(1) 新設塗装
被塗物の素材(下地)の不良によって起きる欠陥は、吸収性の大きい素材、水分含水率の高い素材、アルカリの強い素材、表面強度が低く脆い素材、さびの残存、付着物などが原因となって塗膜に欠陥が生じます。
例を挙げるとモルタルやコンクリートの養生が不十分で、アルカリが高く、含水率の多い面に塗装すると、変退色、エフロレッセンス、ふくれ、はがれなどの欠陥を生じることがあります。
防止方法は、塗装前にモルタル、コンクリートの含水率やアルカリ度(pH値)を測定して塗装可否を判断します。一般的には、アルカリ度(pH値)9以下、含水率8%以下で塗装することがよいでしょう。
また、内装用のケイ酸カルシウム板など比重が軽く脆い素材に、適正なシーラーを塗装しないと容易に剥離してしまいます。この場合は、ケイ酸カルシウム板の表層を固化する含浸タイプのシーラーがよいでしょう。
鉄面、亜鉛メッキ面などは、表面処理(素地調整)が不十分だと、早期発錆や付着不良から塗膜剥離の原因になります。防止方法は、鉄面は脱脂や入念なさび落としを、亜鉛メッキ面は化学処理や入念な素地調整を行い、亜鉛メッキに適した下塗りを塗装することが必要です。
(2) 塗替え塗装
塗替え塗装は、塗膜も被塗物も一定年数が経過しているので新設とは異なり、劣化部位や劣化程度が判定できる利点があります。
一般的には建物の規模に関係なく、塗り替える建物の下地診断を行い、事前に劣化部位などを把握してから適切な塗装仕様を設計することになります。
塗替え工事では躯体のひび割れや鉄筋の爆裂などの劣化も補修の対象になり、 十分に補修しないと建物の寿命に影響しますし、仕上り性も左右します。必ず適切な補修を行ってから塗装工事に入ります。
既存塗膜は付着力が重要で、引張試験器などによる付着強度測定によりケレンの程度や範囲を決めることになります。塗替え塗装仕様にもよるが、一般的には「0.5N/(5kg/f)以下」の塗膜はケレン対象になります。
付着力の低下した塗膜を残して塗装すると、塗膜剥離の原因になるので、十分な管理を行わなければなりません。