2-2. 塗膜の物理性能に関する試験

1.塗膜の概観:JIS K 5400-7-1

 乾燥し、仕上がった塗膜が正常な外観をしているかどうかを肉眼で調べるもので、塗装現場で容易にチェックできる試験で、本格工事に着手する前に、使用塗料の仕上がりを確認します。

 試験は、作業性試験や乾燥時間試験などを行った試験板を規定時間乾燥させてから塗膜表面を観察し、つや・むら・しわ・へこみ・はじき・つぶなどが無いかを検査する試験です。

 

2.鏡面光沢度:JIS K 5600-4-7

                  JIS K 5400-7-6

 一般につやと表現していますが、塗膜のつや(光沢)がどの程度あるのかを光沢度計を用いて測定します。

 鏡面光沢度は20°、60°、および80°で、基準値100の値が決められているが、通常は60°鏡面反射率で測定しています。

 測定値が100に近いほどつやが高くなります。

 

3.硬さ試験:JIS K 5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)

               JIS K 5400-8-4 鉛筆引っかき値

               JIS K 5600-5-5 引っかき硬度(荷重針法)

 塗膜の硬さを調べる試験で、それぞれの塗膜を規定時間乾燥させてから、硬度を試験します。

 試験方法には、「鉛筆法と荷重針法」があります。

 鉛筆法は、硬さ6B(柔らかい)~6H(硬い)までの14段階の鉛筆を用いて塗膜の硬さを測定します。

 測定装置で試験した時に、塗膜に傷をつけた鉛筆硬度が硬さになります。

 結果の表示は「2BとかH、4H」となります。

 荷重針法は、引っかき試験装置に試験板をセットし、針に一定荷重をかけて引っかきます。このとき、塗膜が規定された範囲まで貫通しているかを、適切な倍率で観察します。

 この倍率が結果になります。

 

4.耐屈曲性(円筒形マンドレル法):JIS K 5600-5-1

                                          JIS K 5400-8-1

 塗膜の柔軟性を表す性質に可とう性があります。金属などに塗装して折り曲げたときに、塗膜に可とう性がないとひび割れたり、はなはだしいときは剥離してしまいます。

 可とう性を調べる試験が耐屈曲性試験です。

 この試験は試験機に測定試験板を、塗膜を上にして置き180度折り曲げ、塗膜の割れ目や剥離を調べます。

 折り曲げる程度は、直径2~32mmまでのマンドレル(円筒)が12種類あり、このマンドレルの直径が小さいほど、その塗膜の耐屈曲性が優れています。

 

5.付着性:JIS K 5600-5-6(クロスカット法)

             JIS K 5400-8-5

 塗膜が被塗物に付着している強さの度合いを付着性といいます。付着性には素地や下地に対してと、下塗り、中塗り、上塗りの各塗膜層間の場合もあります。

 付着性は、塗膜の物理性能の中で最も重要な性能で、単に塗料の性質ばかりではなく、素地や下地の表面状態、塗膜条件、乾燥条件、塗装時の気象条件などの影響を受けます。

 クロスカット法(基盤目法)は、規定にある等間隔スペーサーを用いて、塗膜にカッターで素地まで切り込みを入れ、規定されたテープを強く貼り付け、手前60°で引き剥がし、塗膜のはがれ程度を試験結果の分類表で判定します。

 厚膜形の外装材などは、塗膜に鉄製のアタッチメントをエポキシ樹脂接着剤で接着し、規定時間乾燥後、引張試験機で測定する方法もあります。

 

6.耐おもり落下性:JIS K 5600-5-3

   耐衝撃性:JIS K 5400-8-3

 塗膜が物体の衝撃を受けて、変形による塗膜の割れ・はがれを生じない性質を耐おもり落下性(耐衝撃性)といいます。

 耐おもり落下性を調べる試験方法として代表的なものに、落球式とデュポン式があります。

 落球式は、規定された高さからおもり(鋼球)を落下させ、おもり先端の衝撃による塗膜の割れ、はがれが認められるかどうかを観察します。

 デュポン式は、デュポン式衝撃変形試験機を用いて、衝撃による変形で割れ、はがれが出来ないと判定します。

 

7.耐摩耗試験:JIS K 5600-5-8 , 5-9 , 5-10

   耐摩耗性:JIS K 5400-8-9

 耐摩耗性は、塗膜がこすられたり削られたりすることに耐える能力を測定する試験です。

 耐摩耗性試験には、研磨紙法(JIS K 5600-5-8)、摩耗輪法(JIS K 5600-5-9)、試験片往復法(JIS K 5600-5-10)の3種類があります。

 研磨紙法はテーバー形摩耗試験機を用い、回転軸に取り付けた規定の研磨紙によって乾燥塗膜を摩耗させて、その耐摩耗性を測定します。床用塗料などに用いられます。

 摩耗輪法もテーバー形摩耗試験機を用いますが、研磨紙ではなく摩耗輪によって乾燥塗膜を摩耗させて、その耐摩耗性を測定します。

 試験片往復法はスガ式摩耗試験機を用いて、静止状態にある回転輪に取り付けた研磨紙に対して、乾燥塗膜を摩耗させることによって、耐摩耗性を測定します。

 いずれも、結果は摩耗減量で表します。

 

8.耐洗浄性:JIS K 5600-5-11

               JIS K 5400-8-11

 耐摩耗試験は乾燥状態で試験するが、耐洗浄性は湿潤状態での耐摩耗性を測定します。

 湿潤摩耗試験装置を用い、規定された洗浄液で湿潤した塗膜を、不織プラスチック材料製の研磨パッドで規定回数往復させ、塗膜損失量を計算します。

 さらに、汚れ除去性を試験する洗浄性試験があります。この試験は、規定された汚染剤を塗付した試験板を湿潤摩耗試験し、汚染性が除去されて、かつ、湿潤摩耗性があるかどうかを調べます。

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