塗装を理解するためには、個々の工程を知ることも大切であるが、同時に使用する塗料固有の性質や条件から、おのづと定まる塗装系の特徴や欠点を知ることも必要である。

1 調合ペイントの塗装

 調合ペイントの塗装には、油性調合ペイントと合成樹脂調合ペイント塗装の2種別がある。どちらの場合も木部、鉄部、軽金属など塗装を必要とする箇所に施工することができる。通常、下塗(鉄部はさび止め)、中塗、上塗の3回塗りで仕上げる。

 油性調合ペイントは、1回塗りの塗膜が他の塗料に比較して厚いため、耐候性は良いが乾燥時間が遅く1回目と2回目の塗装間隔を48時間以上(23℃±0.5℃)あける必要がある。また、塗面にはけ目の立つのが欠点である。

 合成樹脂ペイントは、乾燥時間が早く、塗装間隔は16~24時間以上(23℃±0.5℃)で、乾燥した塗膜は硬くはけ目も殆ど無く、つやも良く仕上がり感が美しい。ただ乾燥塗膜は油性調合ペイントよりも薄い。油を含んだ塗料は、乾燥過程でホルムアルデヒドを放散するので使用面積制限がある。ただし、最近はメーカーによっては、F☆☆☆☆表示品もある。

2 アルミニウムペイントの塗装

 塗装の対象は金属で、大部分多鉄部である。次が亜鉛めっき部で軽金属は少ない。塗装後乾燥する過程でアルミ粉が塗膜の上面に浮いて、不透気性の層を形成すると考えれている。塗料の性質上、材料が軽いため、あまりはけさばきを大きくすると飛散したり塗膜が薄くなるので注意したい。また、亜鉛めっき部は塗料の付着性が悪いので、エッチングプライマーで処理し、鉛酸カルシウムさび止めペイントを塗装する。現在はさび止めを兼ね、変性エポキシさび止めプライマーを使用することが多い。

 現在は既調合タイプが主流で、アルミ粉又は、アルミペーストと油ワニスとが別々になったセパレーツタイプはほとんど使用されていない。

3 フタル酸エナメルの塗装

 フタル酸樹脂エナメルは、合成樹脂調合ペイントと比較して、乾燥時間が早く、つやも良く、硬く、なめらかで仕上がり感が良いので、鋼製建具や扉などの高級仕上げに使用されてきたが、建築基準法改正に伴い居室での使用が減少している。合成樹脂調合ペイントより高級な塗装とされている。はけ塗りをしても塗面にはけ目が残りずらいので美装としては申し分ないが、その反面、素地の良し悪しが目立つので工程中に下地付けを加えるのが普通である。また、塗料そのものが流れやすいので塗装は難しく熟練が必要である。

 色合わせにはフタル酸エナメル原色を使用する。

4 オイルステインの塗装

 木材のみの塗装で、屋内、屋外共に使用されるが、屋外の場合は、木部の保護を目的に美粧性を生かしている。節止め、パテかいなどは、その部分のつやが目立ち、かえって見苦しいので行わない。

 屋内への使用は使用面積制限があるので注意する。なお、最近脚光を浴びている油性系自然塗料の場合、ホルムアルデヒドを乾燥時に放散するものがあるので、居室に使用する場合は、十分に確認してから使用する。

5 クリヤ(透明仕上げ)の塗装

 クリヤ仕上げに使用される塗料には、油性系クリヤ、1液形油変性ウレタン樹脂クリヤ、2液形ウレタン樹脂クリヤ、アクリル樹脂クリヤ、ラッカークリヤなどがある。

 木部のクリヤ仕上げには油性系クリヤ、ラッカークリヤ、1液形油変性ウレタンクリヤ、2液型ウレタン樹脂クリヤなどが使用される。

 クリヤ塗りでは、目止め、着色(ステイン)などを行ってからクリヤ仕上げする。ただし、仕上げに使用するクリヤ種によってステインの選択が必要なので注意する。例えば、油性系クリヤ仕上げを行うならステインはオイルステインを使用する。

 なお、1液形油変性ウレタン樹脂クリヤや2液型ウレタン樹脂クリヤは木部床に使用されることが多い。

 アクリル樹脂クリヤや2液型ウレタン樹脂クリヤはコンクリートのクリヤ仕上げやカラークリヤ仕上げに使用される。

 この場合の目的はコンクリートの肌を生かした生地仕上げであり、カラークリヤ仕上げである。

 いずれにしてもクリヤ仕上げでの注意点はパテや補修剤による補修を行わずに、あくまでも生地の自然観を生かすことが重要である。

6 速乾形エナメルの塗装

①ラッカーエナメル:鉄部、木部に使用

②塩化ビニール及びアクリルエナメル:コンクリート、モルタルなどの壁面に使用。

 ラッカーエナメルは特に乾燥が早く、塗装はエアスプレーで行う。光沢良く仕上がるが、現場施工からは減少している。

 塩化ビニル樹脂エナメルは、浴室・厨房・ガソリンスタンドの防火壁などに使用されていたが、環境問題、安全衛生問題から激減し、平成16年度版公共建築工事標準仕様書からも削除された。

