1-2.色の働きかけ

 色は人の心又は目に働きかける力を持っています。

(1)色と感情

 色には二つの役割があります。一つは記号的役割(機能色)であり、一つは精神的役割(情緒色)です。

 記号的役割とは、〇記号性 〇視認性 〇サイン性 〇記憶性であり、記号的役割の代表が交通標識や安全色で、人の生活の約束事として利用され、一目で認識できるようになっています。

 心理的役割は〇完成 〇快適性 〇イメージ 〇審美性 などであり、例えば暗くなりがちな工場環境を明るくしたり、適度な緊張感や落ち着き感を演出したり、病院のように気分が明るくリフレッシュできる色を採り入れたりして、快適な作業環境や住空間を整えたりすることです。

(2)寒色および暖色

 赤・橙・黄色の色は温かく感じる色であり、青・赤紫の色は寒く冷たい感じをあたえます。

 前者が暖色であり、後者が寒色になります。

 建物の用途や住む人の年齢層などを加味して使い分けます。

(3)膨張色および収縮色

 同じ寸法に塗装した色でも、大きく・広く見せる色と、小さく・狭く見せる色があります。大きく・広く見せる色が膨張色で、小さく・狭く見せる色が収縮色です。

 膨張色は一般に明るく、あざやかな色であり前進職ともいいます。

 収縮色は暗く、鈍い色であり、後退色ともいいます。

 これら色の特徴を上手に使うことで、室内を広く見せたり、狭く見せたりすることができます。

(4)面積効果

 同じ彩度の色でも、面積が大きいとあざやかな方向に見え、面積が小さいとやや明るく見えます。

 このため、建物の外壁色を見本帳で決めた場合、実際に塗装した後で見ると、見本帳の色より明るくあざやかに見えることが多いです。

 これが面積効果です。

(5)明度対比、色相対比

 黒い紙の上にグレーの紙を置くと、グレーの色は実際のグレー色より白っぽく見えます。逆に白い紙の上にグレーを置くと、グレーの色は実際のグレー色より黒っぽく見えます。

 この現象が明度対比で、ベース色の明度の影響で、配色した色が明るく見えたり、暗く見えたりする現象です。

 色相対比は、赤と黄色の上に橙色を置くと、赤の上では黄味の強い橙色に見え、黄色の上に置いた橙色は赤みの強い橙色に見える現象です。

 色相対比はベースの色によって組み合わせた色が、逆の方向の色相に感じさせる現象です。

(6)色の軽重感

 色により、物が重く見えたり、軽く見えることがあります。

 生活に密着した自動車の色を例にとれば、同じ車種でも白い車体と黒い車体を比べると、白い車体は軽快で軽いイメージを与えますが、黒の車体は重量感があり重い感じを与えます。これは色が作り出す軽重感であり、実際の車体の重量は変わりません。

 建物の用途やイメージによって色を変えることで、重厚感を演出したり、軽快感を表現できます。

 これが色のもつ軽重感です。

(7)補色

 光が当って初めて色が誕生します。色は暗闇では見えません。

 りんごの赤や草木の緑も、太陽の光を受けて人間の目に色として見えます。

 太陽光線には色を見せる波長があります。「短波長」「中波長」「長波長」で、物体はこの波長のどれかに影響を受けて発色し、人間の目に、そのものの色として見せます。

 赤く見せるのは「長波長」の影響で、青緑は「短波長・中波長」の影響を受けます。

 黄色は「中波長・長波長」の影響を受け、青紫は「短波長」の影響を受けます。

 このように波長の影響を受ける色同士を「補色」といいます。

 補色は、2色を混ぜると無彩色になる特徴があります。

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