エアスプレー装置は、基本的にスプレーガン、塗料容器、エアホース、空気清浄圧力調整器(エアトランスホーマー)、空気圧縮機(エアコンプレッサー)からなる。
一方、エアレススプレーの装置は、ガン、塗料ホース、加圧用ポンプ(高圧塗料ポンプ)からなる。
塗料に高い圧力を加えるポンプには、プランジャーとダイアフラムポンプの2種類が使用されている。プランジャーポンプを作動させるにはコンプレッサーが必要であるが、ダイアフラムポンプは電動モーターで作動させるため、装置がコンパクトになる。建設塗装現場では、ダイアフラム式の装置が多く用いられている。
(1)エアスプレー
モルタルガンやリシンガンはエアスプレーに属するが、一般に用いるスプレーガンとは外観も大いに異なっている。
エアスプレーにおいて液体が霧になるのは、霧吹きと同じ原理である。すなわち、液体と空気を混合させると霧になる。液体に対する空気量が多くなるほど、細かな霧の微粒子が得られる。塗料を微粒化するほど、塗装面はより鏡のように平滑に仕上がる。
塗料と空気をガンの内部で混合する方式(内部混合式ガン)よりも外部で混合する方式(外部混合式)のほうが、空気/塗料の混合比を大きくすることができ、より小さな微粒子を得ることができる。
a 内部混合式
モルタルガン、タイルガンは内部混合式であり、空気は塗料の微粒子化に機能する必要がなく、塗料を被塗物に運搬する役目さえすればよい。それゆえ、外部混合式ガンによるエアスプレーとは塗り肌が本質的に異なる。壁面に模様を付けるには、大きな粒子の状態で塗着させればよく、用いる塗料もペースト状の高粘度のものである。これらのガンは特殊ガンとして分類されることがおおい。
一般に空気使用量は、30~150/分で、エアコンプレッサーは1馬力あれば使用できる。ガンの先端に付けるノズルは、口径の大きさによって数種類用意されており、吹付け材の種類や模様によって使い分けられる。口径4~8㎜くらいまでがよく用いられる。
b 外部混合式
一般にいうエアスプレーガンとは外部混合式ガンである。ガンには塗料と空気の取入口が別々に付いており、それぞれ塗料ニップル、空気ニップルと呼ばれている。さらに、入ってきた圧縮空気を流したりと止めたりする空気弁と、塗料をON、OFFするニードル弁、塗料を霧化する空気キャップから成り立っている。
スプレー時の空気量を調整したいときには、空気ニップルの横にあるねじを回せばよい。通常は全開状態になっており、空気弁のところまで常に空気がきている。空気弁の開閉は引き金の作動により行う。引き金を引くと、霧を作る空気が流れ込む。さらに引き金を引くと塗料のON、OFFを担当するニードル弁が後方に押し下げられ、塗料ノズルより塗料が噴出する。
塗料噴出量調節装置は、このニードル弁の押下げ寸法を調節することによって、噴出量を加減する。時計方向に回して閉め込むと、引き金を引いても空気しか出てこない。引き金の作動により、必ず空気の次に塗料が出てくる機構になっている。これは、塗料が先に出てしまうと、霧化されない塗料が被塗物についてしまい、塗面不良になるのを防ぐためである。
空気キャップによい吹付けパターンを得るための工夫がされており、塗料は空気キャップの外観で空気と混合して霧になる。
空気キャップには中心空気穴、側面空気穴(角穴)及び補助空気穴がる。中心空気穴は主空気穴であり、塗料を吸引したり、霧化したり、また被塗物まで運ぶ働きをする。側面空気穴は、この穴から噴出する圧縮空気で、スプレーパターンを丸形からだ円に変形させる。側面空気を直接、中心空気及び塗料に当てると、パターンはだ円になりきらなかったり、中央部が割れたりして不定形になる。補助空気穴から噴出する空気がパターン形状を安定化させ、さらに霧化粒子の大きさを均一化させる役目をする。
スプレーパターン調節ねじの回転によって、側面空気穴から噴出する空気量が変わる。閉め込むと側面空気は出なくなるのでパターンが丸形になるが、全開にすると多量の空気が出るので大きなだ円形のパターンが形成される。
(2)低圧スプレーガン
塗料の付着量(塗着率)を増大させることによって溶剤の揮発量を削減したガンで、地球環境を守るために考案された塗装機器の一つである。
ガン入り口圧力は、従来タイプと同じく約0.4MPa(4kgf/)であるが、空気キャップには多数の穴があけられている。そのため、空気キャップ内の霧化圧力は低くなる。一般に霧化圧力を低くすると霧化粒子が大きくなる傾向にあるが、これは空気を多量に流すことによって、霧化粒子を大きくしない方式のガンである。被塗物との衝突時に及ぼす霧化粒子の圧力は低くなるので、跳返りが減少し塗着率が高まる。最近、内部混合と外部混合との2段階霧化方式を採用して、空気量を減らす方式のガンも市販されている。