 アクリル樹脂エナメルは外装材の仕上げ材に多用されていたが、やはり環境問題から減少している。

 このように、速乾形の強溶剤形塗料は減少の一途を辿っており、現在は、つや有り合成樹脂エマルションペイントに変わってきている。塗装上の注意点は合成樹脂調合エマルションペイントと同じである。

7 合成樹脂エマルションペイントの塗装

 主に外部用(1種)と主に内部用(2種)とがあるが、用途はほとんど一般内部用で、主に外部用は高級仕上げ用、主に内部用は一般仕上げ用として使用されることが多い。

 また機能形塗料として低VOC形、低臭気形、抗菌形、防かび形、ビニルクロス面用などがある。

 水性系なので火気に対する危険性が少なく、環境・安全にも優しいので、需要は増加している。

 合成樹脂エマルションペイントは作業性がよく、隠ぺい力(かぶり)も良いので、大変扱いやすい塗料である。

 モルタル、せっこうプラスターなど壁面や、各種ボードを用いた天井、木部の間仕切りなど使用範囲は広い。鉄部には原則として使用しないが、やむを得ず塗装をする場合は、さび止め塗料で十分な処置をしてから塗装することが必要である。

 塗替え用途で下地にタバコのヤニなどの汚れがある場合は、ヤニ止め、シミ止め用シーラーを使用する。

8 多彩模様塗料の塗装

 多彩模様塗料塗りでは、必ず使用する多彩模様色を基調とした合成樹脂エマルションペイントの調色品を下塗りすることが不可欠である。

 多彩模様塗料は、水や溶剤の中に分散した粒子状の塗料なので、連続塗膜は作らずに、下塗りの上にパラパラと斑が置かれていく感じである。

 したがって、均一にやや厚めに塗り付けることが仕上り性を高めるために重要である。

 塗料使用前に撹拌するが、軽く混ぜる程度で機械撹拌などは避けなければならない。

 塗装には専用の吹付け用ガンを使用する。

9 2液型エポキシ樹脂塗料の塗装

 2液型エポキシ樹脂塗料は耐水性・耐薬品性・防食性・耐摩耗性などの塗膜性能が優れているので、過酷な条件下で使用されるケースが多い。

 また、付着性にも優れているのでさび止めやシーラーにも使用される。

 2液型エポキシ樹脂塗料を大別すると、エポキシタイプと変性エポキシタイプがある。

 エポキシタイプは使用する硬化剤の種類により用途が分かれる。

 ポリアミドアミン効果タイプは耐水・耐アルカリ性能に優れ、変性ポリアミンタイプは耐水・耐アルカリ・耐酸・耐溶剤性能に優れている。

 なお、2液形エポキシ樹脂塗料は、低温(5℃以下)での乾燥性に劣るので、低温用として硬化剤にイソシアネートを使用する速乾形がある。

 2液型エポキシ樹脂塗料の塗装では、1種ケレンが必要だが、2種ケレンで塗装できるタイプとして2液形変性エポキシ樹脂塗料がある。

 代表的には、さび止めとしての2液形変性エポキシ樹脂プライマーやタールエポキシ樹脂塗料がある。

 タールエポキシ樹脂塗料は、色が黒または暗色が主流であり、美装を必要としない箇所に使用される。

 エポキシ樹脂塗料の欠点は紫外線に弱く、外部の最終仕上げには使用しない。

 なお、2液形塗料の共通点だが、規定の混合比で調合し、調合後は可使時間(ポットライフ)内に使い切る。

 可使時間を過ぎたものは使用してはならない。

 塗り重ね乾燥時間にも制限があるので注意する。塗り重ね乾燥時間を超過した場合は、層間剥離を防止するため、十分に研磨紙ずりを行う。

 特にエポキシ樹脂塗料は耐候性が劣るので、外部での最終仕上げに使用することは避けなければならない。

10 建築用仕上塗材

 建築用仕上塗材は、JIS A 6909により分類されている。それぞれ用途・目的に応じて選択する。

11 防水形複層塗材の塗装

 防水形複層塗材の代表が防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材E)で、下塗り(シーラー)・中塗り(主材)・上塗り(仕上げ材)で構成されている。

 ポイントは主材で、この層が防水層になる。施工にあたっては、主材を規定通りの塗付け量で塗装することが重要になる。

 なお、ひび割れの発生しやすい開口部周りなどは主剤を増し塗りするとよい。

 仕上げ材は耐久性に応じて、アクリル樹脂タイプ・ウレタン樹脂タイプ・シリコンアクリル樹脂タイプ・ふっ素樹脂タイプなどがあり、これらから選択する。

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