汎用タイプの空気圧縮機は、ピストンの上下運動によって空気を圧縮している。騒音や振動が大きいため、ピストンの代わりにスクリュー回転によって圧縮空気をつくり出すスクリュー形空気圧縮機や、スクロール式などもある。
外気を取り入れて、空気タンクに圧縮貯蔵する。ピストン式では、空気を次のように圧縮する。
①ピストンが下死点に向かうと、吸込み弁が開き、空気が入る。
②上死点に進むと、吸込み弁が閉じ、空気を圧縮する。
③排出口の圧縮以上になると、排出弁が開き始め、圧縮された空気は空気タンクに送られる。
④次に、下死点に向かう位置になると、排出弁が閉じ、吸込み弁が開き始める。
⑤①~④の工程を繰り返す。
(1)構造
圧縮空気を作る本体、圧縮空気をためる空気タンク、圧縮空気中の油や水分を除去して圧力を一定とする空気清浄圧力調整器、本体を動かす電動機、圧力の範囲を一定にする制御装置などで構成されている。
a 本体
本体はピストンの径と行程により大きさが決まり、排出圧力と回転数により所要動力が定められている。また、本体には、クランク軸、連接棒、ピストン、シリンダ、シリンダヘッド、吸・排気弁などがあり、内燃機関と類似している。
b 空気タンク
ピストンの往復運動によって圧縮された空気は、温度が高く圧力の工程が著しいため、これを直接塗装に使用することはできない。いったん空気タンクに貯蔵して冷却したものを使用する。また空気タンクは空気の脈動防止にも役立っている。
c 空気清浄圧力調整器(エアトランスホーマー)
圧縮機から空気タンクに送られる圧縮空気中には、微量の油分やごみ、ほこりなどが含まれている。
排気弁通過後の圧縮空気は100~150℃の高温になり、空気タンクにたまった時でも、外気温以上の温度にある。圧縮を中止して放置すると、圧縮空気が冷える。その結果、圧縮空気中の水蒸気がタンク壁面で結露し、液体(水)になり、タンクの下部にたまる。タンクについているドレンバルブを開けると、水が出てくる。水分を含んだ空気を使用すると、塗装面にはじきやピンホールなどの欠陥が発生しやすい。
空気清浄圧力調整器の働きは、次の二つである。
①圧縮空気中の水分、油分、ごみなどの除去
②圧力の調整
d 電動機
本体の大きさにより、0.4~2.2kWの範囲の電動機が多く使用される。
また、最高使用圧力と回転数により、電動機の馬力の1.2倍以上の内燃機関を取り付ける必要がある。
e 自動アンローダ
自動運転制御の一方法で、空気圧力が決められた圧力になると吸気弁が開放され、無負荷運転とするものである。
このほか、自動的に運転を停止する圧力スイッチ制御もよく使われるが、反応圧力範囲が0.15~0.2MPaであるため、空気タンクが大きく、電動機の出力も大きくないと効果が少ないので、0.7kW以下ではあまり用いられない。空気使用料に応じて運転状態を自動制御する装置などもある。
(2)操作
操作に当たっては、次の点に注意しなければならない。
①オイルが規定量入っているかどうかを調べ、不足していれば補充する。
②アンローダ又はリフターを働かせて、電動機の始動動力を軽減させ、スイッチを入れる。リフターは、つまみを下げて無負荷状態にする。また、アンローダは、ハンドルを右に回し、無負荷状態にする。
③圧縮機の回転方向が矢印とあっているかを確認し、逆の場合は配線を変える。単層モーターは、モーター銘板を見て変更し、反発モーターはブラシの向きを変更する。三相モーターは、3本線のうち2本を入れ替える。
④圧縮機が回転を始めたら、負荷状態にして戻して圧縮を行う。
⑤停止するときも同じように無負荷にしてからスイッチを切る。
(3)空気圧縮機の保守
a 毎日点検する項目
①潤滑油の汚れ、量
②ドレンの排出
③圧縮開閉器、アンローダ、安全弁などの装置
④異常音、振動
b 毎月点検する項目
①吸込みろ過器のフィルター
②Vベルトのいたみ、緩み
③各締め付け部
その他、3カ月から6カ月ごとに潤滑油の交換を行うことが望ましい。また、空気タンクの損傷の有無、ふたの締め付けボルトの摩耗の有無、管及び弁の損傷や摩耗の点検は毎年行うことが法令で義務付けられている。