一般の仕上げとは別に、創意工夫の結果生まれた装飾的な仕上げ方法で、これを変り塗り(デコラティブペイント)と呼んでいます。ここえは変わり塗りの工法を紹介します。

1 布張り仕上げ

 布張り仕上げとは、布地を壁面に貼り付け、それに着色して布地が見えるようにした仕上げである。

 亀裂防止のために施す布張りとは異なる。

(1)使用材料

 丈夫で張りやすく、着色して仕上げ効果の上がるものほどよい。布張り工法に使用される布には次のようなものがある。

 ①寒冷紗

 ②かや地

 ③レース地

 ④ヘッシャクロス(粗い麻布地)

 ⑤オリエンタルクロス(紙繊維に和紙を裏打ちしてある)

 ⑥ヘンプクロス(麻地、洋服芯地)

 布地にはそのままのものと、あらかじめ布地を紙で裏打ちした物があるが、裏打ちした物は欠点もあるが、作業性は良い。

(2)布の張り方

 布の張り方には、突き付け張りと重ね張りがある。

 突き付け張りは、ヘキシャンクロスなどのような布地の厚いもので、接着剤の乾燥後も布地に収縮などの起こらない場合に行う。

 重ね張りは、寒冷紗などのような薄い布地で、乾燥するにつれて布地自体が収縮する可能性のあるものに適用する。

 (a)突き付け張りの方法

 突き付け張りは、接合部でできる限り布の織り目や糸口を揃えることに注意して、そのまま張り合わせていく工法が一般的である。

 (b)重ね張りの方法

 重ね張りとは、A布とB布のそれぞれの端をおおよそ10㎝ぐらい重ねて張り合わせ、その部分だけは、水張り、またはごくわずかの接着剤を混入した水で、かりに壁面に張り重ねておく。

 接着剤が乾燥して、それぞれの布の収縮が終わってから、水張りまたは薄糊で張った重ね合わせた部分を、定規を当てて大体中央部で切り放す。

 その後に、A及びBの各布地の水張り部分を接着剤で張ると、切断面が同一であるから、布地同士は自然で無理がなく、ぴたりと張り合わされることになる。

 寒冷紗などの特に収縮の大きい布地には、この方法で施工しなければ、接合部に収縮による隙間を生じる。

(3)吸込み止め

 布張り終了後は、着色仕上げをする前に布地の吸込み止めを塗る必要がある。

 吸込み止め用塗料として特に大切なことは、吸込みを止めるとともに、速やかに乾燥することが大切である。

 速乾性のものは、塗り継ぎむらが生じやすい。また、著しく乾燥の遅いものは、塗り付けたとき布目に溜まった塗料が下方部に流れて、最下部に多量に溜まることになるので注意する。

(4)着色の方法

 (a)着色塗料の濃度

 着色に使用する塗料は、あまり高粘度のものを使用すると、寒冷紗などは布目が浅くなって、仕上げ感の品位がなくなる。したがって、塗装粘度は布目の目立つ程度に調整する。

 (b)着色の修正

 着色終了後、仕上り程度を観察すると不備が見えることがある。その場合は筆や小刷毛で部分修正する。

 (c)着色方法

 拭き取り式か、たんぽ式で行われるが、一般的にはたんぽ式が広く用いられる。

 面積が広い場合は、使用した布目の粗さに合わせたローラー塗装が有効である。

2 壁紙張り塗装仕上げ

 塗装用の壁紙があり、この壁紙を貼り付けた後に合成樹脂エマルションペイントを塗装して仕上げる。

 塗装用壁紙には様々な意匠(模様)がある。

3 スチップル仕上げ

 当初は油性調合ペイント塗りのはけ目を消すために考えられた工法であったが、そのうちに天井や壁面のスチップル仕上げとして認知された。

 スチップル模様は小さな凹凸仕上げで、合成樹脂エマルションペイントを使用してスチップルローラーで仕上げる。

4 木目塗り仕上げ

 木目塗り仕上げには「たも」「欅」「杉」「楢」「マホガニー」などを描き出す手法がある。

 ここでは、「欅板目模様仕上げ」について紹介します。

(a)作業手順

 ①グレージングペイントの作成

 油絵の具の場合は亜麻仁油 1 : シンナー 1 : グレージングリキッド 1 の混合油(以下グレージングオイルという)を希釈剤としてブラウン系3色のグレージングペイント(半透明の塗料)を作る。

