すべての塗料は高温になるほど早く乾燥する。一方、高湿度になるほど被塗面に水分が付着したり、塗装面からの溶剤蒸発に伴う温度低下により結露し、表面層に水が混入しやすくなる。塗料は塗装すると、被塗面によくぬれ(なじみ)、くっつき、丈夫な塗膜(固体)になるようにつくられた材料である。現場作業ではどんな環境下でも塗装ができ、同等な塗装効果を発揮する塗装条件範囲の広い塗料が必要となるが、このような万能塗料はまだない。よい塗装をするためには、その塗料に応じた適切な使い方をすることが大切である。
塗装に適する気温と湿度の一般的な適正範囲として、塗装に適する気温と湿度はそれぞれ、
気温 10~30℃
湿度 45~80%
であり、気温が40℃以上になると塗装できない。たとえ40℃以上の高温で塗装できたとしても、塗面にはピンホールが多量に発生したり、付着不良が生じて目的とする塗装効果が得られない。水性エマルション塗料では、塗装可能な最低温度は一般に5℃くらいである。
一般に、塗料は乾燥・硬化の段階で溶剤が蒸発するので、溶剤の気化熱によって塗装面の温度が低下する。20℃/80%の条件下で塗装面の温度が低下したとき、空気中の絶対水分量は変化しないので、相対湿度は80→100%になる。空気中の水蒸気が水(液体)になり、塗装面で結露する。乾燥中に塗装面に水が付くことがあってはならない。また、鋼材などの面では塗装寸前に鋼材表面温度を測定し、少なくとも露点より2~3℃以上高い状態とする必要がある。なお、露点とは大気中の水蒸気が水(液体)になる温度のことである。
相対温度が高くなるほど、雰囲気温度と露点との差が小さくなるので、高湿度下での塗装には注意を要する。