(1)はけ
はけは、流動性のある塗料を被塗物の表面に配り、平らに薄く塗り広げる工具である。ほかの付属工具がなくても、塗装ができる工具である。
a 毛の種類
はけに用いる毛は、次のような要素を満たすものがよい。
①塗料の含みがよい。
②塗料が流れ落ちない。
③はけ目が立ちにくい。
④弾力性がある。
毛の種類とその特徴は次のとおりである。
(a)ぶた毛
油性ワニス、油性ペイントなどに使われる。
(b)うま毛
塗料の含みがよく、腰が強く、油性ペイント、油性ワニスなどに使われる。
(c)ひつじ毛
毛に凹凸があって、塗料の含みがよく、主にラッカーばけ用に、また水性ペイント、のりばけ用に使われる。
(d)やぎ毛
毛質は軟らかく、ラッカー、水性ペイント、ラックニスばけ用に使われる。
(e)たぬき毛
毛先が軟らかく、弾力性があって腰が強く、素直で塗料の含みもよく、はけ用の毛としては最高級品である。主に筆用に使われる。
(f)人毛
毛質は固く、腰が強い。漆やカシュー塗料のはけ用である。
(g)その他
天然の毛に対して、合成繊維(ナイロン、酢酸繊維素など)のものがある。薬品塗付用に使われているが、近年建築塗装では多く使われるようになった。
b はけの種類
(a)形状によるはけの種類
①ずんどうばけ
油性ペイントなど、高粘度の塗料を広い面積に塗るのに使用する。
②すじかいばけ
隅やくぼんだ部分を塗るのに使用する。
③平ばけ
平らな面に粘度の低い塗料を塗るときに使用する。
④丸ばけ
すんどうばけと同じく、粘度の高い塗料を塗るのに使用する。
(b)塗装別によはけの種類
①油性ペイントばけ
塗料の粘度が高いものに使用し、毛質は弾力性に富む。一般にうま毛を使用し、はけの形状には、ずんどう、すじかいなどがある。
②油性ワニスばけ
油性ペイントばけよりも毛の植え込みが薄手につくられている。粘度が高い塗料を塗る関係で腰の強いものを使用する。毛質はうま毛、ぶた毛、ひつじ毛などを用い、中でもぶた毛がいちばんよく、塗りむらが生じにくい。
③ラッカーばけ
ラッカーは乾燥が早く、溶剤の蒸発に従って粘度が増してくる。塗り込みに当たっては、手早く塗付しなければならない。一般にこの種の塗料の用いられるはけは、毛質が軟らかく、適度の弾力性をもち、はけ先はやや長く、塗料の含みの良いことが要求される。ひつじ毛を使ったすじかいばけが多く用いられ、塗付面の大きさによって、毛幅の違ったものを選ぶ。
④セラックニスばけ
セラックニスは塗料の粘度が低く、乾燥が早い。塗膜にはけ目を生じやすいため、毛の軟らかいものがよい。一般にやぎ毛が用いられる。
⑤水性ばけ
水性ばけは、その名のとおり水を薄め液とする塗料の塗装に用いられる。主の壁面に塗布するときに使用される。塗料の含みがよく、はけ目の立ちにくい軟らかい毛質のものがよい。一般にひつじ毛が用いられる。
⑥その他
化学繊維ばけは、油性ペイント用として鉄骨塗装に適しているだけでなく、反応硬化形水性塗料用に多く使われるようなった。化学繊維からできており、動物の毛の代用である。
(2)へら
へらは、パテを素地面に平滑に塗り付けるために使用するほか、塗料を塗りつけたり、練ったりするために使用する。素地の形状や用途によって各種のへらがある。また、材質によって木べら、金べら、ゴムべらなどがある。
a 木べら
一般に使用するものは市販されているが、漆工用などには現在でも自作している。自作は、ヒノキのまさ目板(30)を丹波(塗師用の小刀、刃渡り300㎜程度)を使用して所定の寸法に削って作成する。しかし近年刃物を用いて作るこの作業は危険なため、各寸法に加工されたものを使用することが多い。
b 金へら