 ②地材へのアンダーコート塗り

 イラストボードに、サテン系ベージュ色のエマルション塗料を用いて均一に半つやで仕上げる。

 ③1~2時間乾燥させる。

 ④A色(B17-50L)の色を少し加えたグレージングオイル(ペイント)で、アンダーコートにほのかなブラウン色が着色する程度に、全面に塗り拡げる。

 ⑤板目の芯に近い部分に、C色(B15-40Hの赤味のあるブラウン)グレージングペイントで板目の芯部分を板目上に塗込みを行う

 ⑥グレージングペイントが乾燥する前に、フロッガー刷毛で塗面を上から下に軽く叩き塗りし、斑をぼかして木の繊維を演出する。

 ⑦A色の、半透明に濃度を変えたペイントで板目の木目柄を描き込む。欅独特な木目を調査し、その外側に重ねるようにB色(B15-30F)の濃いブラウン色のリキッド混入ペイントで板目を2重描きする。描いた後を堅い毛のはけで毛先を揺すりながらなぞる。2色が一部混合してもよい。

 ⑧バッシャーブラシを用いて板目芯より外側に下方から上方向へ一方方向でなぞる作業を繰り返して、色境をぼかすように仕上げる。

 ⑨地塗りと木目色の色差を和らげるために、木目色乾燥後ラックニスを塗り、さらにグレージングペイントを全面に塗り、斑を馴染ませる。バッシャーブラシの先端を押さえながら、5cm間隔前後で木の繊維表情を描く。この作業は、極端な色差を和らげるとともに、欅特有の木孔、冬目の年輪感を描き出す技法である。

 ⑩48時間乾燥させる。

 ⑪仕上げ

  〇漂白セラックニス 1回塗り

  〇ウレタンクリヤ 1回塗り

5 石目塗り仕上げ

 石目塗りの場合も下地作りや仕上げの方法は、基本的には木目塗りと同じである。 石目模様仕上げも、「御影石」「青大理石」「白大理石」などがある。ここでは、御影石仕上げを紹介する。

 ①地板 アンダーコート

イラストボードに用意した黒色エマルションペイントを全面に均一に塗装する。

 ②グレージングペイントの作成

A色:ペイント白1 対 亜麻仁油1 対 グレージングリキッド1

B色:ペイント黒1 対 亜麻仁油1 対 グレージングリキッド1

 ③下塗り

少量白の混ざったグレージングオイルを、黒色ベース塗りしたイラストボードに薄くしごくように塗装する。

 ④スポンジング調整

あらかじめシンナーで湿しておいた海綿(スポンジ)を堅く絞る。

 ⑤石目模様色付け

A色=5 対 B色=1の割合でグレージングペイントを混ざらないように注意しながら海綿に含ませ、上端から下端へと手首を交差しながらスポンジングを繰り返し、イラストボード全面に均一に白柄、黒柄を散りばめる(この時に、多く白色・黒色を付けすぎないようにする)。

 ⑥色境ぼかし

バッシャーブラシを使って、スポンジングの上を上下左右に往復ぼかし操作を加えながら色境を和らげる。

 ⑦バランス調整

配りムラ、斑のバランスを見極め、不足の場合は、5~6の作業を繰り返す。

 ⑧48時間乾燥する。

 ⑨仕上げ

〇漂白セラックニス 1回塗り

〇ウレタンクリヤ 1回塗り

6 鉄骨工事の塗装

(1)工場塗装の要点

 新築工事の際の鉄骨は、加工場で素地調整と第一回目のさび止め塗装が施される。この塗装を「工場塗装」という。工場塗装では、現場での組立て作業に支障がないように、特別な指示がない限り、下記の部分は塗装しない。

 ①コンクリートに接触または埋め込まれる箇所

 ②組み立てにより肌合わせになる箇所

 ③高張力ボルト摩擦接合部の摩擦面

 ④密着または回転のため、削り仕上げを施した箇所

 ⑤閉鎖形断面を持つ部材の密閉される内面

(2)現場塗装の要点

 鉄骨が現場に搬入され、組立工事が終了すると現場塗装に着手するが、次の処置を行う。

 ①現場溶接で生じたスラグは塗膜劣化の原因になるので、ワイヤーブラシなどのケレン工具を用いて入念に除去する。

 ②現場打ちしたりリベット周辺や溶接による塗膜の焼損部は、研磨布、ワイヤーブラシなどでよく取り除く。

 その後、工場塗装で未塗装の部分や建て方までに損傷した箇所などを、同種のさび止め塗料で補修塗りする。この補修塗りと次の現場塗装の第2回目のさび止め塗装を行う。次いで、中塗り、上塗りなど必要な塗装を行う。塗装ははけ塗り、ローラー塗り、エアレススプレー塗りなどで行われる。

(3)塗装上の注意事項

 ①構造物はアングルその他の細物が多いので、膜厚が均一に付くように注意して塗装する。特に細物塗装では、塗装によるかすれに注意する。

 ②構造材の下端、リベットの頭部とその周辺、部材と部材の接合部の隙間、継ぎ板やかい板をはさんだアングル二丁合わせの隙間などは丁寧に塗装する。

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