塗付けは主としてはけ塗り、ローラブラシ塗り、エアレススプレー塗りの3種の方法が用いられる。各方法にはそれぞれ一長一短があるので、状況に応じて適切に選択する。
塗付けの目標は、
①塗残しのないこと
②膜厚が均一で十分であること
③ピンホールがないこと
④たれ、ぶつ、流れなどの欠陥がないこと
である。
(1)はけ塗り
能率は悪いが、被塗物の位置・大小・形状を問わず作業性もよい。飛散による塗料のロスもなく、環境汚染の心配もない。はけ塗りは熟練を要する技能で、未熟な場合、塗残し、むら、だれ、はけ目などの欠陥を生じやすい。塗付けは、上方より下方へ作業を進めることが原則である。はけ目は下から上へ通すようになる。
さび止めペイントは、使用される顔料の比重が大きいため、使用中に下げ缶の下方に沈降しやすい。絶えずかくはんすることを忘れてはならない。
(2)ローラブラシ塗り
手すり面の塗付けでは、はけ塗りに比べて能率もよく膜厚も平均している。しかし、凹凸面や細部、すき間などの塗付けの作業性は悪いため、はけ塗りとの共同作業が必要である。ローラ塗りはローラの運行による泡が巻き込まれてピンホールの原因となりやすい。ローラブラシの運びは、ゆっくりと行うようにする。
(3)エアレススプレー塗り
大きい面積の塗装に適している。厚膜形塗料の塗付けにも適した塗装方法であり、塗重ねで厚膜も得られやすい。しかし、スプレーによる塗料の損失と周囲の環境を汚染する心配があり、形状の複雑な部位では塗残しや流れなどの欠陥が生じやすい。現場では通常、はけ塗りを先行させて細部をまず拾い塗りし、後にエアレススプレーを全面的に施工する方法で行っている。単独の方法では最善の効果が得られるものではない。状況に応じて使い分けをする必要がある。
塗装技術は、塗料の技術と塗る技術が総合されたものである。塗料と塗装用機工具の開発・研究が今日ほど目覚ましいときはなく、塗装技術者はその方面の情報収集に努めなければならない。
種類 | はけ塗り | ローラブラシ塗り | 吹付け塗り | |
エアスプレー | エアレススプレー | |||
原理 | はけに塗料を含ませて塗り広げる | ローラブラシに塗材を含ませて塗り広げる | 塗料を圧縮空気の力で霧状にして塗る | 塗料に高圧を加えて小さな穴から噴射することによって霧化して塗る |
特徴 | ・被塗物の形状や大きさの制約がない ・手軽にどこでも行えるが、美しく仕上げるには熟練が必要 ・作業能率は劣る |
・広い面積に適している ・はけ塗りより作業能率がよい ・仕上げ面に細かい凹凸を生ずる |
・作業能率や仕上がり性がよい ・比較的安価で取り扱いが容易である ・塗料の飛散や損失が多い |
・エアスプレーより作業能率がよく、塗料の飛散や損失も少ない ・高粘度の塗料でも塗装できる ・高級仕上げや細かいものには向かない |