3-3-6 特殊塗料

 塗料に要求される性能は、美粧、保護及び機能だが、塗料の中には特別な機能を持つものがあり、特殊塗料として分類しているものがあります。

(1)防止性能塗料

 (a)耐火塗料

 火災時に、早期に鉄骨が崩壊しないように保護する塗料で、難燃性のロックウールを含む塗料を厚塗りするタイプや、塗膜が燃焼すると発砲して保護するタイプなどがあり、グレードは1時間耐火や2時間耐火などの基準があります。

 この種の塗料は、鋼材別の膜厚管理が重要です。

 (b)防かび塗料

 建築物は高温・多湿などの条件でカビが発生しやすく、代表的なカビには黒カビや青カビ、黄カビなどがあります。

 カビの発生を防ぐにはカビが生えにくい環境づくりが重要ですが、補助的には防かび塗料を塗装する方法があります。

 防かび塗料は耐水性、耐アルカリ性、耐湿性などの優れた塗料に、防かび剤を添加したものが一般的です。

 以前は水銀系や錫(スズ)系の防かび剤が使用されていましたが、安全・健康問題から、昨今では有機系の防かび剤が使用されています。

 いずれにしても、カビの発生個所を塗装する場合は、発生しているカビの除去と殺菌が最も重要な作業になります。

 (c)耐薬品性塗料

 化学薬品工場に代表される工場などに塗装される塗料は、化学薬品の影響を受ける過酷な条件に耐える性能が要求されます。

 塗料の選択では、塗装する目的・条件に応じた選択を行いますが、一般的には、エポキシ樹脂塗料とポリウレタン樹脂塗料が多用されています。

 (d)路面標示用塗料(JIS K 5663 1種、2種、3種)

 トラフィックペイントとも呼ばれ、路面に塗装することで車両や歩行者の交通事故防止に役立てる塗料です。

 路面標示用塗料は大別して、通常のエナメルタイプと、粉体状で塗装時に熱を加えて溶解し塗装する溶解形(ホットメルト形)がある。

 いずれにしても、塗装後、短時間で歩行できるような速乾形です。

 色相は白と黄色(5.5R 6.5/12)で、エナメルタイプはそのままローラーなどで施工しますが、溶解形は塗料を加温し、溶解状態で流し塗りをし、急速冷却して固めます。反射性を生かすためにガラスビーズを使用しますが、散布系と混合形があります。

 

(2)特殊模様塗料

 (a)多彩色模様塗料

 専用ガンを用いて、1回塗りで多彩な模様仕上げができる塗料です。

 塗料は、一般に各種に着色した塗料を大小異なった大きさの粒状にして異種の塗料に混合し、互いに溶け合わないようにしたものです。

 溶剤形と水性系があります。

 (b)メタリック塗料

塗料中に配合された金属粉により金属状に反射光を示し、美しい色、つやが金属状に生ずる塗料です。

 金属粉は主にアルミニウム粉末であり、一般にはノンリーフィングタイプといわれています。

 ノンリーフィングタイプは、塗膜中にアルミニウムが沈んだ状態で、粒子の大小で外観が変化します。

 主に、自動車や電化製品などに使用されます。建築用もあります。

 吹付け用塗料で、膜厚、希釈粘度、塗り方、塗付け量などで仕上り外観が異なるので、塗装には熟練を要します。

 (c)ハンマートーンエナメル

 金属面をハンマーで細かく叩いたような美しい模様を作るように設計された塗料です。

 塗料には、ノンリーフィング形のアルミニウム粉末と特殊シリコン樹脂が少量配合されていて、吹付け塗装により塗膜にはじき模様が生じます。

 エアスプレーで塗装しますが、一般には低圧で粘度をやや高めにし、吐出量を多くするとよいです。

 (d)クラッキング塗料

 塗装した塗膜にクラック(ひび割れ)模様のできる塗料です。

 クラックを発生させるメカニズムは、溶剤系塗料の持つ塗膜の溶解性と、乾燥時に生じる塗膜の収縮差を応用したものです。

 クラックが発生しやすいように十分な膜厚で塗装した柔らかい下塗り面に、下塗りより溶解力が強く、乾燥が早く、顔料配合量を増やした硬い上塗りを塗装します。

 クラックは、上塗りに含まれる溶剤が下塗り塗膜を溶解し一体化しますが、乾燥過程で下塗り塗膜の伸びと上塗り塗膜の伸びに差が生じるため、力にバランスが崩れ、上塗り塗膜にクラックが発生します。

 (e)スウェード調塗料

 触れたときの触感や外観が、スウェード調になる水性系合成樹脂エマルション塗料です。

 この塗料は中塗りと上塗りで構成されていて、中塗りは通常の塗料ですが、上塗りはクリヤに特殊なプラスチックビーズが配合してあります。

 中塗り塗膜乾燥後に、中塗りを規定量混合した上塗り塗料を専用の塗装具で塗装すると、塗装具ごとの意匠を持つスウェード調塗膜が得られます。

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