塗装前の塗料に生じる欠陥で、塗料製造から流通段階で発生する欠陥です。
一般的には、沈殿、分離、皮張り、粘度変化、固化、ゲル化、ぶつ発生などがあります。
これらの現象は、それぞれの塗料における性質、組成によって生じ方が異なっていますが、こうした状態の塗料は使用できない場合があり、主に、塗料メーカーの塗料品質保証上の問題であることが多いです。
~代表的な塗料に起因する欠陥について~
(1)粘度変化
塗料が貯蔵中に樹脂自体、もしくは樹脂と活性な添加剤や顔料と反応して、時間の経過とともに塗料粘度が高くなったり低くなったりし、さらに進行してゲル化しこんにゃく状に塗料状態が変化してしまう現象があります。
(a)ゲル化及びケーキング(固化)
貯蔵中に塗料粘度が上昇し、攪拌してもうすめ液を加えても粘度が低下せずに、容器内でゼリー状に変化してしまう現象をゲル化といいます。ゲル化の原因は、樹脂の重合反応が進行したり、樹脂と顔料や添加剤の反応などによって生じることがあります。
また、現場で塗料に異種の塗料や異物を混入したりして起きることもあります。この現象が進行して塗料がケーキ状に固化することをケーキングといいます。
(2)皮張り
皮張りとは、貯蔵中の塗料容器の中で塗料表面に乾燥した皮を張る現象をいい、酸化重合形の塗料である油性ペイントや油ワニス、合成樹脂調合ペイントなどに発生しやすい欠陥です。
発生する原因は、塗料表面で酸素と反応し、表面に酸化重合が生じ乾燥して皮を張るもので、容器の密閉が不十分だったり、容器内に塗料が少量しか入っていなかったりした場合に発生しやすいです。
初期の皮張りであれば、丁寧に皮を除去すれば使用できます。
(3)沈殿
塗料の貯蔵中に密度(比重)の高い顔料が、塗料の粘度で支えることができない場合など、顔料が容器の底に沈降する現象です。
初期なら、攪拌すれば元に戻りますが、長い時間放置されると攪拌しても容易には戻りません。
一般に顔料含有量の多いつや無し塗料や、密度の重い顔料を含有するさび止め塗料に発生しやすいです。
沈殿を生じた塗料をそのまま使用すると、配合バランスが崩れた状態で、正常な塗膜に仕上がらないことが多いです。
十分に攪拌して元に戻ったように見えても、顔料が凝集(ぶつ状)していることもあるので注意が必要です。この場合は使用してはいけません。
(4)ぶつ
塗料中の顔料が凝集したり、樹脂などが反応してつぶ状の粗大粒子に成長する現象をぶつといいます。
塗装すると、塗膜表面に細かい砂が付着したような状態になり、光沢低下など仕上り不良となります、
着色顔料が凝集すると塗装した時に、塗面に糸を引いたような色の筋ができることもあります。
ぶつは、攪拌しても容易に均一になりませんし、うすめ液で溶解することもできません。このため程度の軽いぶつなら、塗料をろ過などの方法で除去して使用しなければなりません。
(5)色分かれ
容器を開缶したときに塗料中の顔料が分離して、塗料表面の色がまだらになったり、塗料表面と下層の色が違ったり、斑紋を生じる現象を色分かれといいます。
この現象は、顔料の分散不良や再凝集によって生じますが、塗料を攪拌することによって容易に均一になる場合と、均一にならない場合があります。
前者の場合は攪拌することで使用できますが、後者の場合は攪拌しても、塗装すると色むらを生じるため使用することができません。