6.塗装の要点

 塗装上、守るべき基本的な要点を次に挙げる。

(1)素地調整作業をおろそかにしない

 現場塗装で発生する塗膜欠陥の多くは、素地調整不足が原因となっている。素地調整作業は、塗装作業の最も大切な基礎の工程である。

(2)塗料の品質を良く調べて、正しい使用方法で作業を行う

 特に高性能化した塗料は、許される使用条件の幅が狭い。2液形の塗料を使用するときは、配合の比率を正確に守り、計量・混合作業を確実に行うことが大切で、シンナーは必ずメーカー指定のものを使用する。

(3)塗料の乾燥機構を理解して塗装を行う

 希望する性能の塗膜を得るためには、乾燥機構に適合する条件を守ることが大切である。例えば5℃以下では、エマルションペイントは完全な塗膜を形成しにくく、エポキシ系の塗料は反応が停止して乾燥が極端に遅れる。また、塗り重ねに際して過度の乾燥や観測不足は、作業に支障を来し、層間はく離、はがれ、ちぢみ、割れなどの欠陥を起こすことがある。

(4)低温・多湿下の塗装を避ける

 水分は塗膜の付着力低下の最大の原因である。JIS K 5600-1-6:1999「塗料の一般試験方法―第1部:通則―第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」に定める標準乾燥条件は、温度23±2℃、相対湿度50±5%となっている。標準乾燥条件から大きく離れる環境での塗装作業には、注意を要する。すなわち、エマルションペイントや化学反応を伴う2液形ポリウレタン樹脂系塗料を使用する場合、5℃以下、又は結露しそうな高湿度下では塗装作業を行わないこと。

(5)塗料は十分にかき混ぜ、ろ過して使用する

 この作業を怠ったために、色違い、色むら、つやむら、ぶつなどの塗膜欠陥が発生することが多い。

(6)塗装用工具類は常に整備しておく

 使用する塗料の性質にあった塗装用具で塗装する。

(7)作業環境に対する配慮を行う

 じんあい、塩分の付着(海岸地帯)などの自然現象が、塗膜のはく離やさび発生の障害を引き起こすことが多い。また、市街地では塗装作業で発生する騒音に気を付けたり、吹付け塗膜時に発生する塗料の噴霧粒子が駐車中の車などに付着することがあるので、車に保護フィルムをかぶせたり、建築物の養生を十分に行うことが大切である。

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