5. 乾燥方法に起因する欠陥

 塗装中及び塗装後の塗料が乾燥し、塗膜を形成するまでに生じる欠陥は、乾燥、硬化に対する塗装環境(温度、湿度、風など)の影響によることが非常に多いです。

 特に塗料の乾燥、硬化機構がそれぞれの種類によって異なるが、一般に、乾燥段階に起因する欠陥として、しわ、乾燥不良、つや引け、わき、ピンホール、やせ、後づけ、ひび割れなどがあげられ、いずれの欠陥を生じても塗装の目的を達することはできません。

 

(1)ピンホール、わき、あわ

 塗膜表面にできる小さな穴をピンホールといい、蜂の巣状に集中したクレータ状のふくれをわきといいます。また、空気を巻き込んだような小さなふくれを泡といいます。この現象が生じる原因をいくつか紹介します。

  ①塗装時の空気の巻き込みがあわとして残ったり、塗装後に素地の巣穴内の空気膨張による塗膜の押しあげが小さなふくれになります。この現象は、塗料の消泡性が低下していたり、塗料の乾燥が早すぎたりするとあわが残ることがあります。

  ②乾燥の早い塗料を厚塗りすると、塗膜中に溶剤が残った状態で表面のみ乾燥し、その後、塗膜が太陽光線などにより暖められると塗膜中に残っていた溶剤が塗膜を押しあげて蒸発します。このとき、塗膜に蜂の巣状のふくれを発生させてしまいます。(わき)

  ③木部塗装では、導管などの中にある空気が、塗料を塗ることによって密閉され、半硬化乾燥塗膜になったとき、空気が表面に押し出されピンホールになります。

 対策は一度に厚塗りしない、フィラーやパテ、シーラーを用いて素地調整を十分に行う、適正なシンナーを使用する、必要以上に撹拌しないなどの方法によって防止できます。


(2)乾燥不良

 塗装した塗料が、一定時間経過しても塗膜が硬化せず、やわらかい状態が継続してしまうことです。この現象を生ずる原因としては、塗料の乾燥、硬化機構によって種々ありますが、いくつか事例を紹介します。

  ①酸化重合形塗料は厚塗りすると、表面のみ空気中の酸素と反応して乾燥しますが、酸素の届きにくい内部は乾燥が極端に遅くなります。塗膜内部が膿んだ状態になってしまいます。対策は、酸化重合形塗料の厚塗りを避けることです。

  ②下地に油分やワックスなどが残っていると、塗装した塗膜に溶け込み、塗膜表面に浮き上がってくることで溶剤の揮発を抑え乾燥が遅れます。対策は、塗装前に油分やワックスを入念に除去することです。

  ③2液型エポキシ樹脂塗料は、塗料液と硬化剤の配合バランスが狂うと、乾燥しなかったり、乾燥しても塗膜表面に粘着が残ります。塗料液と硬化剤の混合比率を守ることが重要です。

  ④水性塗料は、湿度が高く、通風がないと水分が蒸発せずに乾燥が遅れます。対策は、換気するなど通風をよくすることです。いずれにしても、欠陥を未然に防ぐには、塗装における基準事項を忠実に守ることです。

 

(3)やせ

 塗装直後は仕上がっているように見えるが、塗膜が乾燥・硬化していくに従って、仕上りが悪くなる現象をやせといいます。

 この現象は、速乾性でうすめ液が多量に入る塗料で発生しやすいです。また、塗料中の樹脂分の多い塗料にもこの傾向が見られます。対策は、うすめ過ぎずに、塗り回数を守ることです。

 

(4)しわ

 乾燥が進むにつれ、塗膜表面にひだ状、ちりめん状のしわを生じる現象で、油を多く含む酸化重合形塗料に発生しやすいです。原因は、塗膜の表面乾燥しやすい塗料を1度に厚塗りした場合、塗膜表面が早く上乾きし、内部の乾燥が遅れることでしわへと進行します。また、下塗りが十分に乾燥していない上に塗り重ねたときなどに発生しやすいです。対策は、塗り重ね乾燥時間を守る、1度に厚塗りしないなどです。

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