4.関連法規

 塗料には引火爆発などの危険性と有害性があり、これらを予防するためいろいろの法規が定められています。これらの法規は危険性・有害性を防止するための最低基準であり、これを守ることによって災害が必ず防止できるものではないが、危険物・有害物を扱う者はこれを遵守することによって自らの生命を守り、環境及び社会に対して被害を及ぼさないようにする義務があります。

(1)消防法(昭和23年法律186号及びその後の改正)

 消防の働きについて定めた基本法です。火災の予防・警戒・鎮圧及び火災・地震等の被害軽減のための消防活動について、防火・消火のために必要な施設の基準を定めるほか、救急業務についても規定しています。細部については政令・省令・規則などで定められています。

 消防法では、危険物をその性質によって6種類に類別しています。

 第一~六類の危険物のほかに指定可燃物の規定があり、綿花、わら、紙くず、石灰、可燃物の個体・液体などが指定されています。

 各類別はさらに細かく品名に分類されていて、取扱や貯蔵についての規制が異なります。また、品目別に指定数量が定められていて、指定数量を超える量の危険物は認可された製造所・貯蔵所・取扱所以外で取り扱ったり貯蔵したりすることが禁止されています。指定数量以外の危険物の取扱いに際しては、危険物取扱者の免許を持つ者の立ち合いが必要です。

 塗料は、水性塗料などの非危険物を除き、ほとんどが第四類に属する。通常の溶剤形塗料は、引火点によって第四類の第一、第二、第三石油類に区分される。ただし、可燃性の溶剤量が40%以下の塗料については、政令で指定可燃物とされているものがあり、油性塗料、さび止め塗料、溶剤量の少ないアルキド樹脂塗料などがこれに該当します。アルミニウム粉、亜鉛末などの金属粉や粘度の高いパテ類は第二類、不飽和ポリエステル塗料の硬化剤(過酸化物)は大五類である。

 水性塗料のうち、引火点を持たないものは非危険物であるが、引火点がある場合には第一~第三石油類の中の水溶性液体または指定可燃物(液体)となる。塗料の運搬も消防法の規制をうけるが、航空機、船舶、鉄道による危険物の運搬については、消防法ではなく航空機輸送基準、危険物船舶運送及び貯蔵規制、鉄道営業法などの法律で規制されている。

(2)労働安全衛生法

 労働安全衛生法は昭和47年法律第57号として制定され、その後改正が行われている。労安法と略称されている。労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化、自主的活動の促進など総合的・計画的な対策を講ずることにより、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境を形成することを目的としている。この法律では安全衛生に関する基本的な原則を定めているだけで、具体的な内容は労働安全衛生法施行令と、労働安全衛生規則などの多数の省令によって定められている。

 労働安全衛生規則は、労働安全衛生法による法律制を具体化するために設けられた省令のうちの基本的なもので、約700条にわたって具体的基準を示している。このほかの省令のうちで塗料に関係があるものには、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、特定化学物質等障害予防規則(略称、特化則)、粉じん障害防止規則などがある。

 有機溶剤中毒予防規則では、第1種7品目、第2種40品目、第3種7品目の有機溶剤が特定されている。第1種は、塩素化合物などの最も有害性が高い溶剤であるが、現在では塗料の成分として使用されているものは含まれていない。第2種は単体の有機溶剤で塗料に使用されている溶剤は、第3種以外のものはほとんどこれに該当すると考えてよい。第3種は炭化水素の混合物が主体で、ソルベントナフサ、テレビン油、ミネラルスピリットが含まれている。有機溶剤業務として10種の業務が指定されているが、有機溶剤を用いている塗料の製造、塗装、乾燥、洗浄、試験、研究などの業務はすべて含まれる。少量使用の場合の例外規定はあるが、有機溶剤業務では有機溶剤発生源の密封、局所排気装置の設置、保護具の着用、注意書きの掲示などが義務づけられている。事業者は有機溶剤業務のために技能講習を修了した有機溶剤作業主任者を選任して管理にあたらせなければならない。また、作業環境の有機溶剤の濃度を定期的に測定し記録すること、従業者に定期的な健康診断を受けさせることが定められている。

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