鋼製、ステンレス製で三角べら、柄付き金べらなどがあり、先端寸法も30,45,60,120,185,250㎜の各種がある。へら、の厚さにより腰の強いものと弱いものがあるが、一般に腰が強く弾力性があるので、パテの小分けや壁面へのパテ付けに使われる。
c ゴムべら
ゴムべらの材質は耐溶剤性の合成ゴムで、主として曲面のパテ付けに使われる。また、塗料缶から塗料をかき出すのにも用いる。
d その他
木べらの代用として、合成樹脂製のへらが使われるようになった。木べらと比べ、摩耗しにくい。
(3)ローラブラシ
ローラブラシは、ローラカバーとハンドルで構成されている。ローラカバーは円筒状のプラスチック強化紙管、プラスチック成形管、木管などのコアに化学繊維、天然繊維などの背にをパイル状にしたものを巻き付けたものである。
一般に建築、船舶、橋りょうなどの塗装に用いられ、ローラの寸法、形状、材質により、塗料の含み具合、塗り付け状態などが異なる。
(4)計測器具
塗装作業に使用する計測器具には、次に示すものがある。
a 温湿度計
(a)温度計
水銀、アルコール、熱電対、サーミスタ式などがある。
(b)湿度計
乾湿球温度計(抵抗式、静電容量式)などがある。
b 計量計
(a)容量計
メスシリンダー、目盛付きビーカー、ビュレット、ピペットなどがある。
(b)重量計
台ばかり、上皿天びん、電子天びんなどの種類がある。
近頃では、こうした温湿度計や計量計にデジタル式のものが普及しており、より使いやすくなっている。
(5)粘度計
塗料の粘度の工程は、直接塗装作業に影響する重要な要素であるため、塗料の調合にあたっては、必ず粘度計を使用する。
粘度計の種類には、回転粘度計、フローカップなどがある。一般には、カップ形(簡易粘度計)が比較的簡単に測定できるので広く利用されている。
(6)その他の測定器
その他の測定器には次のようなものがある。
①pH測定器、pHコンパレータ―
②木材含水率測定器
③モルタル水分計
④塗膜厚測定器
(7)その他の工具
a 塗装用小刀
塗装用小刀を一般に丹波といい、主として木べらを作る場合に使用する。これには、そで形とささ形の2種類がある。
b 塗膜はく離工具
塗膜のはく離用としてスクレーパーや皮すきがある。
c 定盤
定盤には箱定盤と手定盤があり、箱定盤は箱の中に塗料用工具や材料を保管でき、盤上で塗料を調合したり、練り合わせたりする。手定盤には羽子板の形状をしている木製の定盤がある。
d といし
といしには合成と天然がある。天然といしには、大村といし、上野といしなどがある。刃物の研ぎ、下地、塗膜の研ぎに使われる。主として大村といしは、油性下地または漆さびのから研ぎに、上野といしは、下地の荒地パテ、オイルパテ、漆さび研ぎに用いられる。
e 塗料用下げ缶
下げ缶には、亜鉛引き鉄板(ブリキ)、合成樹脂(ポリエチレン)、ホーロー製などがある。油性ペイント、エマルション系の下げ缶にはブリキ、ポリエチレン製が、ワニス塗り用にはホーロー製、ポリエチレン製の容器が用いられる。ローラ塗りには、ローラ皿、ローラバケットや自家製の容器が用いられる。
f 塗料ろ過用具
ろ過用具には、ふるい、ペイントストレーナー、茶こし、吉野紙などがある。
ふるいは黄銅、ステンレス製の網でできている。ふるいの目の粗さは、1インチ角にある目の数で表し、それをメッシュと呼んでいる。(1インチ=25.4㎜)
g 養生用機材
吹き付け塗りは、はけ塗りと違って塗装したい部分だけに塗装することはできない。そのため、塗料がついてはならないところを被覆し、塗料から保護する一連の作業を行う。これを養生するという。
養生用機材は被服に用いる紙、ポリエチレンフィルムなどと、それを張り付けるマスキングテープからなる。養生作業の合理化に、テープディスペンサーと呼ばれる養生用機器が使用されている。
養生作業は、仕上がり効果と作業の合理化に大きな影響を与える。