 トーチランプ 火焔によって有機質塗膜を炭化させて除去する。 焼きむき方法の代表。
火災の危険があるなど取扱いが困難である。木部には不向きであるが、除去能力は大きい。

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