(3)エアレススプレー
エアスプレーが空気と塗料を混合させて霧化するのに対し、エアレススプレーは空気を使わないで霧化する塗装機器である。
水道のホースで水まきをするとき、水道のコックを全開にし、ホースの先端を徐々に小さくしていくと、水は次第に勢いよく噴出し、ついには霧状となる。エアレス塗装機はこの原理を応用し、水道水の代わりに塗料を霧化させたものである。
一般家庭の水道水の水圧は(0.2MPa/)程度であり、この程度の圧力では粘性のある塗料を微粒子化することができない。そこで、塗料用高圧ポンプを使用して液体圧力を10~30MPa(100~300kgf/)に高めるとともに、ホース出口を小さくつぶすものとしてノズルチップを付け、出口の穴径を0.1㎜以下にしてある。
a.ダイアフラムポンプ
建築塗装では水性塗料が多く、移動が多いことから、エアコンプレッサーのいらないダイアフラムポンプを用いた塗装機が使用される。
ダイアフラムポンプは、ピストンの往復運動によって生じた油圧によりダイアフラム板を上下動させる機構である。ダイアフラムの下降で塗料を吸い込み、上昇で排出する。プランジャーポンプと異なり、1秒間に25~30回上下動する。
ダイアフラム板には、高圧で耐溶剤性が要求されるため、硬質ナイロンが使用されている。動力源が電動モーター化エンジンであるため、高圧になった時のモーター制御が必要となる。一般には、設定圧力以上に上昇するのを防ぐため、調圧弁により油圧圧力を逃す機構を採用している。
b.高圧塗料ホース
高圧塗料ホースは、ポンプで圧縮された高圧塗料をエアレススプレーガンに送るためのホースで、いっぱんには硬質ナイロン材が使用されている。また、高圧によるホースの破損を防ぐために、ナイロンホースの外皮にステンレス線や鋼線を編み上げてある(アース線も兼ねる)。そのため、エアスプレーガンの塗料ホースに比べて安全性は向上するが、作業性、柔軟性が悪い。
c.エアレススプレーガン
ポンプ、ホースと送られてきた高圧塗料を受け、ノズルチップを通じて被塗物を塗装するもので、特別な調節機構はない。塗料の開閉を行うニードル弁機構があるだけである。さらに、作業性の面から、ユニバーサルジョイント、引き金を引いたままにできる機構、危険防止から手が直接ノズルチップに触れないためのハンドガード、スプレー時以外は誤って引き金を引かないためのセーフティーロックが設けられている。
d.ノズルチップ
ノズルチップの先端部は超硬合金で作られ、塗料による摩耗を防いでいる。先端はだ円形の穴となっており、その形状のままだ円のスプレーパターンが形成される。チップ先端から噴出された塗料は、初めは液体のフィルム状に飛び出し、大気と衝突することによって次第に細かい粒子となる。
塗料によっては、スプレーパターンの両端に粗い粒子が出るテール現象が発生する。テールノズルチップ内部での塗料の流れの不均一により生じる。両端から余分な塗料が出て、塗り肌が荒れる。エアレスの短所であるテールの発生要因は、次のとおりである。
①塗料加圧圧力が低い。
②塗料の粘度が高い。
③塗料の比重が高い(さび止め塗料のように、顔料分の多い塗料に発生しやすい)。
e.エアレス塗装機の特徴
①エアスプレーに比べ塗料の飛散が少ないため、衛生的に作業ができる。
②高粘度塗料の塗装ができるので溶剤が少なくて済み、厚塗りが可能である。
③ポンプの種類が多いので、被塗物や使用塗料によって機種選定ができ、最適塗装が可能である。
④塗り幅の形は、山形でないため、塗り重ねパターン幅の1/4~1/5程度とする(エアスプレーでは、パターン幅の1/2~1/3程度を塗り重ねる)。
f.エアレスの使用上の注意
液圧が高いため、取扱を誤ると非常に危険であり、人命を左右する事故となる場合があるので、十分に注意する必要がある。
①一度に高圧力まで上昇させずに、低圧にて各接続部の塗料漏れを確認する。
②ポンプの最高使用圧力を確認し、それ以上に圧力を上げない。
③ポンプは空運転させない。
④人体、特に、露出した顔や皮膚に向けて塗料を噴射してはいけない。高圧のため、皮膚に穴が開いたり、失明の危険が生じる。またノズルの先に手を出して圧力を確かめるようなことも絶対してはいけない。このことで手に重要を負った例がある。
⑤ポンプは必ず接地する。また、被塗物もアースを取り、発生した静電気をためない。高圧で噴射された塗料が空気と衝突すると静電気を帯び、ガン本体も帯電し、スパークして引火する危険がある。ポンプを接地すれば、ガンに接続する塗料ホースは導電体であるから、静電気を逃すことができる。